結束バンドという絆

 昨年末に発売されたアルバム「結束バンド」をずっと聴いている。このアルバムはテレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」(以降「ぼざろ」)に登場する女子高生4人組のロックバンド「結束バンド」のファーストアルバムという体裁をとっている。アニメ主題歌、挿入歌、そして新曲も含まれ、実に14曲というボリュームだ。アニメ系CDにありがちなボイスドラマもなく、ただ楽曲のみ。硬派であり、ロックだ。(ボイスドラマを否定しているわけではない)

 自分は、「ぼざろ」のアニメをリアルタイムでは視聴していなかった。人気があるらしい、という話は聞いていた、が、視聴するには至っていなかった。

 ちなみに、きらら系の先輩で、バンドアニメの金字塔とも言える「けいおん!」には過去きっちりハマっていて、ブルーレイディスクやCDを買い集めたものだ。だから、「ぼざろ」も観ていてもおかしくはなかったのだが……。
 ここのところアニメや特撮番組の視聴量が減っていて、昨年秋シーズンは「チェンソーマン」と「水星の魔女」と「仮面ライダーギーツ」しか追ってなかった……

「ぼざろ」の最終話は2022年12月24日に放送され、その直後からyoutubeで「ぼざろ」の楽曲動画を見かけるようになった。最初見たのは「星座になれたら」だったと思うが、「なにこれすごい」と思い、「ギターと孤独と青い惑星」「あのバンド」あたりで「やばいかっこいい」と思ってしまった。

 そこから、アマプラに駆け込み(比喩的表現)、アニメの視聴を開始し、アルバムも購入したというわけだ。といっても、その時点でCDは未発売で、しかも幾つかのECサイトでは売り切れになっていたので、先行配信されていた音源をポチったのだ。その間、およそ24時間。

 良い感じにのぼせあがったものだ。

 自分は音楽については詳しくないし、ギターも弾けない。それでも「楽器ができたら格好いいのに」とか「文化祭でライブをやったらきっとモテモテだぜ」みたいな妄想をしなかったわけではない。(というか誰でもするだろう)

 だから、ぼっちちゃんの気持ちもわかるし、実際のぼっち度でもまったく負けてない、むしろこの年齢までぼっちを貫いているという点において、ぼっちちゃんがもっとも怖れている未来を実現した存在とも言えよう。(それでも死んでないんだから、すごいよな……)

 そういう、終わった人間から見ても「結束バンド」というアルバムは魅力的だ。自分はもともと「アニメ作品のコンセプチュアルなバンド」が好きで、先に挙げたように「けいおん!」の「放課後ティータイム」のアルバムも揃えているし、「Angel Beats!」に登場する「Girls Dead Monster」も同様に好きだ。

 作品のテーマと結びついた楽曲、そして劇中で語られるバンドメンバー間のストーリー、ドラマ、そういったものが結びついて、単なるバンドサウンドを超えて刺さってくるからだと思う。

「結束バンド」の場合、作中で、ぼっちちゃんが歌詞を書くエピソードが描かれ、「自分らしく」を貫いた結果、「ギターと孤独と青い惑星」という曲が生まれたことが示唆されている。そうやって生まれた曲を、実際のアニメでの演奏シーンで聴くことで、その曲のリアリティが格段に上がるのだ。これは確かに「結束バンド」の曲なのだと。

 もちろん、これらの曲はプロが作り、演奏している。そんなことは百も承知だが、それも含めた虚構(フィクション)として受け入れることができる。これは「ぼざろ」という作品が、音楽制作において、一切の手抜きをせず、精緻に作り込んでいるからだとも言える。

 たとえば、「結束バンド」(アルバム)の収録曲はすべて、結束バンド(バンド)の楽器構成、ギター×2 ベース ドラム で作られているという。当たり前のように思えるかもしれないが、通常のアニメ楽曲では、「キャラソン」という要素を抜くことは難しい。人気キャラのグッズを販売するというのはビジネス上、外せない要素だからだ。

「けいおん!」の場合も「放課後ティータイム」としてのアルバムがある一方で、作中では音楽をやっていないキャラ達の楽曲CDも発売された。それがよくないわけでもないし、「ぼざろ」でも「SICK HACK」のCDが出たら喜んで買わせていただくが、今ここでは「結束バンド」というアルバムが紛れもなく「結束バンド」というバンドの存在を実証するアイテムになっているということを言いたいのだ。

 そう、「結束バンド」とその「音楽」は紛れもなく実在する。

 ということは、後藤ひとりも伊地知虹夏も山田リョウも喜多郁代も絵空事ではなく、確かに存在しているということなのだ。

 アニメという虚構において、こういう拠り所があるというのは素晴らしいことだ。

「ぼざろ」の最終回、そのラストで「転がる岩、君に朝が降る」が流れて来た時に感じる「ああ、もう終わってしまう」という寂寥感、それでいて、ぼっちちゃんが最後に漏らす言葉には「いや、この日常は続いていくんだ」という希望――を感じることができる。

「結束バンド」というバンドが実在する以上、必ず二期は来る。そう信じることができるのだ。

 ――といった文章を、「結束バンド」を聴きながら書いているのですが、今、「転がる岩、君に朝が降る」が流れてきました。

 主役が劇中まったく歌わない、というか「歌って」と乞われたら「むっ、むむむむむむむむむむむむむむむ(以下無限)」と首を横に振るバンドアニメは珍しいと思うのですが、それも「ぼっち・ざ・ろっく」という作品のおもしろいところだと思います。このあたり、「けいおん!」という先行作品との差別化にもなっていますね。

 それでいて、アルバムの最後に、後藤ひとりボーカル曲を入れてくるなんてほんとうに憎いですね……

 そろそろ曲も終わりそうです。
 ま、また最初から聴き直すんですけどね。

 それでは……

 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?