日本は滅びる

残念ながら、しかもそう遠くない未来に。今の流れじゃ絶対に止められない。今日それをはっきり感じた。

引っ越しのドタバタで貯金通帳を失くした。始めて社会人になった時に作ったもので登録印も定かじゃない。カードがあるから別に困らないのだが、ちょっと確認したいことがあって再発行することにした。ついでにオンラインでネットバンキングができるようにしたい。これが前提。

窓口の女性行員は親切で丁寧だ。まず最初に印鑑レスに移行したいと伝えるとそれはできないとやんわりと断られる。理由は分からない。

次に再発行した通帳が届くまでに1〜2週間掛かると言われ、次いで現住所へ変更したい旨を伝えると、そうすると通帳が届くまで倍の3〜4週間掛かると言われる。期間が倍になる理由は分からない。

再発行の書類、住所変更の書類を書き、これかなと思われる持参した印鑑を照合するも印影が合わず、印鑑再登録の書類を書かされる。すべての書類が複写で数枚に渡り、みるみる十数枚の書類が作成される。積み上がった書類の山がどこへゆくのかは分からない。

次にネットバンキングを行いたい旨を伝えると、申請書類に記入の上、押印をしろと言われる。ネットバンキングのために押印?高速道路に乗るには通行手形が要ると言われたようなおかしな気分になる。

ともあれ、これで通帳はなくてもオンラインで取引は閲覧出来るんですよね?と聞くと、オンラインが閲覧できるようになるのは、すべての手続きが終わる3〜4週間後だと言われる。

それではとりあえず、この2ヶ月の取引が見たい旨を伝えると、この場で見せることは出来るが、プリントアウトするには別途申請書を書き、押印の上手数料を払い…

……もう無理。この、時間が無限に引き伸ばされてゆく感覚は異常だ。この窓口で何日も生活している気がしてくる。ペーパーレス化が進み、顔認証や虹彩認証が取り入れられてゆく時代に、書き間違えに二重線を引いて訂正印を押していると日本の現状がよく分かる。なにしろここは日本でもトップと言われる都市銀行だ。

つまりこれは氷山のほんの一角で、多くの日本企業が一事が万事こんな調子で未だに手続きに縛られ、慣習から抜け出せず、図体がデカすぎてドラスティックな変革など期待できないことを示している。

世界はものすごいスピードで変化している。エストニアや中国の例を出すまでもなく、IT化の波はノンストップでしかも世界規模のレースだ。既にスマホで小額決済が行われ、QRコードで買い物をし、手数料無料の世界が広がりつつある。日本はあっと言う間にIT後進国となり、荒波に飲まれて海の藻屑となる。

ようやくすべての手続きが終わり、ネットバンキングの説明書、各種ご案内のパンフがキレイな封筒に入れられて手渡される(ゴミ箱に直行するこれらのパンフにに幾らかかっているのか)。窓口の行員さんは最後まで物腰は柔らかく、真摯で丁寧な応対をしてくれる。それは確かに日本人の美徳であるけれど、でもそれじゃダメだ。それでは滅亡は止められない。





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