文化欄#7 「娯楽を所轄」する省庁

イランとの国交回復が国際的なニュースとなっているサウジアラビアの首都リヤドで、先週3月7日-8日にかけて「中東トレードサミット(Middle East Trade Summit)」が開催されたとの由。

リヤドで娯楽分野の国際会議を開催(サウジアラビア) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

今回のフォーラムは、サウジアラビア娯楽庁(General Entertainment Authority:GEA)が国際遊園地アトラクション協会(IAAPA)と共同で開催するもので、エンターテインメント業界の最新動向やイノベーションとともに、業界が直面する課題と解決策を議論することを目的とする。

出所:上記記事(https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/03/01ac374d2faafeb5.html
)より引用。

と、ここで、「サウジアラビア娯楽庁」(総合娯楽庁、娯楽局などとも表記あり)という聞きなれない名前の行政機関が目についた。
娯楽を司るとはこれいかにということで、少し調べてみたところ、2016年に設立された行政機関であった。

General Entertainment Authority (gea.gov.sa)

2010年代の石油価格下落などにともなう国家財政事情の悪化や、石油資源だけに頼らない経済・社会発展などを念頭に置いた経済政策等の改革案「ビジョン2030」に基づいて設立された機関の模様。

こういう「特命」的な機関は日本では機能しないこともしばしばあるが、サウジアラビアではこの機関が設立されたことの影響は少なくないようだ。2017年には30数年ぶりに「公開」でのコンサートが開催され(ただし観客は男性のみに限られていた模様)、2018年には30数年ぶりに国内に映画館がオープンしている。

逆に言えば、30数年間そういうエンターテインメント分野の展開が無かったということになるが、これは、「これまでサウジでは公共空間での音楽や映画に対する宗教界の反発があり、公開コンサートはほとんど行われてこなかった。このため,コンサートは非公開のイベントや有力者の結婚式など私的な空間で行われるのが一般的だった⑴」ためとのこと。

今回のフォーラムの概要や、政策的な方向性から見るに、日本でいうところの文化庁よりは経済産業省ないし観光庁に近い役割を担っている機関ということになるのだと思う。

上記サミットに限らず、文化産業の熱は高く、国内外からの注目も大きいようだが、今後の経済発展(国外から見れば投資)の上では国内の生活文化・宗教文化とのバランスを取り、うまくローカライズさせることも重要となりそうだ。

・・・そういやクールジャパン機構ってどうなったのだっけ。


⑴江上奈美江(2017)「文化・娯楽・スポーツと女性:変革を迫られるサウジの社会・文化規範」『中東協力センターニュース』2017年3月号、pp13-21。

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