万葉集翻案詩2編:『純な関係』

※今回は2首1組です。


我が里に
大雪降れり
大原の
古にし里は
降らまくは後

(「万葉集」巻②・103)
天武天皇


『純になる』

僕が住む里に
景色を白一色に
染め抜くほどに
雪が降り積もったよ

君が住む
古びた大原の里に
この雪が降るのは
もっと後になるからだろうね

雲の間から不意に漏れた
光の雫を一滴
心に落とし込んでみると

一瞬にして胸の汚れが
漂白されて純になるから
この気持ちを分け合いたいんだ



我が岡の
龗に言ひて
降らしめし
雪の砕けし
そこに散りけむ

(「万葉集」巻②・104)
藤原夫人

『純なあなたを』

私の住む里に
雪が降るのは
もっと後だろうなんて
貴方は 仰いますが

それは私が
近くの岡に住む
水を司る龍神に言って
降らせたものですよ

その雪の砕けた断片が
風に乗って貴方の里へ
行っただけの事でしょう

雪に はしゃぐ純な貴方を
思わず“かわいい”と
思ってしまった私です


【メモ】
天武天皇と藤原夫人の歌のやり取りです。
実際、二人が住んでいた場所は数百メートルしか離れていなかったみたいです。


#万葉集 #詩 #万葉集翻案詩 #万葉ソネット


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?