万葉集翻案詩:『深い想い』

安積香山
影さえ見ゆる
山の井の
浅き心を
我が思はなくに
(「万葉集」巻⑯・3807)


 
『深い想い』
 
美しく雄大な
安積香山の姿を映すのは
清らかな水を湛える
浅い山の泉
 
清らかで美しいけれど
私は、
この泉のような浅い心で
あなたの事を
想っているわけではありません
 
そんな、浅はかな気持ちで
あなたを
恋い慕いはじめたわけではありません
 
だって、
あなたは私にとって
もったいないくらいの人ですもの
 
さあ、機嫌を直して
今宵は楽しく
お酒を飲みましょうよ
 
深い想いを持った私が
ずっと、傍にいますから…


【メモ】
さきほどの歌と共に、“歌の父母”として登場します。
この2首も木簡が発見されたことで、
古今和歌集に書かれていたように2首がセットであることが裏付けられました。
この歌は、葛城王(後の橘諸兄)が東北を視察して接待を受けた際、もてなし方が良くないために機嫌を損ねた。
その時、都勤めの経験がある女性が、この歌を口ずさんで王の機嫌を直したと言われています。


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