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星座未満に溢れかえる

木と緑の中のカフェにいます。
後ろで電車の音がします。
自然なんだか街なんだかわからない朝です。

前回は「行為収れん」「表象収れん」という言葉に沿ってわたしに起きやすいことの説明を試みた。

人の中に入ると、粒がわーっと入ってくる。
目の前の情景が無数の、粒となって、つながり線は活性化して。星座になりながらいくつもの可能性になってわたしに迫ってくる。
その運動はわたしのコントロール下にない。

ざぶんと水の中に飛び込まされるような感じ。
次々と折り合いつけてかないと溺れる。

わたしは長い間、「自分がない」ということに苦しんできた。
自分がないから他者の意見や行動や表情に動揺していた。
と、思い込んできた。

もしかしたら……   逆だったのか ?

他者の意見や行動や表情からやってくる粒にわたしの身体が応答していた。有機的自律運動が活性化してその活性化にわたしの身体が溢れかえっていた。
だから自分自身の表出にまで行き着かず、他者への応答に終始していた可能性。
間に合っていなかった。

最初の記憶は保育園へ中途入園した時の情景。
わたしは子どもたちのキャッキャっした声や動きやその場の雰囲気やらに圧倒されていた。
動けなかったし、その後も馴染むことはなかった。

わたしが園で馴染める場所は、古い建物だった園の、立ち入り禁止の階段の上から差し込んでくる窓からのやわらかい光だった。
あとは昼寝の時間。
紙芝居を見ている時間。

そこでは、わたしは、溢れかえらない。
体はゆるみその場と馴染む。
有機的自律運動のままにゆるやかに応答が叶っている。

思えばずっと溢れかえっていたのだ。

人と話すこともできなかったし、慣れていくこともできなかったし、馴染むこともできなかった。
わたしから表出すること発信することはなかった。

それは「おとなしいね」と他者からは見えていた。

ぜんぜんおとなしくなんかない。
家では喋っていたしわがままだったし踊ったり歌ったりしていたし。

他者からの見え方と自分の実感がかけ離れている。
このことにも苦しんでいたように思う。
なんで、家の外では不自由なんだろう。
わたしはなんにもできなくなるんだろう。
なんでわたしはダメなんだろう。
なんでわたしは怖いんだろう。

この頃、わたしはよく悪夢を見ていた。
夜寝る時に母親に怖い話をねだった。

わたしの現実を拾ってくれるのは夢と怖い話だったのかもしれない。
もしそれらがなかったら、現実の世界がわたしからは現実ではない場所になり、どこか別の世界に行くことになっただろう。

その頃のアニメ「ムーミン」は、フローレンがノンノンの時代。
鏡の世界に入っていく回があった。
ムーミンが手を伸ばすと、鏡の中に入っていく。
鏡の中は現実とそっくり。だけど、全部が怖い感じ。
雰囲気も怖いし、現実の中と同じ人たちが、なにか違う。
すごいこわかった。
そして、すごく惹かれた。
なにか、「ほんとう」が、その話の中にあった。
録画のない時代、わたしはその時の雰囲気を繰り返し思い出す。

今では、人と話すし、表出もする。
だけど基本は変わっていない。
大人になるにつれ経験が増えることは、星座になる経験も増えているし。
だけど、同じくらい、いや、もっともっと多くの、星座未満に溢れかえっている。

集団の輪っかとズレているとき、自分の星座は即座には立ち上がってこない。
言い淀みのように、もごもご、うろうろ、まごまごする。
いくつも星座に成ろうといくつもつながり線が構えている。

「これ?」「あれ?」「こっち?」
まるでクイズのように、正解を出すことを迫られているような状態。
他者の星座の当てを外す。
ああ、と痛い。
かする。
ああ、おしい、となる。
突拍子もないと笑われる。
うう、と痛い。
そんなことを繰り返さざるを得ない。
するとなにが起きるか?

他者優先になる。
自分の有機的自律運動に任せるより、他者への応答にかかりきりになる。

「働く」ということは、そういう場に自分を置き続けることだった。
理由がわからず、ある日パタンと行けなくなる。
ことっ、と動けなくなる。
その度に自分はダメだという思いに襲われてきた。


豆乳ににがりをいれると固まる。
多くの人の、粒からつながり線へそして星座へと固まっていく様子を固まった豆腐だとすると、
わたしは、絹どうふでもなく木綿豆腐でもなく、ほろほろのおぼろ豆腐。
固まり切らないし、ほろほろ崩れる。
固まった豆腐がうらやましくもあったけど、そうだ、わたしはほろほろしたおぼろ豆腐だ。
かっちり固まることのない、すぐにほろほろ崩れて別の形、場所へ移動、に成っていくような、心細い存在だ。

そうだ。おぼろ豆腐だ。


※ここまで出てきた言葉はここにまとめています。
ひとりよがりな、主観の言葉です。

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