一夜の宿り

台風の日、台所の壁にちょっと大きい蜘蛛がぺたり。
生きているのか心配になるほど、動かない。
こんな大荒れの日だ。そりゃ蜘蛛だって外から避難してくるだろうと思い、「いいよ、このまま泊まっていきな。出来れば明日になったら外に行ってくれるとありがたいのだけど」そう声をかけた。

大きい蜘蛛なので、娘が気づいたら、きゃーっていうだろうし、夫が見つけたら排除されるかもしれない。
なので、誰も気づかないことを祈りつつ、黙っていた。
蜘蛛はそのまま壁と同化したかのようにじっと動かず、わたしが寝る前まで同じ場所にいた。

翌朝、台風の余波は残るものの晴れてきた。
蜘蛛はどうなったかと見に行ったら、あんなに微動だにしなかった蜘蛛がいなくなっていた。
本当に一晩泊まっていっただけで、帰っていったようだ。
外の方が餌が取れるとかもあるだろうけど、もしかするとちゃんと言葉が伝わっていたのかもしれないと、ちょっとだけ思った。

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