セルフコンパッション

2020年1月11日に実施した第1回ポジティブ心理学実践研究会では、松村亜里さんの基調講演の後、事例発表がありました。組織x2、医療、教育、そして対人支援の場で、ポジティブ心理学をどのように活用しているか、5人の登壇者が現場への適用について話しました。盛りだくさんの研究会だったので、持ち時間は1人10分だけ。限られた時間の中で、それぞれが自己紹介をし、現場での課題、ポジティブ心理学を応用した解決方法、そして、今後やりたいことについて発表しました。

私は5番目の登壇者として、カウンセリングやコーチングの場に、ポジティブ心理学をどのように取り入れているかをお話ししました。セッションの最初に「What’s good」を伺う、できたこと/うまくいったことの「成功の責任追及」をする、話を聴くときは「ACR」など、取り入れていることは色々あるのですが、なんせ持ち時間が10分と短かったため、「セルフコンパッション」に的を絞って話すことにしました。

「セルフコンパッション」とは、「大切な人を思いやるように、自分を思いやること」で、そのステップは3つあります。1つ目は、「マインドフルネス」。プラスもマイナスも含め、ありのままの感情を認めることです。自分をメタの視点から観察しつつ、「今はこういう気持ちなのだなぁ」と、感情をただただ受け止めます。2つ目は、苦しんでいるのは自分だけでない、このような状況であれば、こうなるのも当然だ、と「人としての共通点」を見出すこと。これは、人との繋がりを重視する「ポジティブ心理学ならでは」の視点かと思います。3つ目は、「自分に積極的に優しくする」ということ。大切な友達がこの状況にいたら、どんな言葉をかけるか、どんな労いをしたいか、そのような視点から、自分に優しくする行動や自分への労いの言葉を考えます。セルフコンパッションの効果はパワフルで、ありのままの自分や、過去も含めた今の自分を受け入れるきっかけになったりもします。

1月11日は、亜里さんの基調講演&4人の登壇者の後だったため、聞いている方も既にお腹いっぱいになっているだろうな、と思い、発表は最小限にして「セルフコンパッション」のワークを取り入れることにしました。先ずは自分への労いの言葉を考えていただき、その後、ご自分にそのメッセージを届けてもらうことにしました。

普段のセッションは一対一なので、クライアントさんの呼吸や様子に合わせて、誘導の声をかけるようにしています。ただ今回は、対象者55人!そんな大人数に対して誘導するのは初めてだったし、参加者との物理的な距離もあり、ちゃんとこちらの誘導が伝わるかな、皆さんご自分と対峙することが出来るかな、とちょっと心配していました。

今のご自分への労いの言葉を書き留めてもらってから、ワーク開始。先ずは皆で体をほぐして、深呼吸をしました。皆さん目をつぶって、真剣に取り組んでくださっていたので、逆にこちらの緊張が高まり、声の震えを抑えるのに必死なワタシ。。。苦笑 それから、私の言う言葉を心の中でリピートしていただき、その後、ご自分の書いた言葉をリピートしていただき、最後に、ご自分に感謝の言葉を伝えて、ワークは終了しました。

普段、クライアントさんと一緒にこのワークをやると、誘導している私自身がとても満たされた気分になります。正にセルフコンパッション!そして、本当に頑張っているご自分に労いの言葉をかけるため、涙される方も少なくなりません。ただ、研究会でやった時には、それぞれの心の中で何が起こっているかは、外からは窺い知れず、時間も残り少なくなってきたので、まとめと今後の展望についてお伝えして、発表は終了しました。

どうだったかな?セルフコンパッションを何となく伝えることが出来たかな?と気になっていたら、その後の分科会や交流会、DMなどで、結構な数の方がフィードバックをくださいました。「今の自分にぴったりのワークだった」「最近本当に必死だったから、言葉が染みた」「よくわからなかったセルフコンパッションが体感できた」「その後のセルコーチングのワークで、答えが出た」「泣きそうになった」などなど。頭で理解することと、体で感じることには大きな差があると思うので、その一助となれたことをとても嬉しく思いました。

もちろん1回5分のワークで色々な悩みが一気に解決!という訳にはいきませんが、何かのきっかけやヒントとなっていればいいな、と思っています。

ポジティブ心理学は、実践の心理学。私自身がポジティブ心理学を生きながら、よりよいセッションになるよう、精進していきたいと思います。ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!

*研究会を主催したニューヨークライフバランス研究所のホームページは、こちらから。

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