おとずれ

 夜半に降り始めた雨は激しく、私の夢の中でも降り続けた。夢は全体的に青色に包まれ、やがて私は夜明けを迎える。青く雨に閉ざされた、けれどほのかに明るく空気の澄んだ夜明けだ。

 雨の中に立つ私が何を思っていたのか、それは今となってはもうわからない。ただ、全身に浴びる雨にも寒さを感じず、髪や衣服が張りつく不快さもなかった。夢だからだと頭のどこかで考えていた。

 空を見上げても雨雲らしきものは見えなかった。空もぼんやりとした青に覆われていて、天と地の境がわからない。世界のすべてが水に沈もうとしているようにも見えた。

 その時だ。

 一本の光の筋が私に向かって伸びてくる。それにしたがい、その両側の青がかき消され、霧が晴れるように辺りの景色が鮮明になる。見る間に見事な桜並木が現れた。

 私は雨がやんだことを知る。あたたかな風が吹く。まだ、花びらが舞うことはない。花をつけた枝がやさしく笑うように揺れる。

 そして、目覚めた。

 窓を開けるとみずいろの空があった。その下に小さな児童公園。植えられたソメイヨシノが、ひとつ、花を開いて私に見せる。

 春が、来た。

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