見出し画像

好きがコト開く町を創る!キューブ食パンとコーヒーのお店「Kotier」

琴平町には、ケーキ屋さんはあるのにいわゆる一般的なベーカリーはありません。けれど、とっても美味しいキューブ食パンとコーヒーを出してくれるお店があります。

「あの立地であの営業形態で、あんなに流行っているのが信じられない。」とKotierを紹介してくれた昭和生まれの人の言葉が印象に残っています。

琴平駅の近くの住宅街にひっそりと佇みながら、強くその存在感を放つ素敵なお店「Kotier(コティエ)」の店主は、才気あふれる20代です。

色々な想いがこもったお店のことや生き方について、たくさんお話しを伺いました。

自分にとっての大切なことは何なのか

店主は、さぬき市に生まれ育ち大阪の大学に進学しました。そのまま大阪で就職し、それなりに良い待遇で楽しく働いていたのですが、もっと自由に世界を旅行するために、23歳で起業を決意します。
「自分はもっと楽しめる。広い世界を見て、自分が楽しめることを探したい。」と、さらなる人生の可能性を求めたのです。

24歳で一棟貸しの宿泊施設を開きました。
旅をする人を受け入れる場所を提供しながら、自分がいなくても稼げる場所を作る計画を立てました。

拠点だけど拠点じゃない場所をつくろう。
毎日機能しなくてもよい。
自分が大事にできるようなところ。

そんな思いを実現させるため、試行錯誤が続きました。

完成のタイミングでコロナ禍に

物件の取得や改装を経て、ようやく完成した一棟貸の宿泊施設。オープンにこぎつけたところで、コロナ禍に遭遇しました。
外出規制がかかる中、少しでも売上を上げていかなければなりません。もともとゲストハウスのコミュニティスペースとして準備していた場所でカフェを始めました。それが現在の「Kotier」になります。

けれど、やるからには良いものを、美味しいものをという思いがむくむくと沸いてきました。もともと凝り性なのかもしれません。試行錯誤の結果、オリジナルのキューブ食パンとこだわりのコーヒーが出来上がりました。

現在、琴平町の一軒家を改装し、ゲストハウス(一棟貸)とシェアハウス運営をしています。ゲストハウスは「Kotier」と同じ棟続きで、シェアハウスは「琴平荘」といい、若い移住者が住み、音楽やカフェとしても開放されています。

キューブ食パン

「Kotier」で出されているキューブ食パンの中身は複数あり、店主が好きなものばかり。店主自身が本当に美味しい、食べたいと思うものを人に提供したいと考えているからだそう。売れそうだから利益率が高いからという理由だけでは、作りたくはないのです。

イースト菌を使わず、レーズンの天然酵母とドライの天然酵母を組み合わせて丁寧に作られています。実際にいただいてみると、柔らかな香りと独特な軽やかさを感じます。

世の中には強めのインパクトで販売されている食べ物がたくさんあって、それは中毒性を帯びたものになりがちです。「Kotier」のキューブ食パンたちは、そういったドーバーミン系の刺激ではなく、ゆるやかな優しい快の刺激をもたらしてくれます。

思い出すと心がゆるみ、また食べたくなってくるのは、なんだか故郷に帰ってほっとする感覚に似ているなと思いました。自分の中心を思い出すような感覚にさせてくれます。

コーヒー研究室

「Kotier」でいただくコーヒーは、わたしがこれまで飲んできたものと全く違い、時間が経っても、淹れたての風味を楽しめるものです。

わたしは深煎りの濃いめのコーヒーが好きなつもりでしたが、それはあまりにも無知だったということを理解しました。

・コーヒーは時間が経つと、酸化してまずくなるもの。
・浅煎りはちょっと物足りない。

という先入観が見事に崩れ落ちたからです。

美味しいコーヒーは、冷めても美味しく、香りと第一印象の風味と飲んでからの後味と、何度も違った感覚を楽しめるものだと知りました。

店主のコーヒー研究は、際限なく貪欲に続いていて、焙煎や豆のこだわり、抽出法の工夫など様々な情報を参考に自ら試してさらに、さらにもっと良い方法を探し続けています。

そんなコーヒー研究の結果を、いただける場所が「Kotier」なのです。
コーヒー好きな方や詳しい方にも、とても贅沢で興味深い体験ができることでしょう。

やっていることはビジネスではないのかもしれない

店主は、幸せの感覚をお金に変えていくような生き方はしたくありません。価値ある人生を送るために、自分自身も好きなことを追求していきたいし、他の人の好きなことも応援したいと考えています。

キューブ食パンは、中身にバリエーションがあり、それぞれ原価が違います。けれど価格は一律同じに設定しています。お客様に本当に欲しいもの、好きなものを値段を気にせず選んでほしいからです。

このようにして好きなこと、素敵だと思うことを大切にしていると、面白いことをしている人との出会いが増え、その輪がどんどん繋がっていくことも経験しました。

そんな中、好きなことがあっても稼げないという理由で別のことを始めた人を見つけると、

「どうしたんだよ」
「本当にそれでいいの?」

と聞いてしまうのだそう。

仲間を大切にする心意気はもちろんのこと、自分軸で楽しんで生きる人と一緒に生きていくのだという気概が感じられます。

琴平が好きだから

琴平は香川で随一の観光地です。誘客を求めて琴平の町を選んだのが始まりですが、「Kotier」でお客様に琴平の歴史や文化をたくさん教えられ、その魅力の虜になっていきます。

次第に、大手チェーン店の出店もほとんどない小さな町で暮らすことの意味や価値を考え直すようになりました。田舎は、面白いことや興味のあることを深める生き方ができる可能性に満ちた場所なのではないか。

最初はビジネスの場所として選んだ琴平町が、居場所になってきたのです。すると、どこの観光地でもやっている観光ビジネスの形態に疑問を覚えるようになりました。流行りを作ってそれを大きく売っていく従来のやり方は、いわゆる刈り取り型のビジネスです。
一方、地域に住む人たちが求めているものは、一過性の流行りや会社の利益よりも、暮らしを支えて彩を添えてくれるビジネスです。長くその土地に根差した文化や風土に合うものが必要とされています。
それがわかると、自分のやりたいことや方向性が固まってきました。

目指すのは、顔が見えるビジネスです。自分や他人の気持ちを尊重し、誰のために何のためにやっているのかがはっきりわかるもの。作る人が買う人の顔を思い浮かべ、喜んでくれる姿を見て喜ぶ、そのようなビジネスをずっと続けていきたいのです。

好きなコトを開花させたい人たちと良い町を作っていきたい

店主は、こだわりがある小さなお店がたくさんあって、お互いに応援しあうような町作りを、若い世代から新しい時代の幸せな生き方として提言していきたいと考えています。面白いことに取り組み、それが継続できるようなビジネスを目指しています。

理想を現実にするためには、仕事量を極端に増やさないといけないこともあるでしょう。かえって自由から遠ざかり、何をやっているんだろうと葛藤することもあるかもしれません。けれど、それを乗り越えるたびに、経験が増えて楽になる方法を見つけていることに気が付くと思います。

そんな経験を経た先輩がたくさんいる琴平町に、琴平町だからこそ開くコトを求めて若い人が集まってきてくれたら素敵ですね。

お店の詳しい情報はこちらから

https://www.instagram.com/kotier873/



文/写真:松原


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?