『異世界仮面ライダー(仮)』を書こう~ぼちぼち本編13話~24話~

素人オタクによる妄想ストーリー書き散らし記事の、第2回目です。前回よりやや文量が増えて、各話あらすじというよりは、小説もどきになってきました。

タイトルを見てこれ何?と思った方はまず以下記事からお読みください。

『異世界仮面ライダー(仮)』を書こう~ざっくり本編1話~12話~|松田 事|note

◇前回までのあらすじのあらすじ。
悪の組織に改造されてしまった【主人公】は、組織から逃亡の末に未知の世界へ迷いこんでしまう。
謎の怪物(【暴走獣】)との戦闘、出会った人に恐れられたり助けられたりがありながら、自分の力と関りがありそうな【海辺の国】を目指す事に。
そして今、村で世話になった【少年A】【少女B】、そして何だか気に食わない【2号】と共に、【海辺の国】への旅を続けていた…はずの【主人公】は、【2号】においてきぼりを食らい、少年達と共に歩いて指定された国の中心部に向かっていた。

◇第13話:新たな出会い
(回想。)
徐々に家やその他建物が増えていく街道を歩く【主人公】と少年達。時に前回の老人同様話しかけられ、時に3人の誰かから住人に話しかけ、誰かが目に入るあらゆる刺激に食いつき、そして誰かが「早く行こう」とそれぞれをせっつく。「なんだか旅行に来たみたい」と前回の緊張もすっかり忘れたような【主人公】だが、指定された門の前でこちらを睨みつける【2号】を目にして、しまった、と再び体を固くする。
(OP)
【2号】の「遅い」に対して【主人公】。
「ちょっと寄り道が過ぎたのは謝るけど、そっちが置いていったんだろ?僕はともかくこの子達は客扱いって言ってたじゃないか。任務放棄だ!」(ニコニコしながら少年達も「職務放棄だ!」と真似る)
「俺の任には【暴走獣】の対処も含まれている。国の近くにあっては一番の危険は【暴走獣】の存在だ。それを優先したまで」不服そうな【主人公】。
そこに「なんだ、もう隊長のとこに来てたんすね」と頭頂部の髪を逆立て【2号】と似た服装に身を包んだ【兄E】が現れる。どうやら【2号】が命じ、到着の遅い【主人公】達を探しに行かせてたよう。へぇーと、【主人公】の顔をまじまじ見ながら自己紹介をする【兄E】。
そして「お前らこ~んな小さくなかったか?」「にーちゃんもも~っとちいさかったでしょ?」「髪もそんな上に伸びてなかった!」と兄妹の再会も一頻り進んだ頃、【2号】が口を開く。「ではお前は二人を宿へ」「了解っす!」少年達の【主人公】は?の問いに再び【2号】。
「こいつには大事な用がある。宿も別だが心配するな。終わったらそちらに顔を出させる。」
少年達【兄E】が去ると、「さて」と手錠を取り出し【主人公】の腕にかける【2号】。手錠を見、え~⁈と【主人公】が驚く。
(CM)
広い空間を白い壁で囲った、【海の長】がいるという宮殿内・謁見の間。高い位置には青基調で「海の神々」が描かれたステンドグラスが。空間の中ほどに手錠をかけられ膝をつく形で座る【主人公】。その斜め前にかしこまり膝まづく【2号】。
小声で【主人公】「これ(手錠)、どうにかならないの」【2号】「お前は不審人物だと言ったはずだ。それをどうにかしようと言うなら…」【2号】の刺すような視線に押し黙った【主人公】は前方に目をやる。
一段高い場の左右に青いローブの者が何人か、こちらを見てひそひそ話しつつ控えている。もう一段高い場、薄く白いカーテンに区切られた先に
人影が現れ、ローブの者たちと【2号】はかしこまる。
くぐもった太い声が、自分はこの国の長であること、【主人公】のその力はこの国にとって重要かつ外の国に持ち出したくはないもの、よって【主人公】が以後この国の管理外に出る事を許すわけにはいかない事を告げる。
戸惑う【主人公】に、やや口調を和らげて「何も一生牢屋に繋ごうというわけではありません。この国の民として、楽しく暮らしてくれれば良いのです」と声の主。手錠を見て、どうせ選択の余地はないし、分かりましたと軽く俯きながら【主人公】。何かを察知し【2号】、少し視線を後方に向ける。
「では我々は、あなたを新たな仲間として歓迎します」声の主が告げると、【2号】の視線の先から背の高い、青く長い髪の女性が静かに歩いてくる。まだそれに気づかぬ【主人公】。青い髪の女性はその横にしゃがむと【主人公】の顔を除き込み手錠に触れながら、「ようこそ、【海辺の国】へ。私がこの国の長、【海の長】です」とほほ笑む。
驚いて声を上げ横に身を逸らせる【主人公】。気付くと手錠は外れている。それを見ながら女性はニコニコと声を弾ませ、【2号】と話し出す。
「なんて理想的な反応!外から来る人はいつも、長が老齢じゃない男じゃないと驚くものだから、それを利用すればさらに驚いてくれるんじゃないかって。あ、ちなみにあれ(前方から聞こえていた声)は拡声器。最近研究部が発明したのすごいでしょう?」
「【海の長】様、わざわざこのような戯れ。ずいぶんと意地が悪いのでは?」「せっかくのお客様、いえ、新たなこの国の民なのだから、楽しくお迎えしなければ、でしょう?それに、(手錠を指して)意地悪は貴方の方
じゃない?私は皆丁寧にお連れしてと言ったのに」「この者が国民となる事承諾するまで、油断はならないと考えました」「ふふ、【2号】は心配性ね」
目を丸くして座り込んだままの【主人公】。ひとしきり話終えた【海の長】は【主人公】にではまたと軽く手を振り、ニコニコと、ローブの者達と話しながら退室。
【2号】に引きずられるように退室した【主人公】の頭に浮かんでいたのは、【悪の組織】で見た【青い髪の少年】。
【主人公】はそわそわと【2号】に尋ねる。「あの、【海の長】様みたいな、青い髪の人って他にもいるの?」「あの方は神々に選ばれ我らの長として立つ者。あの色はその証。同じような者などいるはずがない」じゃああの【青い髪の少年】は?この国とどう関りが?と【主人公】の疑問は尽きない。
(次回へ)

◇第14話:仕事
(回想。「そういえば(少年達と)宿は別って言ってたような…」)
「え、ここ?」一度少年達の宿に顔を出した後、【2号】と【兄E】について行った先は【衛兵隊】用の寮の一室。となりの部屋は【兄E】、【2号】の部屋も目と鼻の先らしい。
明らかに戦闘用であるその「力」を考慮し、【主人公】には【衛兵隊】の仕事をさせる事、当分は基本【2号】か【兄E】が行動を共にする事を告げる【2号】。
「お前がこの国にとって害がない、仕事に慣れたものと判断出来ればこちらもお役御免だ。さっさと慣れろ。」まだ信用ならないのかとむくれる【主人公】。「どうせ仕事で一緒だろうけど、改めてよろしく」と【兄E】。自分より少年達に付いてなくていいのか尋ねる【主人公】。滞在中、基本少年達は学校に通い、職員宅にホームステイする形で【兄E】不在時は面倒をみてくれるらしい。あそこならここの歴史や読み書きも教えてもらえるしちょうどいいと【兄E】。「僕もそっちがいいなぁ」とこぼす【主人公】に、「朝は早いぞ。さっさと寝ろ」と【2号】の言葉が刺さる。
(OP)
一晩明けて、【2号】【兄E】と鍛錬場にやってきた【主人公】。【2号】曰く、【衛兵隊】の一番の仕事は国や【海の長】含め要人要所を守る事…だが、何年も大きな戦乱や暴動は起きていない事もあり国内も穏やか。最近は多数の兵や鍛錬の成果はもっぱら【暴走獣】の対処に活かされているらしい。他、平時は町の見回り・小さなもめごと仲裁・人手力仕事を
要する頼まれごと等々。「軍隊というよりお巡りさんなのか」と【主人公】。
【衛兵隊】の隊長を務めており、他にも色々と仕事があるという【2号】と一度別れ、商店が連なる街を歩く【主人公】と【兄E】。道路や各所に流れる水路は石できれいに舗装されており、脇に立ち並ぶ商店は物と人で賑わう。
「珍しいもんいっぱいでしょ?」と、【兄E】が指した先には小さいが電球の使われた照明器具、あれはと向かった先に公衆浴場と、明らかに少年達のいた村、おそらく国とも文化レベルが異なっている。道行く人の様子も見つつ【主人公】は【兄E】に尋ねる。
「こんな平和そうな国で、犯罪っておこるものなの?」「俺が来てからでも少ないっすよ?なんせ“神々の裁き”があるんで」「神々の裁き?」
「何かこの国には、『酒を飲み過ぎると波にさらわれる』とか『食べ過ぎは体中の水が膨らんで死ぬ』とか、とにかくやりすぎは海の神様に怒られるって言い伝えが沢山あって、それを皆信じてほどほどに生きてるんすよ。でも、たまーに、『じゃあ、神様に怒られるまでは何してもいいだろ』ってバカはいるらしいっす。なんで、そういうバカが出る度に決まり事が増えるんだとか」「そうなんだ」
「あと、この国は見ての通り随分豊かなんで“余暇”を持った奴が多い。その上皆好奇心の塊っすから。神様の裁きを信じててもつい好きに遊んだり研究したりして」「あー、好きにやりすぎて衝突が」「そう。そういう時に俺らの出番ってわけで」
広場に出た二人。【主人公】に持ってきた袋の中の旗を組み立ててくれと言い、自分は商店から適当な木箱を借りてくる【兄E】。組み立てた旗は【主人公】が持ち、【兄E】は木箱に乗り、道行く人に、時に笑顔で呼びかけ始める。
「あー、あー、皆さんこんにちは!(レスポンスを待つポーズ)【衛兵隊】です。今年は随分暑いですね!熱くなるといらだちやうっかりが増えますからね。大事に至らないよう、普段よりちょっと気を引き締めた上で、楽しく過ごしてくださいね!そして大事の時は迷わず【衛兵隊】を呼んでください!」等々。それを眺めたり「今日も元気だね」と声をかける商店の人、クスクス笑って通り過ぎる人、【兄E】に向かって手を振る子供を見て「これも仕事なんだなぁ」と、自分も軽く手を振ってみる【主人公】。
(CM)
中心部をぐるり回って帰ろうとした時、人々がある方向に走って行くのが見える。これはと同じ方向に走る【主人公】と【兄E】。案の定人だかりの先には【暴走獣】。
大きく暴れてはいないが、先に来ていた【衛兵隊】数人が、危ないから下がって!と人々と【暴走獣】の間に立っている。
「俺たちの出番っすよ!」と走りながら右腕輪に付けた青い石に、左腕輪の飾りをかざし、防具と槍を出現させる【兄E】。【2号】に比べると軽装ではあるが、その姿に「君も変身出来たの⁈」と驚く【主人公】、自分も変身して【暴走獣】に向かう。
二人を見た【暴走獣】は興奮して襲い掛かってくるが、【2号】の時同様【主人公】はおとりに回り、【兄E】に「後ろ回って!」「今だ!」など声をかけながら応戦。【兄E】の一撃で【暴走獣】を倒すと、見ていた街の人や他の【衛兵隊】からも歓声が上がる。
一息ついた【主人公】を「あんま強くないって聞いてたのに、すごいじゃないっすか!」とキラッキラの瞳で見つめる【兄E】。兄妹だなと、少年達を思い浮かべる一方で、はじめは暴れていなかった【暴走獣】に攻撃したことにモヤモヤする【主人公】。「これも仕事か…」
(次回へ)

◇第15話:海と記憶。
(回想)
「隊長、お願いします!」と、【2号】に向けて下げた頭の前で手を合わせる【兄E】。非番故、少年達と海に遊びに行くことになったがどうしても【主人公】も一緒がいいと言うので、連れていきたいとの事。「替わりの人間を見つけてくれば問題ない。ただし、今の倍は深々頭を下げてこい」と【2号】。
その場を去り【主人公】と話す【兄E】「【2号】、しっかり上司してるんだな」「いやホント、年下なのにしっかりしてるし腕も立つしで頭上がんないっす」「え、【兄E】っていくつなの?僕20歳(…たぶん)だけど」
「え、俺同い年じゃないすか。えー、世の中すごい奴多すぎっすよー」
(OP)
「海」「海!」『海だーーーー!』元気にはしゃぐ少年達。着ているのは【海辺の国】の服(袖なし白ワンピースの腰をベルトで締めた形)。村から持ってきた服では暑いという事で用意してもらったらしい。早速水に足を浸け遊び出す少年達に気を付けろよ、と声をかける【兄E】。
「俺も初めて見た時は感動したなぁ。【主人公】さんは、海は初めてなんすか?」
聞かれて【主人公】、「元の世界で家族と海で遊ぶ光景」が過る。「見た事はあるみたい。たぶん。」
そこに聞き覚えのある女性の声「楽しそうで良かった。貴方達は遊ばないの?」【主人公】が振り返ると、少年達と同じような姿で、長い髪を後頭部でまとめ、胸元には青い石をはめ込んだペンダントを着けた【海の長】の姿が。その後ろから、「お前は今どうしてると聞かれたので話したら、是非来たいと」と少し呆れた顔で説明する【2号】もやってくる。
「そのうち海には来たかったの。ちょうどいい機会と思っただけ。さ、行きましょ?」と動揺の【主人公】と、彼女の挙動に慣れてるのか「了解!」と楽しそうな【兄E】の背を押し少年達の元へ向かう【海の長】。
「こんにちは、小さなお客様。この国を楽しんでくれてるようで、長として私もうれしいわ」と少年達と会話する【海の長】。
存在は知っていたらしく、突然の来訪に目を丸くする【少年A】、青々とした髪色に見とれる【少女B】。「今日は、皆にもっと楽しいものを見せようと思って。」
そう言って近くの岩に腰掛け、腰のベルトに下げたポーチから、魚を模した指輪飾りの付いた指輪を取り出す【海の長】。ゴムのような素材のそれをペンダントの石にかざすと、腰から下がまるで人魚のようなシルエットのボディスーツに包まれる。
皆が驚く中「石の力で防具をまとっているでしょ?同じような事を、ドレスでは前から試していたけど、趣向を変えてこういうのもいいんじゃないかって、作ってもらったの。素敵でしょ?」
そのままそろそろと海に入り泳ぎ出す【海の長】、スイスイと泳ぎ「魚を真似ると早く泳げるって本当ね!」と上機嫌。私も俺もやりたいとはしゃぐ少年達や【兄E】の横で驚きっぱなしの【主人公】。
少し離れたところから眺める【2号】に向かって【主人公】「この国の人ってやっぱりあんな感じなんだね。」「ああ。だが【海の長】様はああして人と関わりたがるから特別、じっとしてくれない」きゃあきゃあ少年達と遊ぶ【海の長】を見て【2号】は溜息をつく。
(CM)
岸から少し離れた海、漁をしている船の側には、【暴走獣・魚】が迫る。変わって【主人公】達のいる岸辺。そろそろ帰ってはと【2号】が提案した頃、沖から先ほどの漁師の叫び声。見ると船の周りを2匹?の【暴走獣・魚】が泳ぎ回っている。
何とかしなきゃと変身した【主人公】、「家族との記憶」から、落ちている木片を大きくしてサーフィンのように沖に出ようとするが、波を操ろうと試みるも潮の流れが悪いのかなかなスピードが出ない。一方、変身後の鎧の形状から、変身自体が海に適さないと二の足を踏む【2号】と【兄E】。
船を探しに行こうかと走りだそうとする【海の長】を見てひらめく【2号】「先ほどの指輪!指輪を早く!」
海に飛び込み泳ぎだした【2号】、指輪をベルトの石にかざし「人魚の姿」を纏うと、ぐんぐんスピードを上げ【主人公】を追い抜いていく。「その手があった!」と主人公も自分の足元をヒレ状にして船に向かう。
【暴走獣】をかわし船に乗り込んだ【2号】、【暴走獣】近くまで来ていた【主人公】に「いつも通り引き離すか、無理なら水の外に打ち上げろ!」と叫ぶ【2号】。気を引こうとする【主人公】だがうまくいかない。今度こそ!と手足周りの水流を操り、まずは一匹を海から天に押し上げる。船にあった道具から槍を生成していた【2号】はそれを投げ見事仕留める。同時に、もう一匹を先ほどより高く打ち上げた【主人公】、自らも海から飛び出し、【暴走獣】に渾身の蹴りをいれ何とか倒す。
岸の【海の長】少年達【兄E】。漁師と共に戻る2人の姿を、皆安堵と興奮を行き来しながら見つめる中、「相変わらずかっこいいよな【主人公】」
「泳いでもかっこいいんだ【2号】くん…」と少年達。
夕暮れ。皆帰ろうとする中、夕陽を見て再び「家族と海で遊ぶ光景」を思い出した主人公。ぼーっとする【主人公】にどうかした?と【少年A】。
「いや、夕陽って見るとなんで切ないのかなって」「え?えーと、“もう遊べないから”じゃない?」「そっか、そうだね」
(次回へ)

◇第16話:知らなかった何もかも
(回想)
前回の帰り道。少年達にさっきの(サーフィン的動き)って何?と尋ねられた【主人公】。【主人公】が「元居た世界では~」と口走ったのを、何歩か後ろを歩く【2号】は聞き洩らさなかった。
後日謁見の間【2号】と【海の長】。一度徹底的に【主人公】の事調べては?と提案する【2号】。【海の長】真剣な面持ちで「力については勿論、“彼”との関りはどこかではっきりさせた方が、貴方にとってもいいでしょうね。」【2号】が返事をすると、【海の長】はパッと楽し気な表情に変わり続ける「まぁ、そうでなくても“皆”、調べたくてうずうずしていたから。」
「と、言うわけだ」と【2号】が【主人公】を連れてきたのは宮殿内にある研究室。【主人公】は、目をギラギラ・手をわきわきと前方に構えにじり寄る研究員達に囲まれていた。口々に研究員「大丈夫、取って食おうって訳じゃないから」「怖くない、怖くないですよ~」「痛い事しないし!あ、ちょっと血は取らせてほしいかもでもチクっとだから!」
研究員達の勢いに押され【2号】に助けを求める【主人公】だったが、【2号】は「終わったら呼んでくれ」と静かに部屋を出る。
(OP)
研究所内、診察台に寝転ぶ主人公。片腕には、採血の跡と思われるガーゼが貼られている。傍らに座り何か話したり器具や書類を準備する研究員達。彼らの衣服は、主人公が「元居た世界」の病院で、看護師か手術時に医師が着ていそうな、下はパンツルックの水色の上下。天井に電球は使われている以外電子機器の姿はないが、採血に使われた注射器や、準備されている細かな器具は、見知った病院と同様に見える。
触診をし始めた背の小さい老齢の男性研究員に、【主人公】は尋ねる。「この研究室、街に比べて随分…えっと、先進的なものが多いですよね?」
すると老齢研究員はよくぞ聞いてくれたとばかりに「これ等の発明発展は全て「神々の石」の恩恵によるもの」と早口で語り始める。
「神々の石」とは、【主人公】達や【2号】達が使っている青い石の通称で、何十年も前に、当時の長が夢で神々の声を聞き海から掘り起こした物だという。それ以前から、この国の民は研究熱心で、「世界を作る素」は何か等議論研究に励んでいたが、ある時石の性質を調べる過程の“誤作動”で、
研究室いっぱい、まるで星空のように、世界の分解図(超々拡大された原子の姿)が映し出された。その光景と、石の{拡大増幅する作用」を駆使し次々発見を繰り返し、主に医療・新素材開発・農業肥料等の技術を急速発展させた。
他にも、「瞬時に物質を組成する力」は【衛兵隊】の武器兵装に、「増幅の力」はわずかな火や水を一時的だが増幅させて動力や物の加工に利用している。これにより、素材や燃料・飲用以外の水等、調達にかかる手間・金が
少なくて済むようになり、医術向上も加わった結果、人々は物質的時間的豊かさを手にし、それが文化や益々の研究発展に繋がったのだとか。
もう一ついいですか?と【主人公】は【暴走獣】について尋ねる。
やや困り顔になった研究員曰く、出現が確認されだしたのはここ数年。回収した動物たちを調べた結果、皆体から極めて微量の「石」が検出されたとの事。推測としては、人が神々から石を賜り掘り起こした頃より、気付かぬうちに極々微量の「石」は周辺の自然に放出されていたのではないか、それを摂取した動物たちが食物連鎖の中で「石」の濃度を増し、「増幅する力」の暴発(つまり巨大化)を招くほどになったのではと考えられているという。
それを聞き顔を強張らせた【主人公】に気付いて研究員。「現状石の人体への影響は確認されとらんので安心を。しかし、【暴走獣】の事や「神々の裁き」も考慮して、石の使用には、例外もありますが限りを設けております。
元々神より賜りし偉大な力故、免状を持った一部の人間しか使っておりませんが」
(CM)
先ほどの話、動物たちの暴走と自分が使っている力は同じ、「暴発」が存在する事などがぐるぐると頭を駆け巡る中、言われるがままに簡単な検査を受けたり、変身して見せる【主人公】。
顔を強張らせ時に冷や汗をかく【主人公】に、「急に色々とごめんね。一旦休憩しようか?その後でいいから、この力を得た前後の話、覚えてる限り聞かせてもらっていいかな?」と女性研究員。
一日がかりの検査調査が終わり、ようやく研究室に呼び戻された【2号】。そこには疲れてうつらうつらした【主人公】と傍らに空になった食器。
背の高い男性研究員に進められ【主人公】の向かいにある椅子に座った【2号】に女性研究員が説明を始める。
「まず、【2号】隊長の報告通り、彼の力、装備の拡張の仕組みは我々のものと同等と見ていいでしょう。異なるのは、石の安定利用のための媒介、隊長のしてるベルトがそうですね、が「変身」後にしか見当たりません。彼の「何者かに改造手術を受けた」との証言、触診から、おそらく腹部に石と媒介素材が埋め込まれているものと思われます。」その言葉に眠気も飛び、腹部を見、さする【主人公】。
続けて女性研究員。「装甲に使われている素材に未知のものが含まれるので、それがこちらでも生成可能なものか引き続き解析します。それから、彼と、失踪した【別人の名前】の話なんですが…」
睨むような【2号】と、目をパチパチさせる【主人公】を見て言いよどむ女性研究員に代わり、老齢研究員が続ける。
「ええ、彼、【主人公】の身体特徴や検査結果と、【衛兵隊】入隊時の【別人の名前】の情報を比較した結果、少なくとも【主人公】の体は、【別人の名前】のものだと言えます」
何を言われているか分からず目を丸くする【主人公】。語気をやや荒げて「他人の空似でもなく【別人の名前】そのものだとしたら、今のこいつは何なんだ?頭でも打っておかしくなったのか?」と【2号】。
研究員が返す。「ここからは推測も混じりますがご容赦を。外傷や“暴発”の影響から記憶や人格に変調が出た可能性も考えましたが、【別人の名前】が失踪してから次に【衛兵隊】に目撃され“彼の装備”で逃走するまでは
そう時が無かった事から、彼の言う手術がその間に行われたとは思えんのです。」「ではこれは何なんだ!」と【2号】は研究員に詰め寄る。
ややのけぞりながら【2号】をまっすぐ見つめ研究員「彼が言う別の世界の存在を信じるならば、【別人の名前】の体を借りて、別世界より転移した彼【主人公】の人格と体内のベルトが今ここに存在しているのかと。理由も原理も、不明ですが」
感情に言葉が付いてこない様子の【2号】に研究員は静かに続ける。「海の伝承には、古来神々は数多の世界を作ったとあります。摩訶不思議な「神々の石」が今目の前に存在する以上、不可解だとしても、彼がここにある事実、別世界の可能性も、認めざるを得ないのでは」。
(次回へ)

◇第17話:僕の意思
(回想。)
前回から続いて研究室。体を固くしたままの【主人公】に、男性研究員と女性研究員が声をかけ、退室する。
研究室に残った【2号】と老齢研究員。やや疲れた様子で【2号】「今奴が【別人の名前】の体の主として、【別人の名前】の、“中身”はどこに行ったんだ?」研究員が返す。「分かりません。何らかの形で存在しているかも
しれませんし、失踪時海に落ちた可能性があった事、彼の後頭部にぶつけたような跡があった事から既に…」「もういい。…騒いですまなかった」と研究室を去る【2号】。
寮に戻るも、うまく寝付けない【主人公】。研究室での話がぐるぐると渦巻く中、ふいに【2号】の姿が過る。今より少し幼い顔で、やや粗末な服装で、こちらを振り返っている。待って待ってと自分の声がする。いやこれは
自分の声なのか?僕はこんな【2号】は知らない!
全身に力が入った状態で目を覚ました主人公。「夢だよ、さっきのが夢」と自分に言い聞かせるように大きく息を吐く。
朝食の時間も過ぎ、迎えに来た【兄E】に体調が悪い事を告げると再び寝床でぼーっとしたり転がりまわったりする【主人公】。そのまま数時間経った頃、重い体を引きずり部屋を出て、人目を避けながら【主人公】は昨日の研究室を訪れる。
(OP)
鍛錬場で、【主人公】が休む事を聞いた【2号】はそうかと返すと、新入りの稽古を務める隊員達の姿に、【別人の名前/主人公と同じ顔。以下幼馴染と表記】を思い出す。
(【2号】の過去の記憶)【衛兵隊】の隊長になったばかりの【2号】を、カッコイイ!すごい!と満面の笑みでほめる【幼馴染】。いいなー俺も【衛兵隊】入りたいなーと言う【幼馴染】に、昔からの要領の悪さを指摘し、今の仕事がお前には合っていると【2号】。度々いーなーを繰り返す【幼馴染】に【2号】「志願したところで落とされる」。
それから一年ほど経った頃、鍛錬場にはニコニコ顔で【2号】を待つ【幼馴染】の姿。「なんでこいつがここに」と採用担当に詰め寄る【2号】だったが最近志願者が少ない、水道部で石を扱ってたなら大丈夫だろう、採用に興味ないと丸投げたのは隊長!と反論を許さず返される。
【幼馴染】が訓練や簡単な任務でミスをする度、向いていないやめろと【2号】。大丈夫だと【幼馴染】。
防具武器の実体化訓練をギリギリ終えた【幼馴染】だったが、ある日の乗り物の実体化訓練がうまくいかず、暴発を引き起こしてしまう。ぐちゃぐちゃの黒い塊に包まれ、パニックで叫び声を上げる【幼馴染】。捕えようとする隊員達に向かって、塊から無数の棘が飛び捕縛を阻む。叫び声に合わせ飛びまわる塊は鍛錬場の壁を突き破り、外へ飛んで行ってしまう。鍛錬場に響く非常事態の声―
時は戻って鍛錬場に【暴走獣】出現の報。出動する【2号】と隊員達。【暴走獣】出現地に着くと、何やら色々と道具を持って戦う【主人公】の姿が。
(CM)
「【暴走獣】を傷つけず捕まえたい?」時間戻って研究室を訪ねた【主人公】。「てっきり疲れか混乱で寝込みでもしてるかと思ったのに」と昨日の女性研究員。同じく驚く背の高い研究員と老齢研究員。
座って、出してもらった飲み物をすすりつつ、苦笑いの【主人公】は言う「勿論、昨日は分からないだらけで全然眠れなくて、今だって何もせずに布団にもぐりたいぐらいで。でも、よく考えたらこの世界に来てから全部分からない事だらけで。とにかく何か出来ること、分かるかもしれない事にすがってこの国まで来たんだから、そうして何とか生きてきたのが僕なんだからって…。」
言葉に詰まる【主人公】に、背の高い研究員は優しく「それで、ひねり出した“何か出来る事”が【暴走獣】の事だったと?」返す。強くうなづく【主人公】。今まで何度か、【暴走獣】を倒すのにモヤモヤした事、もし極力傷つけず捕獲し「石」を取り出す事が出来るなら、無駄に殺す必要はなくなるんじゃないかと語る【主人公】。
研究員達口々に「言われてみれば、【暴走獣】の対処は【衛兵隊】に任せっきりで、生きて捕獲までは考えた事なかったね」「暴れなければいいなら、麻酔はどうですかね」「使うにしてもどう注入するか、その前にも動きを止めないと…」
割り込む形で片手を手を上げて【主人公】「それから!力の安定化のためどうのって」「ああ、媒介がいるって話ね。それは簡単。想像の手助けとなるような、具体的な形を模した物があるといいって事。」「水の扱いに苦労するのは、宙にある水分を集め形を想像するのが特に難しいからで…」「それ以外なら、君の『変身』みたいな文言を覚えさせればいいんですよ」「文言に合わせてどんな形を作り出すか、石に覚えさせるべし」「なんか動物をしつけるみたいですね」
「不思議なことに、神々の石はこちらの意思を解すものなのですよ、“いし”だけに」「今のは流していいですから」「では具体的な策、考えますか!」
場面戻って【暴走獣】と対す【主人公】と【2号】【衛兵隊】隊員達。木のハンマーで【暴走獣】の脚を叩き動きを鈍らせていた【主人公】、【2号】【隊員】達に向かってまだ!見ててください!と制止の声。
持っていた手のひらサイズの網を取り出しベルトにかざし、【暴走獣】を覆うように実体化させる。何となくだが【主人公】の意図を察した【2号】、隊員達に網の端を掴み抑えるよう指示。
その間に【主人公】、用意した、先端に太い針の付いた薬液ボトルを【暴走獣】に飛びつき突き立てるが、思うように動きは鈍らない。【2号】に向かって、「ごめん、眠らせたかったんだけどうまくいかなくて!出来るだけ、気絶ぐらいでお願い!」と叫ぶ。
それを受け【2号】、飛び上がり「簡単に、言ってくれる!」と【暴走獣】に蹴りを一撃。見事気絶に持ち込む。
鍛錬場に戻った【主人公】は、【2号】に正座をさせられている。筆記具を持った【2号】、「仮病の罪、腕立て〇回。無謀な単独行動、腹筋〇回。独断作戦の失敗、槍素振り〇回」など書き記していく。
最初はえーっとそれを聞いていた【主人公】だが、次第にやや笑いがこぼれだす。何だと眉をひそめる【2号】に【主人公】
「昨日の話でその、いなくなった人の事で落ち込んだりしてるのかと思ってたけど、良かった。もういつも通りなんだなって」見覚えのあるニコニコ顔の【主人公】に、露骨にいらだちの表情の【2号】は、「余計な一言、走り込み外周〇回。真面目に話を聞かない、重量上げ〇回。無神経、寮の雑巾がけ往復〇回…」とさらに「罰」を書き足していく。慌てて謝る【主人公】を少し離れた場所から見る【衛兵隊】隊員達。
「あそこまで理不尽な隊長珍しいな」「いくら隊長でも、“同じ顔の別人”相手に、冷静でいられないって事じゃない?」
(次回へ)

◇第18話:連携
(回想。)
前回の捕獲提案を機に、【衛兵隊】の装備開発に積極的に関わるようになった研究部の面々。【海の長】からも正式に許可が下り、鍛錬場横の詰め所にて、【主人公】【2号】の他【衛兵隊】と研究部からそれぞれ数名が参加で開かれた会議は発案合戦となり多いに盛り上がる。「なんだか楽しそう」と【青の長】も顔を出し、時々会議でなくお茶会が始まるのを【2号】が釘を刺す光景なども見られる。
「今までは誰がこの(武器等アイテム)形考えてたの?」「剣なんかは在りもの模して、職人に彫りと量産はお願いしてましたよね」「隊長が使うのは自分で作ってなかった?あの馬とか」
「何やらせても出来るなんてずるいな、【2号】に弱点とかないの?」「ふふ、素直じゃないところかしら」「(また話がずれている。)」
(OP)
各々「どれが一番かな」「実際使うの楽しみ」など言いながら、本日は解散となった開発会議。机いっぱいに広がった発案メモを見て、【主人公】
「いざ捕まえようとなったらこんなに張り切ってくれるけど、今までは皆、【暴走獣】の事どう思ってたんだろう?」メモに目を通しながらまとめつつ【2号】「駆除すべき害獣。あとは、今でこそ出現数が増えてきたが、数の少ない頃は民の間では話のタネになる“怪現象”、研究者の中でもせいぜい神々の石に付いてきたおまけ程度だ」「なんだか、冷たいなぁ」「…お前、自分が変わり者だと自覚した方がいいぞ」
戸棚にまとめた紙類をしまい部屋を出ようとする【2号】を呼び止めて【主人公】。「さっき道具も自分で作るって言っただろ?どんなのか見せてよ」「そこの引き出しに試作があるから勝手に見ていろ。ただし紛失したら腕立て腹筋…」「わかったちゃんと片付けるから!」
【2号】が一度部屋を去った後、引き出しからそれと思われるミニチュアの入った箱を出し、中身を机に並べる【主人公】。刀身の長さ形が様々な、大きくても手のひら大の武器の模型や、コイン状の粘土か何かに、甲冑のような図柄が彫られた物。馬と思わしき親指大の品々は、
土人形や木の玩具のようなかわいらしいものから、写実的な形状の金属製のものもあった。他、装備には関係なさそうな小さな動物の木像、ただ模様が彫られた板などなど小物が乱雑に入っている。「こういうの好きなんだな、意外。」
ミニチュア一つ一つを見ては感心しながら主人公「“自分で作る”か、いいなぁ」
(CM)
再び装備開発会議。決まって装具(「石」で拡張させ使う前提の小物アイテム)製作を進めるものは以下の通り。
・先日【主人公】がお試しで使った捕獲網では強度や使い勝手に難ありという事で、それらの改良。
・個人でも捕獲・足止めに使えるよう硬質ロープ
・【暴走獣】の動きを鈍らせる、最終眠らせるため、薬液の塗られた針を打ち込む弓
それから、捕獲となると今よりも持久戦になるだろうと、防具の重量や強度の改善、弓の使用や足止めでやむを得ず【暴走獣】を大きく傷つけた場合の応急処置も必要だろう、と話が進んでいく。
ではそれぞれ頑張りましょう!と解散。【2号】は他の【衛兵隊】隊員と研究室へ向かう。詰所を出た【主人公】は会議を覗きながら待っていた【兄E】に話かける。
「【兄E】は会議でなくて良かったの?結構隊では“えらい人”なんでしょ?」「いや俺は腕っぷしを認めてもらっただけなんで、こういうのは苦手なんすよ。その分、新しい装備出来たらバンバン働くんで!すばしっこい奴は必要でしょ?」頼りにしてる、でしょでしょ?など話す2人の元に、会議にもいた女性研究員が戻ってきて声をかける。
「さっき渡しそびれちゃったから、これ」と“針”の試作品を渡す研究員。「この前使ったあれを小型にしたんだ。突貫で作ったし、ちょっと痺れるぐらいの効果だろうけど、数打てばそれなりに使えるはず」
仕事早!と驚く【兄E】とお礼を言う【主人公】。「本格導入までも【暴走獣】は出るだろうし繋ぎでね。あ、隊長には言ってるから安心して」と研究員。そして帰り際に研究員
「こないだ捕まえた【暴走獣】、石の摘出終わって研究室にいるから。良かったら見に来なよ」
しばらくして【暴走獣】出現の報を聞き出動した【主人公】と【兄E】と隊員数名。「これ、任せていい?」と針を【兄E】に渡し、前回同様大きな網を実体化させ【暴走獣】を抑えようとする【主人公】と隊員達だが、抵抗され振り飛ばされてしまう。【主人公】に襲い掛かろうとする【暴走獣】を武器で殴打し引き離そうとする隊員達だったが、そちらに目もくれず、【主人公】ばかりを狙う【暴走獣】。なんで僕ばっかり?と逃げる【主人公】はふと村で【暴走獣・犬】と“遊んだ”事を思い出す。
それなら!とバイクを出現させ、【暴走獣】の周りをぐるぐるうねうね徐々にスピードを上げバイクで走り回る【主人公】。
【主人公】を目で追おうとした【暴走獣】は目を回しふらつく。今だと再度網を出して【暴走獣】の抑え込みに挑む隊員達。そして「俺の出番だ!」とジャンプして【暴走獣】の体に飛びついた【兄E】は、【暴走獣】の体に針を突き立てていく。しばらくして、【暴走獣】はフラフラと地面に倒れる。
ふうと一息ついて【主人公】【兄E】隊員達は、「やるじゃん」「ありがとう」と、互いに肩を叩いたりハイタッチをしたり。
その頃、別の場所で、一匹の衝動物が目を青く光らせている。その上空に小さな切れ目が生じ、そこから四角く赤いチップのような物が飛来。チップは青い目の小動物の体に刺さり、吸い込まれるように消える。
(次回へ)

◇第19話:進展
(回想)
鍛錬場。【暴走獣】捕獲用の新しい装備が出来上がり、【主人公】他【衛兵隊】隊員達は試し打ちなどに取り組んでる。装備の扱い方説明のため来ていた背の高い研究員が、【主人公】に話しかける。
「君の装甲、元々炎なんかを操れるようになってましたよね?ああいう感じで、今回作った装備機能を、外付けじゃなく装甲そのものに組み込めないかと考えていて。ただ『変身』に当たって想像すべき像が複雑になるので、
新たに石に記憶しなおした方がいいんじゃないかと。それで、実際使うのは君ですから、形状や、あとは『変身』に代わる文言ですね、記憶させるにあたって同じ言葉はややこしいですから、色々どうしたいか意見を聞きたくて」また研究室にも呼ぶので考えておいてくださいと言い、去る研究員。それを見ながら【主人公】「僕が考えていいんだ、『変身』した姿…」
(OP)
出現した【暴走獣】相手に、新装備を駆使し捕獲を成功させる【主人公】【兄E】と隊員達。鍛錬場に戻りながら【主人公】と【兄E】が話す。「そういえば、今日は【2号】見てないけど、【海の長】様のところ?」
「いや、朝一でなんでも強盗が出たらしくて、そっちの対処に回ってるっす」「え、強盗⁉怖いな…。僕そんなの遭遇しても対処出来ないよ」
「あんなバケモン相手にしてきて今更怖いんすか?変身すりゃあいいじゃないすか」「まだ怖いのは怖いし、なんとかしなきゃとか怪物相手だからで変身してたんだよ。そっか、【衛兵隊】にこのままいるなら、怖い人間の相手もするんだ。どうしよう、僕へなちょこだよ?」
「大丈夫っすよ。人相手でも何とかなるよう訓練すりゃいいんすから。むしろ、変身出来るからってそこを忘れてたのは俺も隊長もまずかったっすね。よっし!じゃあこれから特訓ってことで」「よろしくお願いします、先輩!」「先輩…いい響きっすねー。普段も呼ばれてぇなー。」
一方、時間は戻って、強盗が出たという工場内の事務所にいた【2号】。工場の管理者が襲われた時のままだというその部屋には、倒れ転がった机や椅子、壁には大きくひっかいたような跡、そして床には「石」が埋め込まれた
腕輪がいくつか転がっていた。
(CM)
鍛錬場にて、【兄E】や隊員数人と、筋トレや、生身での戦い方武器の扱い方を教わるなど特訓に励む【主人公】。そこに戻ってきた【2号】。バテて転がっている【主人公】の姿を一瞥して、その場にいた【主人公】含めた隊員全員を集め強盗事件の報告を始める。
「発生は早朝。工場の管理者が出勤し、始業準備をしていたところで何者かに襲われ一時気を失い、気が付いた時にはその何者かが「石」の腕輪を数点持って逃げるところだったそうだ。」
石の盗難という点にざわつく隊員達。続ける【2号】「皆も知っているだろうが、工場では火を使った加工に石の力を利用している。勿論扱うのは免状を持ったものだが、管理は工場で行っており、朝腕輪を担当者に支給・仕事の終わる頃に回収し保管していた。今回は朝、管理者が保管場所から腕輪を出したところで襲われている。」
「盗人の特徴は分かってるんですか?管理者は姿を見たんですよね?」と隊員の一人。返す【2号】「問題はその盗人だ。管理者の見た“何者か”は、背は扉の高さほど、二本の足で立ってこそいたが、全身毛むくじゃらで獣のような唸り声を上げ、その目は青く光っていたらしい」またもざわつく隊員達。
「仮装の好きな盗人、というよりは、特徴から、【暴走獣】が何らかの理由で変質したものと俺は考えている。」仮にそうなら、今後そちらの対処も必要になる。現状は盗品の捜索優先、具体的な話は2度目が起こってからだが、今までと状況が変わった可能性は高く、いっそう気を引き締めて任に当たれ、と【2号】。一同返事の後解散。一部は早速犯人と指輪の捜索に当たり、【2号】もその場を去る。
夕方、【主人公】と【兄E】は研究室に向かいながら話す「せっかく捕獲の方がうまくいったのに、また違う問題かぁ」「石が盗まれたのは心配っすけど、ちょうど特訓はじめたとこですし、ドンと来い毛むくじゃらのつもりで
いましょうよ」「すごいな、何でそんな元気でいられるの?」「家を出る時にかーちゃんに言われたんすよ。死ぬか罪人になるかでなけりゃ好きにしろ、元気に生きてくれりゃそれでいいって。なら元気がモットーだって
言ってたらこうして【衛兵隊】にも拾ってもらえたし。かーちゃん様様っすね。」
話しているうちに研究室に到着した【主人公】と【兄E】。珍しがって部屋の中を見る【兄E】の視線の先には、【暴走獣】として回収され、石の摘出も済んだ動物達がケージの中で眠ったり動き回る姿もあった。
来た来たと背の高い研究員が机前に【主人公】を案内する。椅子に座り研究員から筆記具を渡された【主人公】。研究員に「少しはまとまりました?君の希望」と聞かれはいと答える【主人公】。
好きに、それから強く!と、【主人公】は筆を走らせていく。
(次回へ)

◇第20話:みてみて僕の変身
(回想)
研究室に【主人公】と【兄E】と研究員達。机にはとてもうまいとは言えない装備装甲に関する絵やまとまりのない文字が沢山書かれた紙。
また、それを何度か書き直したと思われるデザイン画が数枚、皆が集まる机横に掲示されている。「麻酔の容器と、新たな装甲素材はどうしても外付けになるから」など、あーでもないこれはどうだとさらに書き込んでいく【主人公】と研究員達。
それを見て羨ましそうに【兄E】「俺もあれぐらい装備盛ってみたいっす。」返す老齢研究員「隊長ぐらいの石の量と意思がないと、複雑な兵装は
厳しいでしょうなぁ。彼(主人公)はたまたま使われている石の量が多いのでしょう。それに、不変の単純さ、というのもいいものですぞ?」
(OP)
謁見の間に【海の長】と【2号】。先日の事件の、まだ例の“毛むくじゃら”と盗まれた腕輪は見つかっていないという報告をする【2号】。「石はこの国の宝。せめて外に持ち出されていなければいいのだけど」と【海の長】。はい、と【2号】。
続けて【海の長】「外というと、別世界から来たという【主人公】、いえ、彼に石を埋め込んだ者は、どう石を手に入れたのかしら?ともかく、使っているのが彼のような人なのは救いね。」
「少なくとも、悪行に走ろうという気は微塵も感じられません」と【2号】。「そうね、それどころか、積極的に装備開発に乗り出してみたり。そう日も経ってないのに皆ともすっかり馴染んでると聞いてるし、なんだかすごいわね、彼。」返す【2号】「積極性から時に独断に走るのは問題ですが。」それ以外は認めてる?と尋ねる【海の長】に無言の【2号】。
軽く微笑んで【海の長】「そうだ、今度学校の視察に行くのだけど、貴方当分の予定は?」「先ほどの件が片付かなければなんとも。」「そうだったわね、ごめんなさい。じゃあ護衛は別の人に頼むわ。」
日が変わって再び研究室。変身解除した【主人公】。おぉー、いい感じじゃない?と研究員達と【兄E】。女性研究員が【主人公】に尋ねる。
「あとは繰り返して石に確実に覚えてもらえばいいけど…。文言、それでいいの?間延びしない?」笑いながら返す【主人公】「他にこれっていうのが浮かばなくって。でも、ちょっと決まらないぐらいで今の僕にはちょうどいいから」
(CM)
後日、“毛むくじゃら”の目撃情報が入る。指示を聞くのもそこそこに「僕行きます!」と現場行きを志願する【主人公】に怪訝な顔の【2号】だったが、とりあえず他隊員数名と共に出動する。
目撃現場の公衆浴場前に到着。石の付いた腕輪をした職員が、休憩で外に出ていたところに遭遇したらしい。職員の叫び声で驚き、また近くにいた衛兵隊が駆け付けたため逃げた毛むくじゃらだが、最初に腕輪の付いた方の手を狙っており、やはり石が狙いなのではと【主人公】と【2号】達。なら向こうから寄ってくる可能性もあると周囲を探していると、【主人公】【2号】の前に毛むくじゃら(以下【人化獣】)が現れ襲ってくる。
変身して応戦する【2号】の後ろで、ベルトに付けたポーチから二つ腕輪を取り出しはめる【主人公】。一つは白く堅そうな素材でやや幅が広く、カラフルな液体の入ったアンプルのようなものが数本固定されている。もう一方は、紺や青の紐で編まれた細身のもの。「何をやってる、早くしろ!」と叫ぶ【2号】に謝りながら、よし、と気合を入れて叫ぶ【主人公】
「超、変身!」
その声と共に現れた装甲は、以前の全身黒いのものでなく、黒のボディスーツの上に銀よりもう一段白っぽい装甲。その所々に、先ほどの腕輪に見られた色で模様が入っている。細かい装飾やシルエットはなんとなく【2号】の姿を思わせ、首から背中にかけて青いマント、手にクロスボウのような小型の弓が付いている。
【2号】に「ちょっと見てて!」と言って【人化獣】向けて駆け出した【主人公】、弓の付いていない方の手からワイヤーを射出し、【人化獣】の上半身・二の腕あたりの高さを縛り上げる。
やった!と続けて手に固定された弓から矢を打ち込むが、肘から先の腕を振り回す【人化獣】に弾かれてしまう。慌てる【主人公】に「だから独断でやるなと!」と苛立ちながらも【人化獣】に蹴りを入れ倒し、のしかかるように抑える【2号】。【主人公】に「もう一度やれ!」と【2号】。再び弓を引き絞り、【人化獣】に的中させ、鎮静化に成功する【主人公】。
到着した他隊員達が【人化獣】を拘束し運ぶ横で、【2号】と、彼に正座させられている【主人公】(まだ変身を解いてない)が話す。
「独断行動の失敗」「ごめんなさい」「最近研究部に呼ばれていたのはそれか」「そう!これ僕と皆で考えて」「その姿は何だ。マントといい…」「あ、これは。どんな形にしたいか聞かれた時に、好きで前の姿になったわけじゃないから全然違う形にしたくて。あと強そうにしたい!って思ったんだけど」「なんだ」
「考えてみて結局、なんか癪なんだけど、強いのイメージが【2号】の姿しかうかばなくってつい。あ、白と青はこの国の景色がきれいだなとか、暑いから真っ黒は嫌だとか」
【主人公】が話すのを聞きながら軽くふんと息を吐いた【2号】。「独断行動の失敗、腕立て腹筋〇回、余計な二言三言で寮の雑巾がけ。以上だ」と言って去る【2号】。また?と正座を崩し変身も解いてへたりこむ【主人公】。
しかし新たな「変身」の成功に、【主人公】は笑顔を隠せないでいる。
(次回へ)

◇第21話:僕は一人前?
(回想)
「え、今日いないんですか?」朝、【兄E】から、今日自分は見回りだが、そっちは別件を頼むと聞いているので、詰所で確認してくれと聞いていた【主人公】。てっきり今日は【2号】と一緒だと思っていたが、不在らしく、しばらく鍛錬所にも来ないという。【主人公】と話していた隊員が【主人公】の肩を軽く小突いて言う「ここ来てからずっと隊長か【兄E】と一緒だったろ?いないって事は、そろそろ認めてもらったって事じゃないか?」え?とわずかに笑みが出る【主人公】に続けて隊員。
「で、今日の仕事だけど、なんとご指名で、【海の長】様の護衛だそうだ。ま、自分ともう一人付いて行くけど、やっぱり、なぁ?」今度は隊員に肩を軽く叩かれた【主人公】は、「はい、頑張ります!」と答える。
(OP)
木の上に、青い目を光らせた鳥。そこに“赤いチップ”が飛んできて、鳥の体に刺さり吸い込まれるように消える。
同じ頃、【海の長】の護衛を任された【主人公】他隊員達は、街の仕立て屋を訪れていた。「学校訪問って聞いてたんですけど」と【主人公】。「それは午後の約束だから。外に出るなら、ついでにこっちもと思って。」と言いながら【海の長】は、店主の出してきた様々な色形の布製ブローチと、それに対応すると思われるドレスのデザイン画を選んでいる。
「貴方達も見てくれない?」と、羽織っていた大きめのショールを取り、肩紐や飾りがない膝丈ドレス姿になった【海の長】は、白基調のブローチを、自身のペンダントの青い石にかざす。あっと言う間に、細かな刺繍が施され足元まで届く丈の全円ドレスに身を包んだ【海の長】に、おぉー、素敵ですと【主人公】と隊員達。次々にブローチによる着替えを楽しむ【海の長】は【主人公】にどれがいいか尋ねる。
髪の色に合わせて青?と返す【主人公】。「そう?こっちの太陽の色も素敵なんだけど」と【海の長】。まずかったかな?という顔の【主人公】の横で、【海の長】は結局「全部いただくわ」と店主を喜ばせる。
(CM)
軽い昼食を挟み、仕立て屋で買ったブローチ、中でもかなりシンプルな水色のものを選んで、ストンとしたラインのロングドレスに着替えた【海の長】は、【主人公】達と学校へ。
そこで久しぶりに【少年A】【少女B】と合う【主人公】。最近、【海辺の国】と【内陸国】の文字を教えてもらっているらしく、「これでとーちゃんの仕事手伝える!」と張り切る少年達。二人や他の子ども達と別れると、次は近くにある孤児院へ向かう一行。
年長の子は学校に行っているようで、幼い子ばかりが出迎えたり影からこちらを見てたり。彼らに笑顔で手を振ったり声をかけたりする【海の長】に、院長があいさつに来る。お礼や子供達の様子を語った後、「ところで今日は隊長は?」と尋ねる院長。隊員が今立て込んでいてと返すと、「落ち着いたらまた、と伝えていただけますか?あの子が来ると皆喜ぶので」と院長。
帰り道、【海の長】が語る。「先代、私の父は、私みたいにあちこち顔を出す人じゃなかったけれど、ここには定期的に来ていたんですって。この青が、皆に神々の加護を信じさせてくれるからって。皆はきっと幸せに―⁉」
【海の長】の言葉を遮るように飛来する【人化獣・羽根つき】。
「超、変身!」『兵装!』と臨戦態勢の【主人公】と隊員達。飛び上がり【海の長】めがけて突っ込んでくる【人化獣】。危ない!と盾を実体化させる隊員達。
【主人公】も同じく【海の長】の前に飛び出そうとしたその時、ぎゅっと目をつむり両手を胸元に押し付けた【海の長】の指輪とペンダントの石が光り、【海の長】の全身を甲冑が包む。
一旦【人化獣】の攻撃を防いだ3人がえぇっ⁈どうしたんですそれ?と驚くと、「あぁ、これは【2号】がもしものためにって…」と【海の長】は答えるが、その間にもこちらに向き直り、今度は【主人公】を狙おうとする【人化獣】。隊員一人は【海の長】のそばに付き、【主人公】ともう一人が捕獲用ワイヤーを操り、何とか【主人公】のワイヤーが【人化獣】に絡まるが、【人化獣】がそのまま飛び上がったため、空に吊られる形になってしまった【主人公】。
「僕ごとさらう気?でも、捕まえたら、そっちだって、逃げられないでしょ!」とワイヤーを少しずつ巻き取り【人化獣】に近づいた【主人公】はワイヤーと反対の手の弓を【人化獣】に打ち気絶させる。【人化獣】共々落下する【主人公】。風を起こそうとするが落下を止められるほどの効果はなく、落ちていく【主人公】。地上の隊員達と、【海の長】慌てるも、【海の長】のショールを大きくして受け止めようとする。それに気づいた【主人公】、「これかーー⁈」と自身もマントを大きくしパラシュートのように広げて何とか減速。【主人公】は、【人化獣】と共に地上の隊員達に回収され、ぐったり安堵する。
夜。道端の猫をなでる少年。なでる反対の手には赤いチップ。そのチップを青く目を光らせた猫の体に押し入れる少年。月明りが道や壁の白に反射し、にやりと笑う少年の青い髪を照らす。
(次回へ)

◇第22話:まだまだ
(回想)
夜、研究室を訪れている【2号】に報告する女性研究員。先日捕獲した【人化獣】は、時間が経過すると【暴走獣】と同じく元に戻り、体内から石も検出されたという。【暴走獣】が変質したのは間違いないが、変質の理由は分からない。違いと言えば、取り出した石に赤黒い何かが付着していた事ぐらい。
そうかと返し、「先日頼んでいたもの」について確認する【2号】。準備はばっちりですよと物を持ってこようとする研究員。そこに、【人化獣】出現の報を持って、【2号】を探しに来た【衛兵隊】隊員が入ってくる。水道部が襲われ、職員や見回りに当たっていた隊員の、やはり石付腕輪を奪っていったという。険しい顔の【2号】は、研究員に向かって「実用化を急ぎたい。また来る」と告げ隊員と共に部屋を出る。
(OP)
【衛兵隊】全体に、石の強奪発生の話が伝わる。襲われた職員や隊員達の中には大怪我をしたものもいるらしく、さらに今回は奪われた石の量も多い。【人化獣】を捕えても、言葉が話せる訳でなし、最初に奪われた石の所在も分からないままで、陽気な者が多い【衛兵隊】にも、やや暗い空気が漂いはじめる。そんな中、今日も朝の報告を終えた後、【2号】の姿は見えない。
鍛錬場にて「こんな時に何してるんだろう」と言う【主人公】に、先日護衛で一緒だった隊員が「【海の長】様のドレスでも作ってるんじゃないか?」とふざけてくるりとターン。別の隊員が「あーもうすぐ祭りも近いしな」と大真面目に言うと「違う違う、あの甲冑の事だよ!」と先ほどの隊員。
そこへ「これの事?」と神出鬼没の【海の長】は手の指輪を見せる。いつの間にとか今は危ないですよなどと慌てる【主人公】と隊員達をよそに【海の長】「これをくれた時に、【2号】に『戦い方も教えてね?』って言ったのに流されてしまって。いないなら、代わりに誰か教えてくれないかしら?」
それならと立候補しかけたある隊員をどついて他の面々は「怪我でもさせたら一大事」「それこそ隊長に殺される」「隊長に殺されても死ななさそうな奴が」と話し自然と皆の視線が【主人公】に。
僕?無理無理と【主人公】が慌てていると、腕輪を奪った【人化獣】が見つかったと連絡が入る。すみません、また!と飛び出していく【主人公】と隊員数名。もう、と意味もなく甲冑を纏って【海の長】はそれを見送る。
(CM)
【人化獣・猫】を発見した【主人公】と隊員達。【人化獣・猫】は動きが素早いうえに、ワイヤーや網、直で捕まえようとしてもにゅるんと体をくねらせて器用にすり抜けられてしまう。【主人公】の麻酔弓もなかなか当たらず困る一同の後方から「どけ!」と【2号】が走ってくる。
走りながら「変身!」と、【主人公】と同様アンプルのようなものが付いた腕輪を自身のベルトにかざす【2号】。纏った姿は、今までの甲冑をいぶしたような黒っぽいもので、甲冑の下は【主人公】と同様の黒いボディースーツ。踵・肘・膝にそれぞれ大きな棘か刃のような突起と、足先手先に大きな爪が付いている。
変身したことで加速し、走ってきた勢いで【人化獣】の喉元を薙ぐように腕を打ち付ける【2号】。地面にぶつかりつつも逃げようとする【人化獣】に飛び掛かるようにして膝から蹴りつける【2号】。倒れた【人化獣】にのしかかり、【2号】はアンプルの付いた右手の爪を深々と【人化獣】に突き刺す。
【人化獣】が動かなくなったのを確認し立ち上がる【2号】。ギリギリ息はありそうだが、明らかに深手の【人化獣】に、以前のモヤモヤが蘇る【主人公】。
何か言いたそうに見つめてくる【主人公】に【2号】は言う。「石を奪う、そのためにこちらを傷つけようとする意思は明白だ。そんな輩に情けをかけている暇は無い」
苦い顔の【主人公】に「それが嫌なら、俺より先に対処出来るようになることだ」と返す【2号】。
去ろうとする【2号】に、思いついたとばかりに食いかかる【主人公】「そういえばさっき『変身』って言ってなかった?それにそのスーツちょっと僕のに似てない?」早口で返す【2号】「新しく文言がいると言われた。考える時間が惜しかった。有用な物はなるベく使う。俺は黒くした似てない。」
「真似されて嫌な顔してたくせn」片手でガッと【主人公】の両頬を掴むと、いつになく目元と頬を引きつらせて「口じゃなく頭と体を動かせ」と【主人公】を床に叩きつけん勢いで顔を掴んでいた手を振り放す。俯いた姿勢のまま立つ【主人公】「どうしたら…いや強くなるしかないのか」とため息をつく。

◇第23話:父と息子
(回想)
「ここまで入るのは初めてだな」と、そわそわしながら【海辺の国】の街角に立つ【父Ⅾ】。そこに、【少年A】【少女B】が駆けてくる。久しぶりだ元気かとお互いに話す【父Ⅾ】と少年達の元に、遅れて歩いてくる【兄E】。「おう」「久しぶり」とぎこちなく再開の挨拶をする【父Ⅾ】と【兄E】。
場面変わって街の見回りに出ている【主人公】と【兄E】。「え、【父Ⅾ】さん来てるんだ。そっか、改めてお礼言いに行こうかな」「明日まではいるらしいんで、行ったらいいっすよ。街外れの宿か、ちび達のとこにいるはずなんで」「【兄E】も行こうよ。ずっと会ってなかったんだし」
「いや、会ってもろくに喋れなかったしいいっすよ。いやぁ、親父から手紙もらった時はいける!と思ったんすけど」「やっぱり、何年も会ってないと難しいんだ」「大口叩いて出てきちまったんで、まぁ」会った方が…という言葉をその場は飲み込んで、夕方には会いに行けるかな、と考える【主人公】。
(OP)
「え、僕今日夜番なんですか?」「うん、隊長が【兄E】と代われって」昼間の見回りから戻って【衛兵隊】隊員からそう告げられた【主人公】は、へぇーっと、やや離れたところにいる【2号】を見てにやにやする。続けて隊員「なんか昨日から親父が来る来るって皆に言ってたらしくてさ、うるさいからとっとと話して来いって尻叩かれてたよ、あぁちなみに、夜は隊長と、今まで【人化獣】に襲われたところを重点的によろしく」
夜、見回り中、【2号】に話しかける【主人公】。「【兄E】に『話して来い』なんて、いいとこあるじゃん」「以前、息子はどうかと尋ねられたので、奴は素直で真面目で腕も立って非常に隊の役に立っていると答えたら一晩昔話に付き合わされた。あれだけ子の話が出来るなら嫌ってはいないのだろう。【兄E】も似たようなものだ」
そんな事もあったなと思いながら、【主人公】はつい「【2号】もそんなに人を褒める事あるんだ」とつぶやき【2号】に思い切り睨まれる。
その時、どこかから悲鳴交じりの人の騒ぐ声がする。
(CM)
声の方に向かった【主人公】【2号】は、飯屋のそばで見回りに当たっていた【衛兵隊】隊員二人が【人化獣】と格闘しているのを見つける。すぐに変身しようとする【主人公】と【2号】。
そこに、「どいたどいたぁ!」と野次馬をかき分け【兄E】が飛び込んでくる。襲われている隊員一人から、もう一人が【人化獣】を引きはがそうとしているところに加わり、何とか引きはがしに成功する【兄E】。変身した【2号】がすかさず【人化獣】に蹴りを入れ動きを止める。
襲われた隊員の方にかけ寄っていた【主人公】は【2号】に尋ねる。「【父D】さんのところ行ってたんじゃないの?」ワイヤーを取り出し【人化獣】の拘束作業をしながら【兄E】「ちょうどこの先でちび達も一緒に飯食ってたんす。」こっちはいいから戻れと皆に言われた【兄E】は笑顔で
「あー、親父に『いって来い!』って言われたんで、たぶん大丈夫っす!」と返す。
翌日、今日のうちに【内陸国】に向けて立つという事で、【少年A】【少女B】【父D】が鍛錬場まで挨拶に来る。【2号】や【主人公】と話す【父D】。一方、何故かいない【兄E】を待ちつつ、あれ何これ何と場内を探検し、隊員達に話しかけられたり、「お祭りまで居たかったのになー」「すぐにとーちゃんの助手として来るから!」と賑やかな少年達。
【父D】がまだ早いとかじっとしてろと少年達に向かって叫んでいると、大きな荷物を抱えた【兄E】がやってくる。どうしたのそれと聞く【主人公】に【兄E】「いや、急な話なんすけど俺、しばらく【内陸国】での【暴走獣】調査の任に付くことになりまして。」驚く【主人公】。
「まぁ、ついでに里帰りして来いって話っすね」と、【父D】と話し終え別の隊員達に指示を飛ばしている【2号】を見る。「えー何?【兄E】にばっか優しいの何?ずるくない?」「いやぁ、俺が優秀なばっかりに」と【2号】をちらちら見つつふざける【主人公】と【兄E】に、調子にのるなよ?と【父Ⅾ】。
最後に改めて別れの挨拶をする、一家と【主人公】。一家が【主人公】に背を向けたところで、そうだ、と【少女B】が振り返り【2号】に駆け寄り小さな花を差し出す。「2号くん、絶対また来るから!またね!」と【2号】に花を押し付け【父Ⅾ】の元に戻る【少女B】。
珍しく困った顔の【2号】に、その場にいた隊員全員がほ~お?と視線を向ける。また口から「ずるい!」と出かかった【主人公】はまた【2号】に思い切り睨まれる。
所変わって海辺。フードを深くかぶり、忙しそうにしている漁師達に気付かれぬまま、取れたばかりの魚の入った籠の前に立つ【青い髪の少年】。青く目を光らせる魚をわしづかみ、赤いチップを口から押し込んでいく。
(次回へ)

◇第24話:異邦人
(回想)
本日非番の【主人公】。寮で寝床に転がり、どう過ごそうか考えていると、同じく休みらしい女性研究員と背の高い男性研究員が買い物に誘いに来る。承諾するも【主人公】「でも僕お金持ってないんですよね。」研究員達は驚いて、口々に言う。「そんな訳ないでしょ?」「【衛兵隊】って結構給金いいはずですよ?」
今まで衣食住は隊から支給されていてそれが給金代わりと思っていたし、たまに隊の皆が物をくれたりしていたため、気にしていなかったという【主人公】。「そういうのはちゃんと確認しなきゃ!自分で働いてもらったお金だよ?」と女性研究員にせっつかれ、【衛兵隊】の事務担当に話を聞きにいく3人。
3人が尋ねると、あっと自分の額をおさえて奥の部屋から帳簿と硬貨の詰まった袋を持ってくる事務担当。「ごめんごめん、君が一人立ちするまでこっちで預かっとけって言われてたの忘れてた」。苦笑いの【主人公】に小声で「ここの人たち、こういうところあるので」と耳打ちする、同じく苦笑いの男性研究員。
とりあえず一月分、と硬貨の入った袋をもらい、その重みに感動する【主人公】の脳裏に、“元居た世界での光景”が浮かぶ。誰かからもらったのか、お札を数枚持ってニコニコする幼い【主人公】。そこに、そのお札を一枚残してひょいと取り上げる母親。むくれる【主人公】に「あんたが持ってたら無駄遣いするでしょ?」とからかう姉。「自分で貯められるようにな」と貯金箱を渡す父の姿。
もらった硬貨に視線を戻し、少し寂し気な表情を見せる【主人公】。
(OP)
食べ物を売る店を中心に、商店を見て回る【主人公】と研究員達。見回りで訪れる時よりも、買い物客も並ぶ品数もかなり多く見える。店を回りながら、研究員達が交互に【主人公】に解説する。
「祭りの前に、皆買いだめしてるんだよ。“神々の裁き”があるしこの国は冬もあったかくて食には困らないからさ、普段は『取りすぎはいけない、今いただく物を』の精神で過ごしてるんだけど、祭りの後、秋だけ大雨や嵐がまとまって来るんだ」「なので、漁や農作業が難しくなる秋は食料を貯めておかなくちゃいけなくて。あ、【内陸国】だと寒くなる冬がそうですね」「で、ここのお祭りってのは、神々に豊作豊漁を感謝するのに加えて、『今だけちょっと沢山取るけど、どうか許してください』ってお許しを請う儀式なんだって」
へぇーと店に並ぶものを見ると、確かに干物乾物・瓶詰缶詰が多く並んでいる。途中、小さな人形や布製の小物が並ぶ店で「娘に買っていこうかな」と立ち止まる男性研究員。お子さんいるんですか?と驚く【主人公】に、女性研究員が代わりに話だす。「こいつね、元々【内陸国】からここの技術を盗んでやろうって来たんだけど」割り込む男性研究員。
「盗むじゃなくて学ぶって言ってくださいよ。で、そのつもりだったのがどうにもここが性に合っちゃって」そのままこの国の人と結婚を?と言う【主人公】にそうと返し女性研究員には「そういう自分だって!」と男性研究員。女性研究員が話し出す。「あたしも勉強ってやつがしたくてここに…『密航』してきちゃったんだよね。交易品に紛れて。」
えぇ⁈と驚く【主人公】とほら人の事言えないと男性研究員。続ける女性研究員「あたしの生まれた国は、お金持ちの、男の人しか勉強させてもらえなくって。もっと沢山の事が知りたい、悔しい悔しいって生きてたら偶然この国の、物も学びも何でもある、夢みたいな噂をきいちゃってさ」「すごい行動力ですね」と【主人公】。苦笑いで続ける女性研究員。
「まぁ勢いで飛び出したから、親兄弟ともそれっきり。国で自分がただ行方不明扱いなのか、それとも密航がばれて家族に何か…なんてたまに考えるけど、来ちゃった、自分で選んじゃったからには、ここで目いっぱい生きるしかないかなって。勝手でしょ?」「いえ、僕も似たようなものだし」と気持ちしょんぼりする【主人公】。
それを見てしまったという顔の研究員達。慌てて二人は、実はあっちにも掘り出しものがーと、【主人公】を急き立て、3人は農村部へ向かう。
(CM)
「ね、直に買ったほうが安かったでしょ?」と、いくつかジャムの瓶の入った布袋を見せる女性研究員。研究員二人の手荷物は街で買った物もありかなりの量だが、【主人公】自身の荷物は少なく、二人の荷物持ちを買って出ていた。
「せっかくだし、もっと買わなくていいんですか?」と男性研究員。言われた【主人公】「食料は寮でもらえるし、それに、僕お土産買ってく人もいないし」またもしまったという顔の男性研究員とその肩を軽く叩く女性研究員。
一息おき、やっぱり元の世界に戻りたいか尋ねる女性研究員。【主人公】は答える。「それが、最近よくわかんなくて。時々思い出す家族の姿は優しそうで、怪物に襲われる事はないし、最初は勿論帰りたかったんですけど。でも家族の記憶もおぼろげしか無いし、どうやって来たかも分からないから戻り方も分からない。そうやって毎日ここで過ごして、楽しい事もあるし皆優しいし、もうこのままでもいいのかなって。」
研究員達が返す言葉を探していると、【人化獣・尾っぽ】が【主人公】向かって襲来。飛び掛かられ地面に転がった【主人公】だったが、すぐに研究員達に、逃げて、出来たら隊の人間を呼ぶよう頼み変身する。
分かったと走ってその場を離れた二人を確認し、こちらに距離を取っている【人化獣】に向き合う【主人公】。行くぞと片手に付いた弓を2度射るが、一発はかする程度、もう一発は完全に避けられる。「やっぱ動かれたら無理か」とつぶやく【主人公】に、大きく長いクッションのようなしっぽで殴りかかる【人化獣】。一度はバランスを崩して転ぶが、二度目のしっぽ攻撃を掴んで「逃がさないぞ!」と【主人公】。バタバタ暴れ時に【主人公】のベルトに向かって攻撃しようとする【人化獣】と、暴れる手足を避けたり足で押し返すなどしてもみ合う【主人公】。何とか網を実体化させるも、自分ごと覆ってしまい、【主人公】は【人化獣】とともにバタバタ網を絡ませ転がり回るはめに。そこに【衛兵隊】隊員数名を連れた研究員達が戻る。しっかり押さえてて!と隊員達が【人化獣】に向け麻酔弓を撃ち、【人化獣】はおとなしくなる。
【人化獣】から解放された【主人公】、変身を解き、置きっぱなしになっていた荷物の元に向かう。同じく荷物を取りに来た研究員達。女性研究員は回収される【人化獣】を見てから【主人公】に「一人で頑張ったね」と言う。「あれは皆来てくれたから」と返す【主人公】の頭に手を伸ばし、髪をクシャクシャにしながら「頑張ってた、でしょ?」と女性研究員。横で男性研究員がうんうんとうなずく。引き続き髪をワシャワシャにされる【主人公】はえへへと笑う。
散歩しながら帰ろうと、海辺まで歩いてきた3人。夕暮れが近づき、【主人公】は海を見てふと「二人も、夕焼け見て切なくなります?」と研究員達に聞く。まぁなるかなと二人。「この時間って、お腹すきますからね」と大真面目に答える男性研究員に続き、「じゃあ、給金出たての【主人公】におごってもらいますか」とふざける女性研究員。ひどいなーと研究員達と喋り歩く【主人公】を遠くから【青い髪の少年】が睨む。
「何あれ、ムカつく」と吐き捨てた【青い髪の少年】の元に、水に濡れた状態の【人化獣・魚】がやって来る。手から小粒の「石」をザラザラと落とし、どこかに去る【人化獣】。【青い髪の少年】は、「海から掘り出しったってきいたけど、結構残ってるもんなんだ」と、淡い青の光を放つ石を一かけ摘まみ上げ、夕陽の赤色で照らす。
(次回へ)

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