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負けた!

本来お休みの土曜日の今日、残念ながら仕事でした。

わたしの仕事は保険会社の事務。月末には口座引落をさせていただいているお客様のうち、様々な理由で保険料の引落ができなかったお客様のリストがやってくる。それも毎月○日と曜日が決まっているわけではない。金融機関にありがちなのか、第○営業日後に反映されるため、毎月毎月カレンダーを数えて、右往左往するのだ。今月の反映日は30日。万が一12月はじめに更新日を迎えるお客様の引落がかなわなかった場合、集金に伺う余裕がないため、少しでも早くと、今日出勤となったわけ。

もちろん、集金防止のためにお客様への手紙での引落日・金額・金融機関のご案内もしている。時には電話でも「よろしくお願いします。」とダメ押す。今回もしかり。(お客様によっては「しつこい」とお怒りの言葉をもらう時もあるが。)まだ「しつこい!」と言われる時は、手紙を読んでいると良い方に考えよう。「はいはい。」と面倒臭そうに言われる時や、ダメ押し電話が繋がらない場合の方が多い。やることはやった。賽は投げられた。さあ、上旬の支給集金は回避できたろう!と意気込んで、大雨の中、会社へ向かう。

最近引落ができないお客様が増えた。

例えば。お一人暮らしのご契約者様がいつの間にかいなくなっている。電話も使われていない。残高不足で連絡がつかない場合は、おそらく施設などに入所したのを連絡しないままになっていることが多い。お客様に電話をして、「おかけになった電話は〜」のアナウンスを聞くと、一瞬「負けた。」と思う。すぐさま、頭を抱えた両手を振りほどき、「さあ!次!」と自分に言い聞かせる。次は所在不明を確定する業務が待っている。ほぼほぼいない確定だが、家を訪問する。今固定電話を持たない家庭の増加や携帯電話乗り換えで番号が変わることが珍しくない。「たまたま」電話がなくてもいらっしゃる場合もある。または、諸事情で「連絡してほしくない。」もある。「ご連絡をお待ちしてます。」のお手紙を郵便受けに入れてきても、連絡が来ないパターンが多い。「更新しなきゃあ自動消滅でしょ。」と思っているらしい。(まあ、確かにおっしゃる通りです。)

呼び出し音になっても油断できない。出てくれないのだ。昨今のオレオレ詐欺を警戒し、留守電に切り替わった後に流れる私の声を黙って聞いている。電話は怖い。知らない人の電話には出ない。なかなか電話に出てくれないので思い切って訪問すると、チャイムを鳴らしても出てきてくれない。玄関横の空いている小窓からトイレットペーパーのカラカラ音が聞こえるのに、出てきてはくれない。

「負けた!」と思うケースはまだまだある。ご案内手紙も出し、電話もし、「さあ!大丈夫!」と心の中でガッツポーズをしたその時に、お客様がポロっと。「銀行が遠くてね。」と最後にもらす。不吉な予感。そう、今まではへっちゃらだった銀行への道がだんだんと遠のいてしまったが故の引落できないケース。若いもんにも頼めなくてねえ、銀行さんもきてくれないし。心の中のガッツポーズを静かに片付けざるを得なかったと営業さんが言っていた。未来の自分を見ているようだと。毎年引落月が決まっているのだから、必要経費を入れておけばいい、というかもしれない。わかる、正論。でも年をとってだんだんと体が若い時と違って思うように動かなくなって、ああ、明日行こう、来週買い物ついでに行こう、と思って、つい忘れてしまうこと、あるあるある。

今日お引落ができなかったお客様は15名。そのうち12月1日が更新日のお客様が3名。時間がない。電話をかける。土曜、午前9時台。大雨。新潟冬の寒さ。家にいるだろう。

何度かけても虚しい音だけが聞こえる。「負けたな…。」









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