愛の話・お焚き上げ

「平成最後の夏、恋人いない問題」

というのは私が思っていたわけではなくて、私がこの夏の終わりから愛した人の自己紹介文にあった言葉だ。

平成最後の夏の終わり、告白してくれたのは向こうからだったが、その後私はめちゃくちゃ彼にハマった。友人知人に、私の今の推しが最高ですと幸せ満開にひけらかし、あなたがそういう恋愛行動恋愛感情を持てるようになるなんてと驚かれ、ようやく私も人を愛せるだけの情緒が発達したと悦に入り、その一方で彼からの愛は失われた。原因は目下不明である。

もちろん私も失われていくものに気づいていた。

私への性的関心を示す動作がなくなり、コミュニケーションとしての接触が私からの一方向性になり、デートの誘いをかけるのは常にこちらからで、迎えは日々遅れる時間が長引き、しかし謝る言葉ひとつなく、ついぞ会っている時も目線が交差しなくなった。

しかし私も臭いものには蓋をし、パンドラの匣は決して開かず、自分が傷つかないよう丁寧に理由づけするのが上手であった。

性的行動ゼロ方針に対して、まずは浮気を疑った。出張や友人との旅行が多く、詳細が詳らかにされることもなかったので可能性としては非常に高いと考えた。そういったことをされた経験はないので、未経験なりに考えた結果、現在の居住地内での浮気はないであろうと結果を出した。ならばなぜ致してくれないのか?自分が一番傷つかなくて済む理由があった。ハゲ治療の使用薬剤の副作用による性欲減退ないしは勃起不全ではないかという、男性のプライド原因とするものである。2度お誘いして断られた私の心は折れ、そういう事情として飲み込んだ。

コミュニーケーション接触不足問題は簡単だ。3回目のデートでハグが好きだと言っていたのは私に合わせてくれただけで、私ほど接触を必要としない人なのだろう。私から手を伸ばせば跳ね除けられることはないのだ。はい次。

向こうからのデートの誘いがないことに気づいたのは割と遅かった。私は不定休で、自分の勤務を見て会えそうな時に提案し、断られない限りは会いに通っていた。故に、もしかして私が勤務を提示すれば誘われるのでは?という考えがあった。誘われないことに気づいたのは、私の目の前で、私の日程を確認するでもなく、友人に旅行のお誘いをかけていたからだ。ねぇ、私の優先順位低すぎない?

目線が合わないことに気づいたのは年明けに会いに行った時のことである。単純に悲しくなったので、敢えて私も目線が合わなくても仕方がないようにテレビを見て、くっついた。帰り際、ハグしようとしたらぱっちり目が合い、完全にキスの距離であったがそのようなこともなく、なぜか頭を撫でられ抱っこされたので最近にしては上々の成果だとご満悦帰宅したのであった。なお、帰宅途中に珍しくラインが来たと思ったら彼氏宅で私が1つ不備を犯していたことの指摘であり、ご満悦気分は完全に萎み、遅くに一人帰宅しながら心配もされずミスを指摘される自分をさすがに可哀想だと思った。それでも、彼の生活様式を観測した結果からすればきっと彼にとっては大事なポイントであったのだろうと飲み込んで謝罪を返した。返事も帰宅の無事を問う連絡もなかった。


これはすべて私からみた話であって、それなりにひどい扱いを受けたなと思っているのだが、彼には彼なりの話があるのだろう。

返信されないだろうなと思いつつ問題を提起したら、まさかの返信があり、別れようと言われ、嫌だ問題点を教えろと返し、時間がある時に返答すると言われたのを1日半おとなしく待っているのが現在地点である。奇しくもこの1日半とは、彼が私の目の前で友人と決めていた旅行日程である。いいよ、好きでもない恋人は一瞬・友人は一生だ、と思う自分がいる。果たして時間がある時の返信はいつかくるのだろうか。「私が考えたさいきょうのあなた」ではなく、あなたのことが知りたかった。

平成最後に、人を愛し、愛した人に愛されないことのつらさを知った話でした。南無。

(私の気持ちを、愛と呼んでよかったのでしょうか)



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