唐揚げは全てを精算させるのか

昨夜、こっちに来てから行きつけとなっている激安の24時間営業スーパーへ晩飯を買いに行った。
激安スーパーでは白米だけのおにぎりが1個税込61円で売っていて、まだバイトもしておらず持ち金が少ない自分は、この白米おにぎりを一食で2つだけを食べることで節約とダイエットを兼ねることに。
実家での食事よりも圧倒的ボリュームも減り、味も薄いので比べてしまうと虚しくなり実家が恋しくなるがどう考えてもこの方法で飢えを凌ぐしかないので、どうでも良いどうにもならないプライドは捨ててしばらくこの形でこらえようと思う。

しかし、手作り感がないのが虚しい
おにぎりの無慈悲な冷たさ、機械でプレスされたギュウギュウの米の密着具合そして、いかにも三角形の型にはめて作ったと言わんばかりの均等な三角形具合。
もちろん、このおにぎりに感謝しているが、一年半も親の手料理を食べてからスーパーやコンビニの料理を食べるとおこがましい神経だが「自分のために作ってくれた感」が精神の安定材料の一つになっていたことを感じる。
多方面の客へ向けて作った料理と、1人の息子へ向けて作った料理の違いというか。
自分以外の人間が自分のためにしてくれている。
もちろんそれに甘えてしまって申し訳ないと思うが、精神的に安心安全で圧倒的味方だからこそできる行為というか、そんな感じの聞き心地は気味が悪いが、体調が悪い時の自分にとっては聖域のような安心感に溢れていたのが実家で食べた親の料理。
まあそんなこと言っても、実家にいてスーパーの惣菜を食べていた時にはそんな事を感じずによだれを垂らしながらバクバク食べていたので、実家を離れて湧いてくる寂しさ虚しさがこんな事を感じさせているんだろうと思う。
この生活に慣れてしまえば、そんなこと気にせずまたバクバク食べるのだろう。
今後、一人暮らしを始めたらなるべく料理を作ろうと思う。何の身にならないかもしれないが。
危ない。またマザコンとホームシックが爆発してしまった。

スーパーに入りおにぎり売り場へ向かうとレモネードが110円で売っていた。
レモネードは昔、白いドレスの女という映画を見てレモネードの存在を知った。
フロリダで起きた連続殺人事件の犯人を追う刑事が、昼間に立ち寄るレストランで毎度レモネードを2つ頼んで飲んでいた。
夏の激しい暑さで故障してしまったクーラーの効いていないレストランの中で汗をかきながら飲んでいる氷の多いレモネードがとても美味しそうだった。
そのことを思い出し凍てつく寒さの中、レモネードを買うことに。
買い物カゴにレモネードを1つ入れる。

そしておにぎりのコーナーへついた。
いつも通り白米の塩おにぎりを2つカゴへ入れる。
その後に他になにが置いてあるか気になり、周りを見渡すと恵方巻きが置いてあった。
恵方巻きはそんな太くもなく長くもなくのサイズで350円で販売している。
節分だし、たまにはいいかなとついでに恵方巻きを買おうと手を伸ばす。
だが恵方巻きを手に取る直前で猛烈な罪悪感が湧いてきた。
本当に買っていいのか?目先のことに囚われ過ぎていないか?そもそも本当にこれを食べて影響がかつてあったか?イベントに無理矢理乗ろうとしてないか?今後、金銭的に苦しくなった時にあの時の恵方巻きのせいで…とはならないか?
色んなことが脳裏をよぎり恵方巻きに伸びていた手を引くことにした。
はあ…と罪悪感がすぐに湧く性格に肩を落とし小さく溜息をついた。
今日はいつも通りおにぎり2個でいいか。と思って視線を何気なく他の棚に移す。
するとその棚には唐揚げ6個のパックが平積みされていた。
しばらく唐揚げ食べてないなあ。と思い、別にイベントに浮かれたわけでもないしおにぎりだけを食べ続けるのも栄養が偏るし、久しぶりに食べたくなったから。と言い訳をして唐揚げをカゴに入れて会計に向かった。
会計をすると唐揚げが360円だった。
恵方巻きよりも高い値段だったことに気づかず、食べたい欲に駆られてしまい、値段を確認するのを忘れてしまっていた。
おにぎり2個の122円で店を出るはずがレモネード110円唐揚げ360円の合計592円も使ってしまう羽目になった。
自分の固めた意思が軽々しく目の前の欲に飲まれていく。
意思の弱い人間だ。
これが自分が働いていて金銭的に余裕がある人間ならばこんなことでは落ち込まないが、あくまでも自分は未だ働いていない人間だ。
バイトを早急に見つけないといけない。
バイトが見つかってしまえば、こんなに自分の嫌な部分に目が向くことはなくなるのだろうか。
それとも金で自分の嫌な部分に応急措置として蓋をしているだけなのだろうか。
まあ、それにしても唐揚げはうまかった。

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