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恋ジャズ #25「彼は私のもの~Is you is or is you ain't my baby~」

「オトコってバカだなぁ」って思うの。

だって、ちょっとはにかんで頬を染めて笑ってみせれば、
すぐにコロッと騙されちゃうのよ。
オンナの裏の顔になんて気づきもしないの。ほんと単純。

え、誰も彼も一緒にするな?

あぁ、あなたも夢見がちなタイプ?
だったら、騙されないように気をつけることね。
オンナはそれほど単純じゃないの。
したたかに計算して、しっかり猫をかぶって、
自分の思い通りにオトコを動かす策略家。
ふふっ、オンナは誰でもそんなもんよ。

僕の彼女は違う?
彼女に彼を取られそうで悔しいんだろうって?

ふふっ、いやだ。
まるで嫉妬深いオンナみたいに言わないで。失礼しちゃうわ。
いつものことだもの。
彼が少しくらいよそ見をしたって、私は気にしないわ。
だって、最後は私のところに戻ってくるんだし。
それまで、おとなしく待っているわ。
季節が変わるよりも早く帰ってくるはずだから。

だって、いつも同じなんだもの。
最初は、擦り寄って来られるのが迷惑って感じでそっけないの。
ほら、今みたいに。
でもね、案外チョロいタイプなの。そのうち絆されちゃうのよね。
ほんと、おバカさんなんだから。
ただ、いつも長続きはしないわ。

お前が邪魔するからだろうって?

あら、私はなにもしないわよ。黙って見ているだけ。
でもね、いつだって彼が振られるの。
彼との恋は退屈なんですって。
彼女を喜ばせるサプライズも、プレゼントも、
甘い言葉も何もくれないから、物足りないって、
彼は、遊び飽きたおもちゃみたいに捨てられちゃうのよ。
そのたびに、こう言うの。
「オレにはお前だけだ。お前がいれば他には誰もいらない」ってね。

それから、私をやさしく抱きしめるのよ。
膝の上に乗せたり、頬をすり寄せたり、
しばらく離してくれなくなるから、ちょっとうっとおしいの。
でもね、こんなオトコに寄り添えるのは、きっと私ぐらいだと思うのよね。
仕方ないから、そばに居てあげようかしらって。

物好き?

まあ、それは否定しないわ。
でもね、私は彼と一緒に眠るのが好きなの。
ひとつのベッドで、寄り添うようにして眠るのが一番幸せ。
だから、このポジションは誰にも譲らないし、誰かと共有する気もないわ。

さて、じゃあそろそろ、彼を返してもらおうかしら。
あなたも彼女とお家に帰る時間でしょ?

ちょいちょいと彼のジーンズの裾を引っ張って合図をしてみる。
私に気づくと、彼はにこりと微笑んだ。

「退屈だった? ごめんね。さあ、帰ろうか」

私をそっと抱きしめ、いつものように愛おしげに頭をなでる彼に、
私は甘えるように
「にゃあ」と鳴いて、頬をすり寄せた。

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