恋ジャズ #14「サヨナラは言わない~YOU'VE CHANGED~」
歩道を叩く雨の音が、今夜も私を不安にさせる。
遠ざかっていく足音が聞こえたみたいで、
ドキリと胸が悲鳴を上げた。
私に見せる笑顔の裏で別の誰かを想っていること、知っていた。
さりげない仕草の中にも、何気ないひとことにすら
完璧に秘密を守り通していた人。
けれど、抱きしめるその手の冷たさが、
何よりも正直に離れた心を教えてくれた。
でも、気づいているなんて言わない。
言葉より雄弁な、その冷たい手に抱かれながら
愛されていると、無邪気に信じているふりをする。
止まない雨が心を叩き続けても、濡らし続けても
何も知らない笑顔を装ったままでいる。
サヨナラは言わない。私からは、言わない。
いつか隠しきれずに、あなたからサヨナラがこぼれ落ちるまで。
サヨナラは言わない。今はまだ、言わない。
いつか耐えきれずに、あなたの冷たい手を振りほどく日が来るまで。
サヨナラは、言わない。
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