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苦しくて 我慢したからそうなって もう どうにもなりはしない

故意

苦しくて 我慢したからそうなって もう どうにもなりはしない
続くそれの始まりを知らずに その為 知ろうと出所を探す
ついでに 此処が何処なのかと居所を求める

どんな姿が醜くて 誰の為に容貌を求めるのか
自分の容貌が醜いと知っても 愚かな事よ
己の手が 無造作にその姿を掻き毟っても
剥がれ落ちた痛みは 足下に落ちずに また 姿を作り出すだけ
それでも 誰かの為の容貌になりたいと 無意識にそれを掻き毟る

動作を真似てみても 一つも似てはいないというのに
どれほど続けても無意味だと まだ 解らないから
口を動かしても どうしても また 真似てしまうだろう
言葉の意味も知らないで ただ 自分を責める
それを我慢する容貌も きっと 醜いのだろうと
誰も見ていない隙を見計らって そんな姿を 時折確認したりする
本当に誰も見てはいないのか 本当は誰か見ているのか
いつしか 真似るのを已めた時 そんな事を気にしたのかもしれない

自分を曝け出すのを躊躇っていたら 息が続かなくなっていた
だから 深呼吸して吸い込んだ空気と 吐く息を見分けなければ・・・

ずっと 何を知りたかったのか もう 忘れてしまった
それを知っていれば きっと 何も怖いものなど無いのだろうなぁ・・・

どんな姿をしていても 誰かの為の容貌になりたいと思う筈だから
必死に生きる事を選んで そして 楽に居なくなればいいと期待する
そういう権利を得る為に どれほど続けても無意味だという動作を
口を動かす事を どうしても まだ 真似てしまう 愚かしくも

己の手は 自分の姿に触れて その容貌を締め付け 息を止めさせた
それで楽に居なくなれれば どんなに良かった事か

知りたかった事を 思い出せないから 余計に知りたくなって
だから これからも 必死に生きなければならなくなった
誰かを真似する事に慣れ でも 一つも似る事は無い
怯えている所為で 意識が自分の姿を掻き毟るし
剥がれ落ちたのは 誰かの為に求めた容貌の一部分だった
自分のした事を覚えていれば 少しは誰かの為になったかもしれない
でも ずっと 我慢していたから 苦しかった
言葉の意味を ちゃんと考えるようになってからは
自分を責めるような真似はしていない だから もう
誰かの為の容貌になんて 己の為に なろうとは思わなくなった

たぶん 故意に自分を傷つけたのだろう 故に 愚かなのだろう
何度も作り出した姿を 一つだって無駄にしないように 犠牲にした
見つけ出した最後の一つを 自分の思う最も醜い容貌にする為に
己の手は 無造作にその姿を掻き毟り 又 無意識に真似る
出所は何処なのか 居所は此処でいいのか
今 真似るのを已めようとした自分は そんな事を考えた

(2008.5)

読んでくださる方にとって、いいと思える「詩」が一編でもありますように。