俺の目には映らないモノクロの世界が 誰かの目に映っているのを見た

物欲の果てに


俺の目には映らないモノクロの世界が 誰かの目に映っているのを見た

通り過ぎたそいつの後を追って 知らない街に辿り着く


度々 横切る人の目を見て この街の事を悟った

――誰の目にもモノクロの世界が映っているらしい


見飽きた世界から抜け出すことを望んで生きて

それなのに それができずに年老いてしまった

先を見て たぶん見過ぎて期待した 未来のような今を現実と知って

見開いた目に映ったのは ただ色を置いただけの世界でしかなかった


欲望を鈍く光らせ 手を伸ばす そして触れる肩と振り返る二つの目には

俺の目に映っている世界をもモノクロに変えて 見慣れない姿を映し出していた

――ようやく理想的な世界で生きられそうだ

何もかも見通したようで それでも 先である未来の事を思いながら

再び伸ばす手の先には 手の数と同じで 口の数とは違うそれが見えている


そいつは 今という現実が受け入れられないのだろう

地を這って それはまるで盲目であるかのように赤い血を流しながらも

真っ黒な闇の中で 何かを求め そして見ようとしているのだ

受け入れられない現実を埋めるための 新しい世界を・・・


俺の顔を貪欲な血が汚した


要らない物を血溜りに捨てた


欲の塊をモノクロの世界へと繋げた


――あぁ、やっと・・・


そうして 先ではあるが 何秒後かの未来の事を思いながら目を開けたというのに

見開いた目に映っていたのは ただ赤をぶちまけただけの世界でしかなかった

(2008.6.18)

読んでくださる方にとって、いいと思える「詩」が一編でもありますように。