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幼児の吃音の話(追記):引き伸ばした発話が役にたつ?

*今回の記事は個人の感想です。エビデンス(医学的な証拠)はありません。参考にするのは各自の責任においてでお願いします。

もうひとつの吃音治療プログラム

子どもむけの吃音治療プログラムといえばDCMとリッカムプログラムが有名ですが、もうひとつ、ウェストミードプログラムという吃音治療法がオーストラリアで新しく開発されたそうです。まだまだ実験的な要素のあるプログラムのようですが、それに関する論文を読んだときの話です。

個人で訳して読んだもののため、内容に齟齬があるといけませんので、詳細は省きますが、メソッドとして紹介されているものの中に、①「軟起声」②「引き伸ばした発話」というものがありました。

これを読んだとき思ったのが「これって流暢性形成法では?」ということです。流暢性形成法はざっくり説明しますと、吃音の症状が出にくい話し方を習得していきましょうというもので、軟起声と引き伸ばした発話が主な指導内容になります。

ウェストミードの話を、リッカムプログラムの臨床にあたっているベテランの上司にしたところ、「理屈はわかる気がする」と言っていました。といいますのも、リッカムプログラムでは毎日親子でことば遊びをとりいれたホームトレーニングを行うのですが、そのトレーニングネタとして私たちがよく行っているものに「文字数すごろく」があります。

文字数すごろくとはすごろく遊びの一種なのですが、サイコロでなく絵カードを使って行います。裏向きにしたカードをめくって、出た絵の文字の数だけコマを進めるもので、もともとは音韻認知というトレーニングの一環として臨床の場でよく行われてきました。これを上司も私もリッカムプログラムによく取り入れています。理由はずばり「吃音が出にくいから」。

たとえば「りんご」の絵カードを引いたとします。文字の数だけ進めるので、3マス進むことができるわけですが、このとき1、2、3と数えながら進むのでなく、「りんご」と言いながら進むのがルールです。コマを動かす必要がありますから、大人も子どもも自然に「りーんーご」と引き伸ばして話すことになります。こうするとほとんどのお子さんに吃音が出ないんです。リッカムプログラムでは吃音の出にくいトレーニング内容を行う必要がありますので、このすごろくはまさしく最適です。

なぜ吃音が出ないのか、理由を深く考えたことがなかったのですが、これはコマに合わせて進むことでタイミングがとりやすくなる(吃音はタイミングの障害とも言われます)のと、自然と引き伸ばした話し方になっているからかも、と分析できると思います。(*誤解のないようにお伝えしますが、文字数すごろくを行うことで吃音がなくなるわけではありません)

文字数すごろくの背後に流暢性形成法があったのかも、と思うと、流暢性形成法の意義を改めて考えてみたくなりました。



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