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短編小説

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一花結び

星が降るような美しく静かな夜は、真白のことを思い出す。 貧しく、温かな家族もなく村人から見向きもされないような僕の妻になってくれた真白。 雪のように息を吞むほどの肌の白さと端正さ、そして何よりも細やかで優しく美しい心の持ち主だった僕の妻。 冬の乾いた空気から逃れるように瞳を閉じると、もう会える筈のない彼女の姿が浮かぶようだった。 閉じられた瞼の内側で少し潤いを取り戻した瞳は、そのまま僕の記憶と心の内を水分に変えて、涙になって膨らんでゆく。 真白。 僕は恋しく愛しい