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京都市行財政改革案へのパブリックコメント文例集 ─ 保育園編 ─

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行財政改革1 事業見直しや受益者負担の適正化等より
p.30  国や他都市の水準を上回って実施している施策等の見直し
① 国制度の充実や他都市の状況等を踏まえた制度の見直し
・ 保育園等に対する人件費をはじめとした本市独自の補助金の見直し
これまで民間保育所等の保育水準の充実に大きく貢献してきた,本市独自の
「京都市民間保育園等職員の給与等運用事業補助金」等について,効果検証のための調査を行い,調査結果及び分析を踏まえて,補助金のあり方を検討します。

その上で,この間,国制度において処遇改善の充実が図られてきたことや,
これまでの補助金の効果分析を踏まえ,必要な見直しを行います。

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これまで国の定める基準の 1.33倍の保育士を人員配置でき、給与水準も1.34倍となるよう、市の配慮でお金を出してくださっていたことにまず感謝いたします。

今回の改革案では、京都市の手厚い保育基準を支えてきたプール制補助金と市加配分運営費、1歳児加配対策費等が削減されています。これは人件費として使えるお金が減るということです。いままで保育士1人で園児5人を見ていたものが、1人で園児6人を見るように変わるということです。

子どもをただ見ていればいいだけなら、1人で6人「見る」のもできるかもしれません。

でも私たちは保育士として園児に人として関わりたいです。美味しそうに食べてる子に「おいしいねー!」って声をかけたいし、姿勢が悪くなってる子の姿勢は直してあげたい。スプーンが上手に持てない子には「こうやで」って手をとって教えてあげたいです。小さな人の保育には人手が必要です。

私は、お給料はいまのままでも、ちょっとくらい下がってもいい。お休みがないのもまだ耐えられます。でも、保育の質を下げろと言われたら辛くてやってられません。私たちの仕事のやりがいを奪わないでください。誇りを持って働ける環境を守ってください。(502字)


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京都市加配分の補助金がどうなるのか、この案には明記されていませんが、もし削減方向ならそれには反対です。

大学のまち・京都市には保育士資格の取得できる学校がたくさんありますが、保育士の確保に苦労するのは他地域と変わりません。

他地域と比べると京都市は高待遇とは言え、他業種と比べれば保育士の給与水準は低くて物価の高い京都市内でひとり暮らしをするのは苦しく、また休みが取りにくい職業であることから敬遠され、郷里に帰ってしまったり、資格はありながら他職種に就職してしまう学生さんが多いためです。

長く保育士をしておりますが、最近の若い方は給与は少々安くても我慢できる、でも自分の時間が取れないのは抵抗がある、という方が多いように思います。ある程度人数がいれば、交代して休むことができ、リフレッシュするための自分の時間を作ってあげることができます。

ですが、今でも人手不足でなかなか休めない雇用環境のなか、さらに京都市分の加配が削減されると、それは人員削減に直結し、さらに休めない職場となってしまいます。保育士不足はさらに深刻になるでしょう。削減された人数で行う保育では業務は溜まって連日残業となり、リフレッシュはおろか、自己研鑽に充てる時間もや人らしく暮らす時間も取れなくなってしまうでしょう。それは保育の質の低下につながります。

「お母さんが笑顔でないと子どもは幸せになれないよ!」と私たちは親御さんによくアドバイスしております。同じことは保育士にも言えます。未来ある子どもたちに、疲れ切った顔ではなく、溌剌とした笑顔で接することができるようにしていください。(673字)


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本市独自の補助金の見直しに際して、効果検証のための調査を行うとありますが、その調査法と効果の判定方法・分析方法が不明です。なにをもって効果があったとするのか、それはどのような手法で図ることができると考えておられるのか、そこが明らかになっていない案は、曖昧すぎて後からどうとでも改変できる可能性があり、たたき台にして意見を求める案としては不誠実と考えます。

効果検証のための調査法とその分析方法を最初に示してください。
また、A という結果が出たら A’ の経費削減案、B という結果が出たら B’ の民間企業活用案、のように、手持ちの案の詳細がきっと複数パターンあるはずです。その案をすべてまずはお示しください。

ひとつの既定路線があってそこに向かってなりふり構わず進んでいるわけではない、科学的に仮説を立てて検証した上で進んでいるのだということを示していただきたいと思います。(380字)

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p51.「若い世代に選ばれる千年都市」中の「保育所等待機児童は8年連続ゼロ,学童クラブ事業待機児童は 10 年連続ゼロを達成」の根拠を教えてください。

かつて、上の子と同じ保育園に下の子も入れるものと思っていましたが、入園許可が出たのは上の子の保育園とは自宅を挟んで真逆の方向へ30分ほど、公共交通機関では通いにくく、自転車で通うしかない保育園でした。

さすがに仕事と子育ての両立ができなくなると思い、お断りしましたが「紹介したのに断った = 待機児童ではなくなる」とのことで、その年の新聞には「京都市は保育所待機児童ゼロ!」の文字が踊っていました。兄弟別の保育園を勧められたり、家から到底通えない保育園、子育て方針の合わない園などを勧められて断っているご家庭は少なくないでしょう。

また、学童保育についても、まだひとりで留守番のおぼつかない低学年の子に対して「もうそろそろいいんじゃない?」と肩たたきのように声をかけ、3年生以上の受け入れは実質的にしていない学童もあります。

家庭側からすれば、現実的ではない受入の困難な条件の保育園や学童を勧められ、断ると待機児童ではなくなるという仕組みは理解できません。事実を表に出して、本当に足りないのは何園(何人分)くらいで、それが必要なだけ行き渡るためにはどんな方法があるのかを示してほしいです。(489字)

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行財政改革1 事業見直しや受益者負担の適正化等より
p.30 5 国や他都市の水準を上回って実施している施策等の見直し
① 国制度の充実や他都市の状況等を踏まえた制度の見直し
保育園等に対する人件費をはじめとした本市独自の補助金の見直し

「本市独自の補助金の見直し」が補助金の削減を意味するなら反対です。

4月28日のBBCニュースで、昨年度のロックダウンが子どもの言語スキルに与えた影響の知見が積み重なってきたというニュースがありました。

言語への介入支援の必要な4−5歳児が増えており、これまでの研究で speech つまり話しことばの遅れはその後の学習に長きにわたって影響することが既にわかっているため、イギリス政府は言語への介入支援の必要な4−5歳児のために 1800万ポンド(27億2000万円くらい)の増資を決めた、と。



同様にアメリカでも、3−4歳児の児童教育への支援含め、子育て・教育に1.8兆ドル(約200兆円) の追加経済対策が打たれました。



これは、小学校入学後の学力を伸ばそうと思えば、3−5歳のことばの遅れを生じさせないことがその後の学力に関して費用対効果が大きいからです。

でも、3歳から急に詰め込みでことばの能力が伸びるわけではありません。


0歳から2歳というのは、脳の重さが 約400g から 約800g、つまりほぼ倍に育つ大事な時期です。その時期に大人が赤ちゃんと十分やりとりをしながら丁寧に関わり、手足や皮膚、耳、目をなどの感覚器からいい刺激をいっぱい入れて大脳皮質に働きかけることが重要です。

やりとり遊びを丁寧にしてもらえた子ほど、ことばをしっかり身につけることができます。

ですが、保育士1人で子どもを6人も見るような環境で、子どもに丁寧な関わりをしようと思えば、雑務を全部、子どもが帰った後に回す残業前提の働き方にさらに拍車をかけることとなります。先生が疲れ切ってしまうと保育現場の雰囲気が悪くなるのではと心配です。



子どもをここに預けて働いていて本当にいいのかと迷いが生じるようでは、親は安心して働きに出られません。ここならわが子を託しても大丈夫と思える保育園でなければ、あってもないのと一緒です。



親は、”どんなところでもいいから、働いている間、子どもを預かっていてほしい" と思っているわけではありません。働いている間、信頼できる人の力を借りて、子どもにも楽しく充実した生活をしていてほしいです。



財政難の京都市は、納税してくれる市民が一人でも多い方がいいのではないでしょうか。そう思うなら共働きで子育てをする時に、子どもばかりでなく、慣れない子育てに右往左往している父母も支えてくれる保育園への予算を削らないでください。(998文字)

※ ご参考:
日本の保育士配置基準:0歳児  3人に保育士1人   (   3:1 )
           1−2歳児 6人に保育士1人   (   6:1 )
           3歳児  20人に保育士1人 ( 20:1 )
           4歳児  30人に保育士1人 ( 30:1 )

ブレイディ 本当に信じられませんでした。私たちイギリスの保育士が見られる子どもの数は、0歳児は同じ3人ですが、1歳児は3人、2歳児は4人、3、4歳児は8人ですもん。日本だと保育士1人で3歳児を20人見なければならないってことですよね? でも、あの年齢の子が一番大変でしょう。どうやって子どもを見るんだろう。 

日本の保育はイギリスに学べ!?〔前篇〕
トニー・ブレアの幼児教育改革について ブレイディみかこ×猪熊弘子

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京都市の行財政改革案では、一般財源から 60億円に見直し(=削減)が必要と書かれており、保育士の処遇改善等に使われる保育所への助成・京都市独自の保育士加配費用がその対象として挙げられていると理解しました。

保育園に関連する費用の削減には反対です。
ただでさえ保育士確保に困難を極めている中、京都市独自の処遇改善がなければ、ますます保育士確保が難しくなり、その結果、保護者から入園希望があっても受け入れられないケースが発生し、園は定員割れを起こすとともに待機児童対策にも貢献できない結果となってしまいます。

また、京都市をかつて支えた西陣織は職人芸でした。
職人さんがその至高芸を獲得するのに何年もかかるように、私たちも保育のプロとして立つには1年、2年では足りません。ベテランでなければわからない保育技術の勘所というものがあります。

京都市は市営保育所の民間移管を徐々に進めておられますが、市立保育園の少なさを支えるために公設民営でがんばってきた私立保育連盟加盟の民間私立保育園と、営利目的の民間保育園で大きく違うと感じるのは、営利目的の保育園では人件費の嵩むベテラン保育士を解雇することや子どもの安全確保を蔑ろにすることで経費削減を図ろうとしたことです。

また慣れた保育士を一掃するかのような動きがあれば、子どもたちの心に傷を与えかねません。子どもの心への配慮がないところにも保育を担う専門職としての覚悟があるのか、疑問を感じます。

民間移管がすべて悪いとは思いませんが、「未来の子どもたちのためにここは譲れない」という保育理念をともに作り、そこを守るために、ではどこを削るのか、削れないならどういう策があるのかを一緒に考えさせてください。現場の声を聞かずに、一方的に民間移管策を進めないでください。
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