見出し画像

指導員へのインタビュー(2) 「コロナ前・コロナ後」

虹の子クラブ開設当時から、6年生までの高学年を含めた保育を行い、子どもたちが主役になれる集団づくりのために常に工夫を凝らしてきた、われらが指導員。

保育への熱い思いがあるゆえに、コロナ禍の制限の多い保育への葛藤もまた深いのでは。その葛藤が聞きたくて、指導員にインタビューしました。インタビューは、2021年6月9日、子どもたちが帰ってくる前の虹の子クラブにて、常勤指導員4名に行いました。

─ コロナ禍で制限のある生活に入ってから1年以上経ってしまいました。コロナ前・コロナ後でいろんな変化があったと思いますが、指導員にとって一番葛藤を感じるのはどんなことか、教えてください。

指導員 N
おやつの時に、しゃべるな、と言わなあかんこと。......言いたくない、ほんとに。おいしいもの食べながらおしゃべりするのが楽しい、って、なんも悪いことやないのに。

指導員 K
(大きくうなづきながら) マスクしなさい、何回言ったらわかんの!、っていう時。......言いたくない。

ー 新型コロナで最大のリスクは飲食の場面なので、虹の子でも以前と同じというわけにいかず、これまでとガラッと変わってしまったことのひとつですよね。おやつ場面ではどんな工夫をしているんですか?

指導員 N ・G
長机の端と端にすわって、机ひとつに2人までの人数制限。それから、マスクを外している間、しゃべらない。人数多いので、全員一斉には食べられないので、「おやつの時間」は決めず、時間フリーにしています。好きなタイミングで食べられるのが嬉しい、という感じの子もいますね。

指導員 B
感染対策は指導員 K が最終的に決めることが多いですね。指導員 K の基準が一番厳しいから。

ー そうなんですね!たとえば、一般的に言われていること以外ではどんなことに気をつけていますか?

指導員 K
鼻ほじった子、ズボンに手を入れて股間さわった子には「手、洗ってきて」っていいます。ちゃんと石鹸で洗ってきて、って。

指導員 B
僕は、鼻ほじるくらい見逃してしまいそうですけど、指導員 K はびっくりするくらいよぅ見てて、きちんとチェックしてます(笑)

ー ある学童では2人ペアでしか遊ばせてもらえない、と聞きました。大人数になると騒いでしまうからだそうです。あと、感染した時の濃厚接触者数を減らすために。1日に決められた1人としか遊べないのでなかなか人間関係が作れず、学童に行きたくないとぐずられる、とお母さんが悩んでおられました。

指導員 B
えー、ほんまかなあ?!2人ひと組でしか遊べへんて?ほんまにそんなことするかなあ.....

指導員 G
世の中の学童には、共用のものを使うのがあかん、っていうところはありますよ。レゴとか、みんなが同じものを触るのがあかん、っていうとこ。

─ 虹の子ではなにか、遊びに制限を設けたりしていますか?

指導員 B
んー。コロナでできなくなった遊びは基本、ないですね。

指導員 G
禁止してるものはないですね。

指導員 N
あ!ベロキラーとにらめっこ!

ー 「ベロキラー」ってなんですか?

指導員 K
もともとは「ウインクキラー」っていう遊びだったんですけど。ウインクしたら人を倒せるっていう。でも低学年の子にはウインクが難しいので、ウインクの代わりにベロを出す、っていうルールに変えたんですよね。結構、定番の遊びで Y ちゃん(いま中3)の頃からありました。

ー あ、それでベロが出してもマスクで見えないから!

なな
そうです(笑)。にらめっこも、顔が見えないから。でもできないのはそれくらいかなあ.....

指導員 B
最初の頃はね、遊びひとつ終わったら「手を洗え」って言ってたんですよ。でも、冷静に考えたらね、自分もできてないんです。自分もできひんことを子どもらによう言わんなって思って、もう言うのやめました。

もしそれで感染者が出ても、虹の子は運命共同体やと思って覚悟を決めてやっています

指導員 G
運命共同体、という気持ちは強いですね。
家族の感染は防げない、と言われていますよね。だとしたら学童の感染も防げないです。家族同然なんで。

ー そういう覚悟でやってくれているんですね。ありがとうございます...。
コロナ禍の初期の頃に、子どもがウキウキして帰ってきたんですよ。「密になったらあかんから、明日は御所で「トランシーバーおにご」やるんや!」って。聞くだけで楽しそう!ってこっちまでワクワクしたんですけど、どんな遊びなんですか?

指導員 K
いま「逃走中」っていう名前に変わった遊びですね。
1チーム3人くらいで、7チーム、21人くらいでやるのが楽しい遊びです。木で作った鍵を使って、自分とこの鍵とピタッと合う鍵をもってるペアになるチームを探すんですよ。余った1チームがハンターになります。トランシーバーで連絡を取り合って、場所を大きく広く使って走り回ります。

ー 理解するには、聞くだけよりやってみる方が良さそう(笑)。
密になれない、大声を出したらダメ、というところを逆手に取って、御所に近い地の利を生かして、トランシーバーで遠隔で指示を出し合って臨場感出して遊ぶ、という工夫を、子どもは心から楽しんでいました。あの時期、塞ぎがちだった気持ちに風穴が開いたようで、親としてはすごく救われました。いろんな工夫、ありがとうございます! 

次に、日々の遊びではなく、各種行事について。
虹の子には、発達に応じてというか、学年によって恒例の行事がありますよね。春合宿の時の、3年生が1−2年生を引率して低学年だけで移動する経験。4年生の高学年仲間入りを果たす行事である4年チャレンジ、みたいな。そういう行事ができなくなったことについては、どんな気持ちですか。

指導員 G
公共交通機関を使う機会がなくなりましたね。大阪への遠出とか。
プールも行けてない。

指導員 B
スケートは行ったな。すっごい時期を選んで、今なら人もいいひんのちゃうかって時にマスク必須でってお願いして。汗と息と氷でマスクがべちゃべちゃになって、マスクしてスポーツなんかするもんじゃない、って思いました!(笑)

指導員 G
春合宿で3年生が1−2年生を引率するのを経験したのは、現6年が最後ですね。現5年が、ずっと見てきたことがやれなくなった初めての高学年です。親の希望確認をとって、引率はなしで4年だけで行かせるというのはやりました

今の1−3年が、子どもだけでの移動経験がないんですよ。
3年歩き旅とかね、なんか新しいことを工夫してやっていきたいと思ってます。いろいろ、やれることあると思うんですよね...。

ー 自粛協力による、出所日数の少ない子もいます。大規模化問題の時に、来る日数が少ないと、その子の居場所づくりに心配りが必要で、来なければ楽ということではないんだという話がありました。

また、かつての高学年はプチ指導員のように仕切っていたけれど、塾などで忙しい最近の高学年は自分が楽しむこと優先でなかなか低学年の面倒を見ることができないといった変化がありますよね。うちの子も、高学年だけど自分が楽しむこと最優先なのではないかと心配しています....。コロナ禍で多年齢集団の関係作りの大変さ、は変わってきましたか?

指導員 B
時と、場合と、人によって違いますね。

指導員 G
古き良きリーダータイプのサマデラ(後述)をめざす4年生もいますしね。
いまの中3の頃みたいに、週3日以上来ないとサマデラになれない、とか時間を共にすることに重きをおいた時期もありましたけど、今は滞在時間では考えてないです。長くいても下の子と遊ばない子もいるし。たまにしか来ないけどしっかりいろんな子に声かけて集団遊びにつなげてくれる子もいるし。ほんとに、時と、場合と、人による感じです。

指導員 B
まだまだ人数は多いですが、それでも一番多い頃に比べたら目が届きやすくなって変なトラブルは減ったんちゃうかな。

─ では最後に。指導員が日々の保育で一番大切に思っていることはなんですか。

指導員 G
子どもたちの安全ですね。安心安全に過ごせること。(即答!)

指導員 B
あと、親の就労支援。(これまた即答!)

ー えっ、意外です!!なんかもっとこう、子どもたちの自主性が、とか、遊びを通した子ども集団の形成、とか、そんなのを想像してました!

全員
子どもたちが身も心も安全に過ごすことができること。親が子どもの心配をせずに安心して働き続けられる環境を作ること。

まずはそこがないと始まらないですよね。
そのために自分たちができることをしていきたいなと思っています。


画像1

*虹の子ミニ知識【サマデラ: サマサマDXの略】
虹の子の高学年自治体制を牽引するリーダー集団。
正サマ(セイサマ)、副サマ(フクサマ)がおり、各班に1人ずつ配される。過去に「虹の子は高学年のおかげで成り立っている、私たちは高学年様である」→「様ひとつでは足りない」→「様様」→「まだ足りないのでデラックスをつけよう!」→「様様デラックス」と進化したのち、「サマDX」の略称が定着した。

サマデラ会議では日常生活の問題にいかに対処するかが話し合われる。
例) おやつに目がなく、床に落ちたおやつでもすぐに口に入れてしまう1年生にどう対応したらよいか。一緒になるとすぐ喧嘩する K と N、どうするといいか。凧揚げ大会にエントリーする凧の柄をどんなものにするか、etc.

そして高学年会議でその結果を落とし込む。
高学年会議に際しては議長・副議長(?)・書記をサマデラが持ち回りで務める。「高学年会議で書記を務めた経験が中学でのノート取りで生きた」(現中3生)「学校で班会議をした時、虹の子の高学年会議の方がまともだと思った」(某私立中生)など、その真の姿はベールに包まれているが、なんだかしっかりしてそうである。

かつては選挙制で、ポスターを貼り出すなどの選挙活動・投票用紙に記入しての投票も行われており、「選挙を人気投票と勘違いしてる輩がおる」といった深い発言が低学年の口から出てきたことも。年下女子に選挙で敗れたことで心に傷を受けた6年男子が「もう虹の子に行きたくない...」としばらく通所できなくなった事件(?!)をきっかけに、選挙制は廃止。現在では志願すればなれるようになっている。


私たちの学童:
一般社団法人 共同学童保育所 虹の子クラブ 
2022年に創設40周年を迎える京都市上京区の学童保育施設。
民設で学区のしばりがないため、新町学区、西陣中央学区、御所南学区、乾隆学区のほか、国立大附属、インターナショナルスクールなどさまざまな学校の小学生が集います。

保護者全員が経営者として運営に関わる「共同学童保育」というスタイル。創設時から6年生までの多年齢保育を実施、経験豊かな指導力ある指導員とともに、親も成長できる場としてみんなで協力して運営しています。

モットーは
「子育てに夢とロマンを」
「里芋は子芋と一緒に親芋も育つんだって。里芋のような親子になろう! 」

URL: http://nijinoko.org/
facebook: https://www.facebook.com/nijinokoclub
instagram: https://www.instagram.com/nijinoko_club/


いただいたサポートは、一般社団法人共同学童保育所虹の子クラブへ寄付させていただきます。