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異世界召喚から無事帰還して妻と子供に会いに行ったら知らない男が家にいて自分は離婚されてた男性からの相談。【妄想人生相談7】

【相談】

30代無職。

八年前に異世界に無理やり召喚され、つい一か月前にようやく帰還しました。

私には妻と男の子が一人、八年間その家族のもとに帰る事だけを支えに生きてきたのですが、いざ家に帰ってみると私以外の男が家族と一緒に住んでいました。

自宅から二駅離れた友人の家を訪れ事情を聞いてみると、この八年の間に私は失踪宣告され妻は私と離婚、その後ずっと妻を支えてくれてた男性と結婚したとの事でした。

失踪宣告をする事でどこかで生きてるかも知れない私を炙り出せると思ったらしいのですが、結局何も音沙汰が無く、それが家族の諦めを決定付けたようです。

友人は異世界に帰れないのかと言いますが向こうを出る際にも相当議論が起き、何があっても異世界側に戻れない処置をしており、今私はまさに何もかもを失った状態です。

今は二県隣の友人の家の居候で用立てて貰い花屋でバイトの身ですがこのまま生きていても良いものかすら判りません。

(埼玉県・T)

【回答】

失踪宣告をされた方の相談を受けるのは初めての事なのでとても緊張します。

ともあれまずは生還お祝い致します。八年と言う非常に長い期間心の支えにしてきた家族が知らぬ男性と家庭を作っていた事実を突きつけられた貴方の心境は到底推し量れるものではなく、それに絶望せずにこうして相談を下さる事自体凄い事なのは間違いありません。


恐らく貴方はとても優しい心を持っており、家族の前に現れなかったのは今の状態を滅茶苦茶にしたくなかったからですね。

異世界から帰還する際に議論になったというのも家族のもとに帰りたい常々言っていた貴方がいざ還る段取りとなり、別れを惜しんだ方々が引き留められたからではありませんか。貴方自身は非常に魅力的な人間なのでしょう。

今生き地獄のような思いかもしれませんが、異世界で生き抜いた豪胆さを見込み、ただ一日一日を生きてみませんか。何かしら働いていればお金も溜まり住まいや生活も出来ます、新たな出会いも出来ます。劇的な経験をするばかりが人生ではありません。今後暫くは隠居のような穏やかな生活を送り、傷付いた心身を労わり長く休憩させる事をお勧めします。

【解説】

失踪宣告というのは行方不明者、生死不明の人間を死亡したものとみなし、婚姻の解消や遺産相続などの法律関係を一旦確定させる為の制度。なお適用に必要な年数は七年。相談者の妻は失踪宣言を後、夫が見つかる事を期待して更に一年待ったが結局夫は発見されなかった。

失踪宣告は当該人物を死亡したものとみなすので戸籍の情報諸々も無くなってしまい、野山でサバイバル生活でもしてない限りは現代で生きていくのはなかなか難しい。その上での炙り出しを妻は期待していた。なお、失踪宣告は該当人物が見つかれば取り消され、現存利益などは返還される。

今回の回答で具体的な案を出してないのは正直もうどうしようも無いから。ここまでの絶望のどん底に叩き落された人間に焼け石に水のような希望の言葉をかけるより、とにかく心を休ませる事が良いと判断した。待っていると思っていた家族が別の人間と家庭を作ってたなんて事を知って自死してないだけ凄いと言っても過言ではない。

この男は確かに異世界で仲間と共に世界の危機を救った英雄だが元の世界に家族を残している。だが八年で得られた友情と信頼が彼を引き留めた。もう今更帰っても仕事も無いし家族も待ってるか判らない。ここに残って暮らせよ。それを拒否して起こる悶着。説得の末戻った世界で妻が別の男となんて死ぬ案件ではないか。

もう後はこの男の気力と精神力次第。呆然とした中でもなんとか生活をさせて周囲社会と関係を作らせ、その中で人間として生きる事に慣れさせるしかない。その後の人生を幸福と感じるかなんてこの男とその周囲次第でしかないし、こちらはその可能性を信じてなんとか生きるように促すしかなかった。

お楽しみ頂けたでしょうか。もし貴方の貴重な資産からサポートを頂けるならもっと沢山のオハナシが作れるようになります。