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難聴者はコミュニケーション能力が低いというのは誤りです

みなさん、こんにちは!
岩尾です。

さて、難聴者は、聞こえなくてコミュニケーションが取れないから、簡単な仕事しか任せられないと考えている企業は多いように思います。
かけはしが実際にとったアンケート結果でも、難聴者に任せられる仕事は、軽作業・補助業務が51%を占めていました。
ただ、母数が49なので傾向とは言えませんが、求人を見たり、実際の人の話を聞くと近い現実があるなと感じます。

中には、だから管理職にも登用しないという企業もあります。

聞こえない = コミュニケーションが取れない = 仕事ができない

この方程式は合っているのでしょうか?

何となく正しいように見えてしまうかもしれませんが、
「コミュニケーションが取れない = 仕事ができない」
⇒これは正しいでしょう。

ただ、
「聞こえない = コミュニケーションが取れない」
⇒ここが間違ってるんです。

「聞こえない = 音声コミュニケーションがとれない」
⇒△ですね。

「聞こえない = 音声コミュニケーションが難しい」
⇒これは正解です。

難しいので、何らかのフォローが必要です。
そして、そのフォローがあれば、音声コミュニケーションも概ね取れる場合もあります。
これは聴力や職場の音環境によるでしょう。

じゃあ、音声コミュニケーションじゃない方法なら?

そう、文字のコミュニケーションならどうでしょう?

文字のコミュニケーションなら、何の問題もなく、といいますか、非常に優秀なコミュニケーションを取れる難聴者はかなりいます。

前置きがかなり長くなりましたが(笑)、
今日はこの話をしたいと思います。

実は一昨日、千葉県で講座をやらせてもらいました。
もう、約1年ほど前に打診をもらって、助成金に応募して、3月に採択が決まり、それから準備をして9月に講座をしてきたところですが、この間のやり取りを僕は全て難聴の方とやっていました。
メールでのやりとりですね。

きめ細かい確認。
こちらの質問にも丁寧な回答。
そして素早い反応。

もちろん、文章もしっかり整っています。

メールにおける反応の速さやきめ細かさ、これは、聞こえに関係なくその人の資質でしょう。
なので、もちろん難聴者でもすぼらな人はいるかもしれません。
でも、それは聞こえとは関係ない部分です。

でもちょっと思ったのは、“きめ細かさ”、これは、難聴であるがゆえに突出している部分でもあるかもしれませんね。

なぜなら、聞こえないので、やはりいろいろ細かく考えるのが習慣になっているのではと感じました。

進行表もいただきました。
挨拶に何分・・・と細かく書いてくれています。
当日、いきなり挨拶が10分以上入って押してしまうなんてこともあるので、事前にわかっておくことでいろいろ調整できます。

参加者の属性や目的をまとめたリストもいただきました。
もちろん名前はもらってません。

ここがわかることで、内容をより参加者にマッチしたものにできます。

講師紹介。
この文章を確認・修正お願いしますと連絡を頂きました。
読んでビックリしました!

ここまで紹介を考えてくれる人もなかなかいないというほど、しっかり考えて書いてくれている文章でした。

多くは、HPの自己紹介をコピペするだけです。

でも、この方違いました。
HPの自己紹介だけじゃないです。

この講座の講師をする人をわかってもらうために、他の部分も調べてくれたり、僕とのやりとりの中で知っていることを加えて、紹介文を作ってくれていました。
ここまで紹介文を目的に合わせて作ってくれる方はそうそういません。
有難いです。
(いえ、個人的にはさらっと流してもらって構わないんですけど、そこまで考えてくれたことはすごく嬉しいですよね)

リリース、どこどこと、どこどこに、
チラシはどこどに〇部、どこどこに〇部、・・・・・送ります。
ああ、広く案内してくれてるんだな。
嬉しいですよね。

当日の待ち合わせ。
○○さんという人が、名前を書いたネームプレートを下げていきます。
メガネをかけています。
場所は中央改札口を出たところの正面のみどりの窓口です。

見た目の特徴を細かく教えてくれました。
当日出会ったとき、すぐにわかりました。

いかがですか?
この人は仕事ができない人でしょうか?
コミュニケーションが取れない人でしょうか?

違いますよね?
コミュニケーション力、間違いなく高いですよね?
仕事、できますよね?

聞こえる人で、いくら催促しても返信すべきことを返信してこなかったり、
電話で話して、必要なもの伝えたら、全く的外れなものが届いて、「これ意味ないですよね?」って聞いたら、「そうですね」とか平気で言う奴がいたり、
そんな人が課長になってたり、○○センター長とかになってたりするんですよ。
そんな人より、よっぽど仕事ができますよね。

でも、この方も、相対して、音声コミュニケーションだけになると、やはり聞こえなくて反応しない時はあります。

当たり前です。
聞こえないんですから。

そのときは、呼んで目が合ってから話し始めたり、字で補足して話したり、手話やジェスチャーを交えて話せばいいだけの話なんです。

聞こえないから反応が遅れる。
聞こえないからやってないことがある。
これは、自然現象で、能力とは無関係です。

つまり、聞こえない = コミュニケーション能力が低いというわけではないんです。

音声コミュニケーションの分だけ何らかのフォローをすれば済む話です。
他の部分はそのへんの人よりも断然できる人、多いはずです。

難聴の人は気づかう力が長けている人も多いですからね。

イメージで、聞こえないからコミュニケーションが取れないから、うまく仕事できないだろうと思われることは、容易に想像できます。

でも、それは本当に安易なイメージで、実際は、そうではありません。
しっかりコミュニケーションを取って、仕事ができる人は多くいます。
もちろん全員じゃありませんが。

音声コミュニケーションは難しくても、フォローがあればできるし、文章、文字ならその辺の何とかセンター長より仕事ができる人だっているんです。

だから、企業の方、もっとフラットに、難聴であるその人の本質を見てもらえれば、その人が自社に貢献できる人間かどうか、見えてくることは多いと思います。

聞こえないからコミュニケーションが取れない、だから仕事ができないというのは、安易過ぎるイメージです。

繰り返しになりますが、
文章なら能力を発揮できる人もいますし、
音声コミュニケーションもフォロー次第でコミュニケーションが取れるようになる人もいます。

その辺のコミュニケーションのコンサルもかけはしではやっています。

難聴者に対する見方をちょっと変えてみると、きっと自社を発展させてくれる人材が見えてくるのではないかと思います。
ぜひ、フラットに見てみてください。


広報・河原です。
岩尾が長々と書き綴っておりますが、全くもって同感です。
 
私はこれまで、難聴の方の取材同伴(新聞社)の経験が2度あります。先天性難聴の男性(手帳で言うと2級)でしたが、ご本人、私、そして新聞記者さんとのやりとりで「コミュニケーションがうまくいかなかった」ということはありませんでした。
 
取材というものは非日常なので、誰でも緊張するものです。それ故、取材対象者(または取材依頼先)のご希望に応じて、事前に質問内容をお渡しするケースも多いです。今回は難聴の方ということもあり事前にお渡したところ、回答をテキストで書いて持参してくださった方も!その他、私の方で用意したのものといえば「音声文字変換アプリ」「電子メモパッド」だけ。記者さんには、マスクを外しての取材をお願いしました。その他にやったことと言えば、下記3つくらいです。
 
■取材場所を地図・画像などでしっかり伝える(道に迷われた場合、電話で案内することが難しい場合が多いため。自分が早めに到着するように心がける)
■取材後に追加取材(記事を書く上で確認したいことや新たな質問事項など)が発生した場合は、メールでやりとりする&念のため私をCCに入れてもらう
■取材中の空気づくりなど。写真撮影時に緊張していたので、突然始まる記者さんの質問タイム!「好きな食べ物は何ですか?では河原さんから!」「ビールでーす!(河原)」「それ食べ物ですか?笑(記者さん)」「餃子でーす!(河原)」、みんな爆笑、こんな感じです。あ、これも仕事の一環ですよ笑。
 
取材中はもちろんですが、その後の記者さんとのメールのやり取りも、特段問題ありませんでした。担当記者さんに「実際お会いしてメールでやり取りする中で、コミュニケーションスキルはもちろん、仕事ができる方ということが伝わりますよね。」と話したところ、全く同じことを考えていたと話してくださいました。そして後日、コラムが紙面に掲載されたのです。一部抜粋してご紹介します。

実際に当事者たちと接すると、声を文字に変換する機器やメールで問題なく会話できた。会社での不当な扱いも理路整然と説明する。優秀な人材だと実感した。聞こえづらいからと対話の手間を惜しみ、それを引き出す努力をしないのはもったいない。

この紙面を見て、感動に震えました。正にその通り、です。固定観念に囚われている人ほど、実際に当事者の方と接してもらえれば、と思います。ほんの少しの工夫を添えて。

言葉のかけはしの記事、活動に共感いただきましたら、ぜひ、サポートをお願いします! いただいたサポートは、難聴の啓発活動に使わせていただきます。 難聴の子どもたち、難聴者と企業双方の発展、そして聞こえの共生社会の実現のため、どうぞよろしくお願いします!