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小説「最果ての季節」

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❏掲載誌:『役にたたないものは愛するしかない』 (https://koto-nrzk.booth.pm/items/5197550) ❏楢﨑古都(https://linktr.…
学生時代にとある公募で一次審査だけ通過した小説の再掲。 まさかのデータを紛失してしまい、Kindl…
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019「最果ての季節」一輪の白いガーベラの花のエピソード

 一輪の白いガーベラの花のエピソード。  ちらほらと館内から人がロビーへ出てきていた。映…

楢﨑古都
5か月前
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018「最果ての季節」結局、また自分ばっかりそうやって泣くのね

 四時がわたしを都子さんの養子に入れたのは、この数日後のことだった。考えてみれば、それま…

楢﨑古都
6か月前
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010「最果ての季節」それは決して、滑稽なおままごとではなかった。

 四時と柁夫のいなくなった母屋は、時間が経つとともに平然さを取り戻していった。彼らのいな…

楢﨑古都
8か月前
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009「最果ての季節」飛び込んできた光景に、思わず吐き気がした。

 四時が柁夫を連れて出て行ってしまった朝、わたしと都子さんはその事実にしばらく気がつかな…

楢﨑古都
8か月前
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006「最果ての季節」この世の中は所詮、見せかけにすぎないのかもしれないわ。

 つぼみが花を否定して、実になるの。りんごは地球よ。皮は地表、果肉はマントルで、種がコア…

楢﨑古都
9か月前
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004「最果ての季節」頬にこんぺい糖やあめ玉を含ませてくれた。

 昼間、周りの大人たちが働いているなかで、わたしは半ば放置されながら、彼らの手の空くのを…

楢﨑古都
9か月前
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003「最果ての季節」知ってしまったら消えてしまう、魔法の言葉だった。

 四時は朝から晩まで、来る日も来る日も温泉に浸かっていたかと思えば、ある朝突然出かけていってしまう。そのまま半年以上音沙汰がない、なんてこともしょっちゅうだった。  そんな四時の存在を、柁夫は誰よりも信奉していた。  宇宙はそもそも一本の弦でできていると考えられていたの。ピタゴラスは惑星の運行を幾何学的な観点から、宇宙の調和の原理をみちびいたのよ。空には天球の音楽があって、数学的にも完璧な天体の運行は天球に調和、ハルモニアを生むとされたのね。これって素敵だと思わない?