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2-1.いまさらきけない『文字式の扱い方』

現代の数学をたのしむには、マイナスに慣れること、次に文字の扱いに慣れることです。この考えに立って、『理一の数学事始め』は数学の話を書いています。

この単元の大目標は、文字式の扱い方に慣れることです。数学をする上で欠かせない基本事項です。次の3つが習得できれば十分だと思います。
1.掛け算・割り算の省略に慣れる
2.文字式の計算ができる
3.数学用語「多項式、項、次数、係数、定数項」を身に着ける

次の問題を考えてください。
例1.1個150円のチーズ肉まんを5個と1パック250円のから揚げを2パック買ったときの値段はいくらになりますか。


150×5+250×2を計算すればいいですね。だから、1250円となります。
では次に、
例2.1個150円のチーズ肉まんを〇個と1パック250円のから揚げを△パック買ったときの値段はいくらになりますか。


ここまでくると小学生には難しいと思います。どうしても計算して一つの値が出るという感覚があるからです。でも中には、150×〇+250×△を計算すればいいと答えられる子もいるかもしれません。この子は優秀過ぎます。数学の世界をパラダイスのように感じるのではないでしょうか。

数学では、150×〇+250×△のように考えることが多くなります。結果よりも、考え方が大切だからです。だいたい、中学1年生の夏を過ぎた辺りから、こういう感覚に慣れてくると思います。もちろん、なかなか慣れない子もいますが、それはそれでいいのです。日常生活を通していろいろな経験をしていく中で、この感覚が分かるときが来ます。それがゲームか漫画か料理か買い物か運動か旅行か…は分かりませんが、いずれ訪れると思います。

さて、数学では〇や△の代わりに文字を使います。数学は西洋から輸入され日本で広まったので、ほとんどすべてで横文字が使われます。中学数学では、アルファベットa, b, c, ..., x, y, ... がほとんどで、この外ではギリシャ文字 π(パイ)くらいだと思います。高校数学だとギリシャ文字α,β,γ,…,ωが使われ、大学以上はドイツの飾り文字やロシア文字も使われます。ひらがな、カタカナ、漢字を使うと便利だと思うのですが、私の知るかぎり一般的には使われていないようです。

閑話休題。(※1)
例3.1個 a 円のチーズ肉まんを x 個と1パック b 円のから揚げを y パック買ったときの値段はいくらになりますか。
のように文字が使われます。この例でも分かるように、数の代わりに文字が使われます。ということは、文字のところには何らかの数が入ると考えればいいのです。具体的に分からないから、文字で代用していると思っていればいいのです。

例3の答えは、(a・x+b・y) 円です。掛ける「×」を使うとエックス「x」と区別がし難いので、掛けるを「・」で表現しました。

さて、文字のところが具体的に分かっていたら、どのように計算しますか。計算の順序によれば、掛け算を先にしますね。つまり、a・xとb・yを先に計算します。そこで、次のような約束をします。掛け算を先に計算するのだから、掛け算記号「・」を省略してax+byと書くのです。
ax や by と書かれていたら、a・x,b・yのように掛け算だと思うことにするのです。これは非常に便利な約束であることが後々分かってきます。
これにより例3の答えは、(ax+by) 円と書けます。

掛け算を省略するように、割り算も省略できます。それは既にあなたも知っています。3÷7を計算しなさいと言われたら、0.4285714285714…と答えますか。「7分の3」、記号で3/7という答え方ができますよね。ここでは、ふつうの表現方法(―の下に7、上に3を書くこと)ができないので、3/7と書きます。この表記はふつうに使われますが、日本ではめったに使われないようです。でも理科や日常では使われていますね。m/s, 円/ℓ,円/100gなどです。分数の援用記法です。

このことから、5・x+1÷yは 5x+1/y と表現できます。

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細かな約束事
①文字と数の掛け算は数を前に書いて掛け算を省略する (※2):x・5⇒5x

②1・x や x・1 はふつうxと表記します:1・9も9・1も9だし、1・314も314・1も314ということから、1を省略してもいいことが判ります。
敢えて、1xと表記することはあります。線形代数という数学書の「線形空間」の項を見るとわかります。

③帯分数は混乱の元になるので、使いません。帯分数は仮分数にして使用:

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④アルファベット順で書かれることが多い。だが、絶対ではない:
3xayb ⇒ 3abxy,ab+bc+ac より ab+bc+ca の方が形は良いです。それは、a→b→c→a というように循環しているからです。まあ、感覚的なものです。


最も大切なのは、混乱しないようにすることです。見る人によって解釈が異なる表現や表記は問題があります。高校数学の例になりますが、sinθとxとの積を表現したいときには、xsinθと書き、sinθxとかsinθ・xのような表現はしません。ただし、(sinθ)xのような表現をすることはあります。▢

※1 読者が高校生以上だと思っているので、閑話休題というように、小中学生には少し難しい表現もしています。閑話休題は「カンワ・キュウダイ」と読み、『雑談を止めて、話を本筋に戻すときに使う語』です。

※2 中学・高校の数学では、「×」「・」は交換可能(可換)の場合しか出てきません。以前は、行列(ラーメン屋の行列ではありません)というのを高校で学んだのですが、2021年現在は学ばないので非可換な例が出てきません。辛うじて、非可換な例は関数の合成「∘」「・」くらいでしょうか。
非可換な話はいまさらきけない整数(プラス・マイナス)の掛け算(後)
もしくは、【雑談は数学の肥やし】記号「×」には可換性が仮定されていません。をご覧ください。

(おわりに)
最近、数学を学びたい人にとってお薦めしたい動画を見つけました。
謎の数学者による数学の学び方をご覧になってみてください。数学者にならずとも、とても参考になると思います。
動画をみると、ご自身で話してしまっているので、直ぐに正体は判るのですがそっとしておきましょうね。

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