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1-10.いまさらきけない整数(プラス・マイナス)の掛け算(後)

前編では、「どういうときに『掛け算』を使ったか」を思い出し、それを援用してマイナスの掛け算を考えようという所で話を切りました。ここで訴えかけたかったことは、「掛け算が使えるのはどのような場合か」です。数学を考える上でも、数学を応用する上でも大切なことだと思っているからです。「カモミールティーのティーバッグが12個入りで400円」のときに、「12×400」という計算を考えますか。掛ける意味がありませんね。

(ここから本題)
東西に長い一直線の平坦な道路上を1分毎(ごと)に東へ50m移動できる亀型ロボットがあるとします。今から▢分後にはどの地点にいるかを考えると、マイナスも入れて考えることができます。

約束として、東向きに進むのをプラスとすると西向きに進むのはマイナスとなり、5分後をプラス5分と考えれば8分前はマイナス8分後となりますね。
※このことを踏まえて、いまさらきけない負の整数(マイナスの整数)の話
を書きました。

では次を考えてみてください。
例5.10分後にはどの地点にいますか。
例6.5分前にはどの地点にいましたか。
例7.西向きに移動させたとき、4分後にはどの地点にいますか。
例8.西向きに移動させたとき、3分前にはどの地点にいましたか。

この問題では、50m×▢が基本ということはいいですか。
その説明が例5です:東へ10分移動すればいいのだから、1分で50m、2分後だと1分の2つぶんの移動だから、50m+50m=100m。3分後だと1分の3つぶんの移動だから、50m+50m+50m=50m×3=150m。こう考えて、10分後には50m×10=500mとなります。だから、東に500mの地点にいる。

例6の答え:50m×(-5) を計算することになりますが、1分前だと亀ロボは東を向いたまま50mバックすることなります。だから、5分前だと
50m×5=250mバックしたことになります。なので、西へ250mの地点にいたということになります。これは-250mの地点にいたと考えていいですね。つまり、50m×(-5)=-250mが自然です。

例7の答え:西向きに移動させた4分後だから、亀ロボを西に向かせて4分移動させればいいので (-50m)×4を計算することになります。この場合だと、(-50m)×4=(-50m)+(-50m)+(-50m)+(-50m)=-200m
とするのが自然でしょうか。それとも、50m×4=200mだから、西へ200mの地点とし、-200mとしますか。
どちらで考えても、(-50m)×4=-200m を得ましたね。

例8の答え:西向きに移動させたときの3分前を考えるということは、
亀ロボを西に向かせた状態でバックさせることを想像すればいいですね。
だから、(-50m)×(-3) を計算することになります。でも亀ロボは東の方に向かって3分進んだことになるのだから、50m×3を計算して150m東へ移動したことになります。だから、(-50m)×(-3)=150mを得ました。

50m×10=500m、50m×(-5)=-250m、(-50m)×4=-200m、
(-50m)×(-3)=150m という結果から、次のように考えるのが自然です:

(+)×(-)=(-),(-)×(+)=(-);  (+)×(+)=(+), (-)×(-)=(+)
(プラマイ・マイプラはマイナスで、プラプラ・マイマイはプラス)

これを規則として覚えてください。ある程度納得できるまで、考えてからですよ。暗記するのはかんたんだと思いますが、それなりの理由をもっていないと、(負債)×(負債)=(貯蓄)というような可笑しなことを考えてしまいます。どこが可笑しいのかと言うと、負債と負債を掛ける意味がありませんね。掛け算を考えたときを見直せば、分かってくれると思います。
※本論はここまで


【雑談は数学の肥やし】
数学では、記号「×」は記号「+」と違い、順番を入れ替えていいという約束はありません。「掛ける」というときには、同じ世界のものを掛けることよりも、別な世界のものを掛けることが多いのです(※2)。前回挙げた例(※3)では、例3のみが同じ世界の量を掛けていて、残りは別な世界の量を掛けていますね。このように掛け算には「操作」という感じがあるので、順番を違えたとき同じ結果が得られるかどうかは場合に依ります。想像して下さい:
⓪ご飯を盛ってカレーを掛ける:カレーを掛けてご飯を盛る
①靴下を履いて靴を履く:靴を履いて靴下を履く
②粉薬を飲んで水を飲む:水を飲んで粉薬を飲む
③お尻を拭いてからパンツを履く:パンツを履いてからお尻を拭く
⓪は問題ないと思いますが、①-③は問題ありますよね。▢

解説動画です。(2021/2/3 6:03以降に見られます)

※1 数学の学習方法について書いたものがありますので、こちらも覗いてみてください:理一の数学雑談(ブログ 無料)

※2 森 毅 著『線型代数 生体と意味』(日本評論社)の82頁下から10行目にこういう記述があります:"元来,〈積〉というものは,異質なもの同士がかけ合わしやすいので,…"

※3 前回紹介した例たち:
例1.1人7杯ずつラーメンを食べるとする。4人だと全部で何杯食べることになるか。
例2.ガソリン1ℓで20km走れる自動車があるとする。40ℓのガソリンだと
何km走ることができるか。
例3.直径が3mある大木の切り口の面積は、どれくらいの広さがあるか。ただし、切り口は真円であると仮定する。
例4.税込み2万円もするスニーカーが30%引きで売られていた。いくらで購入することができるか。

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