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31.03 ベクトルの初歩(ベクトルの代数的性質)

ベクトルの計算について1節入れます。もちろん、幾何ベクトルを考えるときにも使われます。


これまでに、ベクトルの演算として "和" と "実数倍" を導入しました。
差も演算じゃないの?と思ったかもしれません。確かに1つの演算ですが、差は逆ベクトルの和として定義したので和に含めて考えます(※1)。


ベクトルの代数的性質

ベクトルの和およびベクトルの実数倍によって、新たなベクトルが生まれました。平面または空間内の2つのベクトルを$${\vec{a}, \: \vec{b}}$$とし、$${k}$$を実数とすると

          $${\vec{a}+\vec{b}, \:\: k\vec{a}}$$  は ベクトル

です。平面で考えていれば平面上のベクトルで、空間で考えていれば空間内のベクトルということです。

ベクトル$${\vec{a}, \: \vec{b}}$$,  実数$${k, \: \ell}$$に関して次の性質が成り立つ:
[1](ベクトルの和)
         ①  $${(\vec{a}+\vec{b})+\vec{c}=\vec{a}+(\vec{b}+\vec{c}),}$$
         ②  $${\vec{a}+\vec{b}=\vec{b}+\vec{a},}$$
         ③  $${\vec{a}+\vec{0}=\vec{a},}$$
         ④  $${\vec{a}+(-\vec{a})=\vec{0}.}$$

[2](ベクトルの実数倍)
         ⑤  $${k(\vec{a}+\vec{b})=k\vec{a}+k\vec{b},}$$
         ⑥  $${(k+\ell)\vec{a}=k\vec{a}+\ell\vec{a},}$$
         ⑦  $${(k\ell)\vec{a}=k(\ell\vec{a}),}$$
         ⑧  $${1\vec{a}=\vec{a}.}$$


これら8つの性質を覚えてくださいとは言いません。
なお、これとほぼ同じ式が大学1年の線形代数学でも出てきます(※2)。

これら8つの性質が成り立って何がうれしいかというと
         1次式のようにベクトルが扱える
ということです。例を2つ挙げます。

  例1 次のように計算ができます:
    (1)  $${3\vec{a}-7\vec{a}+2\vec{a}=(3-7+2)\vec{a}=-2\vec{a}.}$$

    (2)  $${3(\vec{a}+2\vec{b})-5(2\vec{a}-\vec{b})=3\vec{a}+6\vec{b}-10\vec{a}+5\vec{b}}$$
                $${=(3-10)\vec{a}+(6+5)\vec{b}}$$
                $${=-7\vec{a}+11\vec{b}.}$$

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