小鉄旅

栃木の北部から鉄道やバスに乗って見たことや食べたものを書きます。 文章を書く修行中。鉄…

小鉄旅

栃木の北部から鉄道やバスに乗って見たことや食べたものを書きます。 文章を書く修行中。鉄道に乗るのが好き。普段はママチャリ派。

最近の記事

広重美術館でみる広重五十三次の旅

隈研吾の設計による那珂川町馬頭広重美術館という小さな美術館があります。 江戸の浮世絵師、歌川広重の名前を冠しているので、いつでも広重の浮世絵を見ることができると思ってしまいそうですが、いつもは「浮世絵でわかる!忠臣蔵」や「ざ・歌舞伎」といったテーマ展が行われているので、広重をまとめてみる機会はあまり多くありません。 (「広重と行く東海道の旅 弥次さん喜多さんも同行中!?」(2017)以来かもしれません) そんな那珂川町馬頭広重美術館ですが、このゴールデンウィークに「

    • 芸術家を志したマン・レイのオブジェ展

      DIC川村記念美術館「マン・レイのオブジェ 日々是好物―いとしきものたち」展 写真で頭角をあらわし、写真で名を知られたマン・レイが生涯を通して芸術家を志向したことが分かる展覧会でした。 マン・レイの芸術家としてのキャリアは第一次大戦の最中にはじまります。 芸術運動「ダダ」を煽動するトリスタン・ツァラと、《泉》によって「レディ・メイド」という概念をつくったマルシェル・デュシャン。同じ時代に生きた二人の<天才>の存在は、マン・レイの思想に強く影響したのではないでしょうか。

      • 建築家とのめぐりあわせを考えた「馬頭広重美術館」

        建築家、隈研吾が「栃木三部作」と称する建築の一つ「那珂川町馬頭広重美術館」に久しぶりに行ってきました。隈自身も著書『建築家、走る』のなかで「馬頭は栃木県の中でも非常に行きづらい場所」と書いていますが、東北新幹線の宇都宮駅や那須塩原駅からバスがなく、どちらからも車で1時間ほどかかります。 隈は東京世田谷で1991年に完成した作品が批判され、バブル崩壊とともに東京での仕事をなくします。栃木三部作はいずれもこの時期の仕事で、これらによって「材料の本当の面白さに気が付いた」と語っ

        • 憧れの「デパート大食堂」に行ってきた

          いまでは珍しくなったデパート大食堂があると聞き、花巻市のマルカン大食堂に行ってきました。観光スポットにもなっている同店ですが、私が訪れた土曜の11時過ぎにはエレベーターホールに人垣ができ、食堂のある6階に着くと食券を求める人の列が下の階に延びるほど賑わっています。マルカン食堂の何が人を惹きつけるのでしょうか。 休日のお出かけスポットとしてデパートがきらきらと輝いていたころ、子どもたちに大好評だったのがデパート大食堂。しかし、高度成長期になるとファミレスが登場して、家族が食

        広重美術館でみる広重五十三次の旅

          棟方志功が版画を志したきっかけ、川上澄生《初夏の風》

          「わたしは、呆然と見とれました。『ああ、いいなァ、ああ、いいなァ』と心も体も伸びていくような気持になっていました。」* 棟方志功が川上澄生の《初夏の風》を国画創作協会の展覧会で見たときの気持ちを語った言葉です。 ピンクのドレスを着て日傘を持ち、青いボンネットを被った女性。大きくひるがえるスカートの裾、いまにも吹き飛ばされそうな帽子。女性の正面や背後には風を吹きかける者の姿(志功は「風様の鬼」*と表現しました)が少しくすんだ青みの緑で描かれます。地面からは生い茂る夏草のよう

          棟方志功が版画を志したきっかけ、川上澄生《初夏の風》