見出し画像

新古今和歌集の風景 4

 今日は長男の塾のテスト。午後はなぜか妻の提案でボンバーマン祭りでした。4歳の娘も勝てることのあるボンバーマンは偉大です。4時間近くプレイしてたら結局妻に怒られたけど。

かきくらし猶ふるさとの雪のうちに跡こそ見えね春は来にけり

新古今和歌集 4 宮内卿

 「かきくらし」って良い言葉だと思います。「かき」は「くらす(暗す)」につく接頭語。大きな意味は無いですけどこの2文字のおかげでスケールがめちゃくちゃ広がるんですよね。世界全体を包み込んでえいっと暗がりにつきおとす。そんな感じ。

 そんな薄暗がりの中でどかどかと雪が降っています。降る里。古里。平安人から見た古里ですから平城京の方ですね。雪との相性を考えると吉野の里かその辺り。郷愁を誘う古の里に全てを覆うような雪が降る。
 
 もともと寂れた里なんです。だから雪が降ると人の痕跡なんか全部埋まっちゃう。もしかすると微かにあったはずの春の気配も。

 だけどそんな吉野にも春はやってきます。

雪深き岩のかけ道跡たゆる吉野の里も春は来にけり

千載和歌集 3 待賢門院堀河

年暮れし名残の雪や惜しからん跡だにつけで春は来にけり

正治二年院初度百首 304 守覚法親王

 こうした先行例がありますので説明はいらない。ただ春が来るのだと言ってやればそれだけで読み手はそうだなあと説得される。まだまだ力が強い冬のやつに見つからないように追い出されないように、そっと春がやってきていることを思います。
 そしてどかどかと降り辺りを暗くする雪と気配を見せない春との対比を、読み手が各々で楽しむのです。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?