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【新古今集・冬歌7】孤独に嵐

日暮るれば逢ふ人もなし正木散る
峰のあらしの音ばかりして
(新古今集・冬歌・557・源俊頼)

 これはまた寂しい紅葉。

 日没後に逢う人がいない宣言です。山に滞在しています。一人の孤独な夜が来ます。
 それから正木。正木は柾葛まさきかずらという植物の別名です。古今集の

深山には霰降るらし外山なる
まさきの葛色づきにけり
(古今集・神遊びの歌・1077)

以来人気の紅葉歌材です。色づく姿が愛されました。

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 人気も無くなった山里でその正木が散ってしまいます。正木「まで」散ってしまうと言いたいのでしょう。彩り豊かに楽しませてくれる正木。孤独な山里生活に寄り添ってくれる友。その正木の葉が荒々しく吹く風の訪れに散らされていく。

 寂しさはここではもう美学になっているのです。

(訳)
日が暮れると
出会う人などいるものか
色づいた正木までも散っていく
あの峰から吹き下ろす大風のせいだ
ごうごうと音を立てる。私の所に来るのはもうおまえしかいない


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