雨音は甘いオムレツが焼ける音に似ている
ほんの少し齧ってみた 七色の星座でくるんだ 泡のようにあえかな命
夢を見た 珊瑚の星座 鍵のかかったユーレカ 燃え続けるエルダーフラワー 星のかけらを売る旅人
色違いの嘘をわけあいましょう
内出血の深部 後悔の浅瀬 零下の太陽を踏み潰したら 悲鳴は麒麟の眼の中へ
耳の奥にキン、と合図の音。無音の散乱。差し伸べた指先に吸い込まれてゆく六花の死骸が世界を白く染めるまで、あと、どれくらい眠ろうか。
ちらり、ふわり、ひらり、さらさら、しんしんと。踊り、舞い、ひかる、冬の使い。まぶたの裏に沁みる冷たさといっしょに、ふ、と。世界から音が消えた。
惨憺たる世界に花束を
君を呼べない。君が見えない。君に触れられない。それが僕というひとの死。
熟れた果実のような心臓の裏側に きみはいる きみはいる きみはいる
小指の爪の先みたいな笑顔に 色を塗ろう
アポロンの憂鬱 朱色の慈愛 邂逅には夕焼けを塗って 流血を葬った深淵の監視者
清廉な空虚 坂道上の咆哮 生まれてきた君 とおく、とおく、やわらいだ記憶
どうか幸せに、と手を振った。散って、千切れて、はじけて消えた。きみの笑顔。ぼくの呪詛。失った声。まっしろなさようなら。
僕の世界だったあのひとは、笑っていますか。幸せですか。そこに神様はいますか。僕が祈り始めたのは、世界の終わりの始まりの朝のことでした。
ノースリーブの縁にひっかかった夏の正体