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耳の奥にキン、と合図の音。無音の散乱。差し伸べた指先に吸い込まれてゆく六花の死骸が世界を白く染めるまで、あと、どれくらい眠ろうか。
ちらり、ふわり、ひらり、さらさら、しんしんと。踊り、舞い、ひかる、冬の使い。まぶたの裏に沁みる冷たさといっしょに、ふ、と。世界から音が消えた。
君を呼べない。君が見えない。君に触れられない。それが僕というひとの死。
どうか幸せに、と手を振った。散って、千切れて、はじけて消えた。きみの笑顔。ぼくの呪詛。失った声。まっしろなさようなら。
僕の世界だったあのひとは、笑っていますか。幸せですか。そこに神様はいますか。僕が祈り始めたのは、世界の終わりの始まりの朝のことでした。