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高校演劇の熱さを知ってるかい

今日、地元の高校演劇部が自主公演をやるということで観劇に。
コロナ禍で大会が無くなってしまった今年度。
高校時代という青春を演劇に費やした僕には、観に行かなくてはならない物だと思った。

内容についてはあまりここで触れるつもりはない。
ただ、高校生が取り扱うには重いテーマを、創作脚本として完成させ演じきった姿に感動した。
ここ最近感じていなかった、若い世代の圧倒的な熱量を肌で感じた。

高校演劇について

そもそも高校演劇って関わったことが無い人からすると全くの未知の領域だと思う。
そもそも演劇部に大会があることも知らない人が多いよね。

全国どこもそうだと思うけど、少なくとも僕が捧げた青春は、夏大と冬大と呼ばれる年二回しか無い大会に照準を合わせていたし、その中でも夏大だけが全国へと繋がっていたのでさらに重要だった。
地区大会で代表3校に選ばれると県大会に出場し、中部日本に繋がり全国へと続いていく。
一度負けたらそれで終わり。
高3になると受験勉強だなんだで部活を引退することが多いため、実質2回しか全国を懸けて演じることはできない。

演じる脚本は、既成脚本か創作脚本となる。
既成脚本はやはりレベルが高いものが多いので、何度も演じられてきた既成脚本と創作脚本が全くの同レベルだった場合、創作脚本の方が評価される傾向にあった気がする。

僕は脚本を書いていたので、創作脚本で勝負し、負けた。
冬大は入賞できたが、夏大は負けてしまった。
自分が書いた脚本で、全員が最高の演技をしてくれたのに負けてしまった。
自分のせいで皆の全国の夢が絶たれた気がして、終わってから泣きながら謝っていたことを覚えてる。
あれだけ毎日打ち込んで、嗚咽を漏らしながら泣くほど悔しい想いをしたんだ。高校演劇が熱くないわけがない。

だからこそ、大会が無くなってしまった現役の子たちのことを思うと心が痛む。
テレビでは甲子園のことしか見かけなかったけど、色んな部活動の裏に今年度はやるせない涙があったはずだ。
それを自主公演というかたちで地元の高校演劇部はやりきった。
自主公演ならば何分の劇をやっても良いと思うが、彼らのやった劇はきっちり60分。
それは高校演劇の大会ルールに則った時間だった。

高校演劇の大会について

高校演劇という世界は、大会が少し変わっている。
劇場関係者や舞台関係の業者さんは当然携わるが、基本的な大会運営は全て学生が担うのだ。
(少なくとも僕の時はそうだった。)

各高校から代表者が集まり、全体の企画運営をする総務と呼ばれるメンバーが結成され、総務が音響や照明、舞監など様々な部門の統括をする。
それぞれの部門にはまた各校から集まったメンバーが集まり、大会の裏で仕事をこなす。

そういう体制だからか、高校演劇は他校との繋がりが非常に強固で、ライバルでありつつも仲間意識がある。
自分たちの舞台が終われば、他の高校の舞台を観に行き、終わったあとは感想を各校に当てられたB紙(模造紙)に書いていく。

高校演劇の世界はどこかを蹴落としてやろうという世界ではなく、自分たちの良いと思うものを突きつめていく世界だ。
それぞれが自分たちにとって最高の舞台を創ることに情熱をかけ、他校の舞台は純粋に観客として楽しむ。
あの独特な空気感は演劇部ならではだと思う。

そうそう、様々な部門の中には講評という部門もあり、講評メンバーは全ての劇を観ていて、生徒の声も大会の結果に大きく関わる。
そこに忖度は無く、非常に真剣だった。

ちなみに大会は3日間くらいかけて行われ、
最後の審査結果が出る前の空いた時間すら演劇部が企画を考え観客を飽きさせない仕組みになっていた。
シンプルなお題だけ出され即興で劇をやるエチュードなど、参加者はその場で出たい人が出たりする。
普通いきなり知らない人と寸劇をやれと言われると萎縮しそうなものだけど、演劇バカばかり揃っているからそれで企画が成り立ってしまうのも、今思えば凄いことだな。

大会を通じて、他の高校との関係が築かれていく。
友人関係だけでなく、当然高校生だから恋愛だってある。
僕だって他校の私立高校の子と付き合っていた。
他校の先輩や同輩とも仲良くなり、より演劇が楽しくなっていく。
演劇部の大会にはそういう側面もあった。

それだけに大会が無くなってしまった現役生たちを思うと、やはりやるせない気持ちにはなってしまう。

高校演劇は青春そのものだった

高校演劇に捧げた青春時代
今思えば日々積み重ねた時間も、大会で育んだ時間や経験も、僕の人生観に大きな影響を与えている気がする。

舞台で浴びる照明の熱さや
舞台で大きな声でセリフを話す高揚感
舞台に向けられた観客の笑顔や泣き顔
あそこでしか得られない体験が詰まっていた。

そこに至るまでには、地道な発声練習や走り込み・筋トレといった、下手な運動部よりも身体を鍛えていた日々や、
体育館裏で電動ドリルとハンマーを持って夜まで舞台装置を作っていた時間、ボロボロになるまで台本を読み込み作品に向き合っていた時間など、熱いドラマがあった。

そういった物を全て60分に篭める。
キャストだけじゃない。
照明や音響、衣装、部全員が1つになって最高の60分を創り出す。
たった60分に至るまでのドラマを含めて、高校演劇というものは熱い世界だなと思う。


今僕はあれほど情熱を傾けている何かがあるだろうか。

あの頃の熱い気持ちを思い出させてくれた地元の高校…いやちゃんと名前出すか。豊橋商業高校演劇部に感謝したい。
そして大会という目指すべき目標を失っても、自主公演というかたちで最高の60分を表現した豊商演劇部、本当にお疲れ様でした。

かっこよかったぞ!


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