直島雑記


メモ帳からの書き出し

在来線では眠気に耐えられず目を閉じていた.地元と殆ど同じ景色だったので、目を開けることより睡眠を優先したかった.
ぴかぴかの晴れ、春前だからか田んぼの緑も色素が薄い.
12:25

全く海の見える気配がない.
目の前が山に囲まれているようにしか見えないのだが、本当に10分後には港に着くのだろうか。

山を走る。草木に顔を撫でられているような感覚.そして真っ暗になる.トンネルだ.
また明るくなった。

びぜんたい どこかの方言みたいな駅名.漢字を見ると「備前田井」だった.この響きにこの四字熟語という堅さは似合わない、と思った.

海の匂いがしないな、と思った 駅から海まで100mほどか.近付いてのぞきこむまで、海の存在を信じられなかった.
なるほど日本海とは全く違う.
花丸の晴れで、夜から小雨の予報が出ているとは思えない.
海の色は青.もしくは深みの緑.
磯の匂いはほぼ無く、深く息を吸い込んでやっと、爽やかな匂いがした.海とはこれを指すのだ、と思った。手でかき混ぜたくなる、という程ではないがやはり綺麗だ.
日差しは熱く、風は心地良く冷たい.

旅客船に乗ると、めかし込んだ観行客に混じって荷物も少なくラフな格好の人もいる.
直島に住んでいるんだろうか.
混じっているのは観行客である私たちのほうなのだが.
一人でいると誰かに話しかけたくなる.
しょうがの天ぷら、もしくはコンビニのフライドチキンのような匂いがする.
恐らく後者だろう.
隣の身軽な老人に話しかけようと顔を見たら、アイスブルーの綺麗な瞳だった.
揺れにも慣れてきて、揺れていることがなんなら自然で、元からゆれていたように思えてくる. 13:27


陸から船が離れる瞬間、何もないところに放り出されたようで妙に不安になった。しかし程なくしてだいぶ小さくなった宇野港を見て、ああ今から孤島に向かうのだ、と安堵の思いがした。
島という存在が好きだ。周囲すべてを波に囲まれて、本土とは隔絶されたシェルターのようで。しかしよく考えると日本も全ての大陸も海に浮いた地面であることには変わりないのである。私は本土に雑念と仕事を置いて逃げ出したかっただけなのだった。新潟にワーキングホリデーに行くと言っていた友人のことを思い出した。

3月1日 岡山県 宇野港


こんな真っ黒い箱みたいな建物を作って「寺」を名乗らせるの、すごいな
中のタレルの作品は暗闇の中で目が慣れるのをじっと待っていると見えてくるので、ああこれも禅か、修行に耐えて行きついた「悟り」なのか、と思った。

3月1日 直島本村 南寺


ちいさな漁船がたくさん停まっているのを見て、日展やらなんやらでこういう風景を描いた作品よく見るけど、そりゃ描きたくなるわ

3月1日 直島 本村港


こんにちは→konichiwa

3月1日 直島 カフェコンニチハ



靴を脱ぐ作品の前で来場者の靴を並べている職員を見て、美術館で働きたいかもな〜 と思った

3月2日 地中美術館 「オープン・フィールド」前


南寺の壁を切り取った平面、プロジェクターで投影された平面、空を窓で切り取った平面、ときてその後平面の世界に入らせてもらえるサービス、うれしすぎる
平面の中から出る時、それまでゆるい傾斜のついていた地面が急に平行になったので、3次元に戻ってきたんだな、と思った おそらく光が漏れないため、もしくは入りやすくするための施工

3月2日 地中美術館 「オープン・フィールド」(タレル)


連れが銀の球体が無数にあるのを見てずっと「螺髪じゃん……」と言っていて面白かった

3月2日 ヴァレーギャラリー


麻痺してたけど李禹煥ってやっぱり思想強いんだな

3月2日 李禹煥美術館 瞑想の間


やっぱり今回もグッズ買えなかった
カードと作品の比率が合わなくて空白ができてるのを許せず、一番好きな作品のポストカードを買えなかった
結局李禹煥の詩集を買った
兵庫県美の展示を見た人にヒアリングをしているらしく、李禹煥を語ってその上でポストカードまで頂けるという一石二鳥
ショップのお姉さんも李禹煥好きそうでよかった 働いてる人達みんなしっかり李禹煥好きなんだろうか
青いっぱい使う作品作ってたのに青色は別に好きじゃないらしい(連れ) 今月一番の驚き

3月2日 李禹煥美術館 ミュージアムショップ


ぜんぜん知らない土地のローカルニュースを見ると安心する

3月2日 直島 宮浦港待合所


きびだんごの「きび」ってとうきびのきびじゃなくて地名の吉備なんだ
桃太郎が鬼退治に持って行ったっていうからもっと武骨でどっしりした米の団子かと思ってたら案外求肥のふわふわした団子 というかおもちだった

3月2日 岡山駅から京都駅行きの新幹線


見慣れた国道を歩いていてもなんだか帰ってきたという気がしない まだ足が波に揺れているかんじ

3月2日 国道9号線沿いの道




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