心の充電ってすごい。
とうもろこしのお裾分けが実家から届いたのでお礼の電話をした。
母は先日無事に退院して足の具合も悪くないようで、何よりすごく元気になって帰ってきた。
2ヶ月の入院生活で沢山の人に助けられながら、本来持っていた彼女の社交性が発揮され、自分らしさを取り戻したらしい。
***
母は元々は社交的な人だった。
だけど、精神的な病気のために引きこもるようになっていって、私が大学生くらいの頃にたぶん一番ひどくなった。
深夜になると、徘徊する母を自転車で何度も探しに行った。橋の上から飛び降りようとする母を力尽くで止めて連れて帰ったこともあった。
父は深夜のドライバーの仕事でいなかった。
入院させてもらうことができるか、一緒に病院の先生に聞いてみたけど、先生から電気けいれん療法を勧められて、それは何か直感的に危ないと思って断ったら、何だか入院できなかった。
彼女が誇りを持ってやっていた医療事務のお仕事を辞めてからは、ずっと家にいて大好きな本をたくさん読んでいた。でも段々と老眼が進んできて長く本を読む事はできなくなっていった。
最近はデイサービスと病院以外は外に出ることはあんまりなかった。たまに近所のショッピングモールに父と一緒に出かけるくらいだった。
一時、私が20代前半の頃、シルバーバーチの霊訓とかいうのにハマって謎の事務所みたいなところに通ってた時期もあった。母に「お前も行きなさい」と言われ、謎の事務所に連れて行かれて、霊視のようなことをされた。
私は、霊が見えるというおじさんから「あなたには悪霊がついている。」とか言われてしまい、「にんにくを枕元に置いて寝れば、悪霊が退散する。」とアドバイスされたので、その夜、にんにくを置いて寝ようとしたら臭すぎて眠れなかった。
(そして、その時から私は悪霊と一緒に生きていくことを誓ったのだった。)
一時期、母は出会い系にハマったこともあった。
浮気なのか遊びなのか、全身白レースのふりふりワンピースを着て知らない男の人達と遊んでいた時期もあった。遊びと割り切っていたとはいえ、子ども(多分私は20代後半くらい)の気持ちとしてはやめてほしいと思っていた。
だけど何となく母がそうしたかった気持ちも分かる気もして、気が済んだらやめてくれると思ってた。
ある日、何人かいた男の人の中の1人が今から家に行くと言ってきて、母は怯えてしまって、父に泣きついて、最終的には、怒り狂った父がパソコンを破壊し、携帯も折って、有線LANも切られてあっけなく終わった。
それからしばらく母は携帯を持たせてもらえなかった。(今は普通に持っている。)
その後、母のうつは酷くなり、オーバードーズで入院したりして、もう死ぬことにまで疲れて諦めてからは、静かになってきたけど、やっぱり起きてるとしんどいのか昼間でも夜でも眠剤を乱用してたりしていて、父は薬を隠すのに必死であった。母はどんな場所に隠しても見つけてしまうから。
***
長い。前置きが長い。
そんな母が入院する前より若返って元気になって帰ってきた。せん妄で認知症が進んでしまうと心配していたけど、、これは奇跡に近いできごとだ。
病院で、看護師さんやリハビリの先生が、母の本来の明るさに惹かれてくれて、よく話しかけてくれて、時には相談もしてくれたらしい。
友達のように。
母には友達がずっと必要だったんだなって思う。
ずっと寂しかったんだと思う。
足の治療以上に、母の心が充電されて帰ってきたことに感動した。
退院の時は、皆にエレベーター前で見送られて、別れを惜しまれつつ帰ってきたと言っていた。
こんな経験はきっと彼女の人生の中でそうそうない事だったんだと思う。
こんなに人に大切に扱ってもらえたことが。
でもまた病院に戻ってきちゃうことは良くない事だってちゃんと分かってた。
病院の方々の優しさが母のことを変えてくれて、本当に感謝しかない。父が頻繁に病院に通ってたこともたぶん良かったんだと思う。
退院後に行ったデイサービスでも、色んな人に自分から挨拶したり話しかけてみたりしてるようでかなり前と違うね。元気になったねって言われたらしい。
優しさは人を救う。人を変えてくれる。
そんなこんなで「今度はあなたが幸せになってね。」って母から電話で言われたんだけど、、ちょっとびっくりしてぽかんとしてしまった。
私のことをすごく心配してそうなのは分かった。
幸せってなんだろうな。
たぶんこれからも、心配をかけたくないから辛いことがあっても絶対に言わないし、甘えるなんて事も恐らくなくて、これからも適度な距離を保つつもりだけど。
私は私の周りの人が幸せでいてくれることが、私の幸せなんだよな。本当に。このままずっと父とも仲良くいてほしい。できる限り長く。
私はずっと母に、ずっと中学生の頃からずっとずっと幸せになって欲しかった。だからある意味夢が叶ったんだな。おめでとう私。
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