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膝を開けたら氷山

今日は母のお見舞いに行ってきた。

母は今日、手術してから3日目。

そんな時に顔を出すのはどうなのかと思ったけど、事情を父から聞いたところ、心配だし、聞いてもよく分からなかったから行ってみて確認しようと思った。

父も仕事が休みだったから、病院の入り口で一緒に待ち合わせて行った。

母は、1年前位に入れた膝の人工関節がずれているとかで、手術になったのだが、実際に切開したら、感染症の疑いがあって手術できないような状況だったらしく、一度閉じたらしい。

という事は、まだ膝の腫れは治ってなくて、もう一度手術をしなければならないという事だと思う。
再手術はかなり辛かろうと思った。

自分も再手術されそうになった事があるし、その時はすごく怖くて仕方なかった。

開けてみたけど、何もできず閉じて再手術…
こういう事って意外とよくあることだというのも色んな人から聞いて知っている。

例えば、思ってたより重くてやる事が多くて出血多量で手術の時間が間に合わないから一回閉じてまた手術する事になったとか、MRIやCTには写っていたはずの腫瘍が開けてみたら存在しなくてとりあえず仕方なく閉じて再手術させてくださいとか。

知っているけど自分の身に起こるとは誰も思わない。起きた時の衝撃たるや。

父は慣れた感じで、面会の受付してくれた。
毎日来てるらしい。母のせん妄を予防する為に。
会社から近いとはいえ大変だと思う。

「あんまり無理しないでね。」と言ったけど、父はたぶん母のことが好きすぎるから毎日来るんだろうなと思う。

病室に行ってみたら、母は寝ていた。
私は起こしたら悪いから帰ろうと父に言おうとしたら、父が起こしてしまった。。

父はたくさん荷物を持ってきていて、母の好きな葡萄がぱんぱんに詰まったタッパーとか、ペットボトルの飲み物、チーズタルトのお菓子、スケッチブックとか、本数冊、母がいつも家で使っているタンブラーとか、カレンダーは大きいのと小さいの2種類も持ってきていた。

でも、ほとんど母に「いらない」と言われて持って帰らされていた。
可哀想だけど、母は確かに本が読める感じではなかった。

母はちょっとまた違う世界に行ってしまってて、話してたら、私の事も別の人だと思っていたぽい。
誰だと思ってたのか分からないけど、、途中から私だと認識してくれた。

そして、今まさに病院のベッドで横になっているのに「知らない人の家に三日間お世話になってる」事になっていたり。
(この設定は前のせん妄でも出てきた話だ。お決まりの妄想なのだろうか。)

その家の人か知らないけど、「こんな見た目だから始めは警戒されてたんだけど、少しずつ仲良くなってさ。」と、どこか知らない存在してないコミュニティーに母は入っていって、受け入れてもらったらしい。
(幸せな妄想ならOKです。)

でも、途中で看護師さんが来ると点滴の事を心配したりしてて、治療してる事については違和感ないみたいで、整合性どうなってるんだ…と思ったけど。
治療を拒否しないのはえらいなと思う。
そこは冷静にできるんだなって。

それと、前のせん妄の時は、母自身が女優の設定の妄想がよくあったんだけど、今度は弟のお嫁さんが恋愛リアリティショーに出てる事になっていた。
母もそういうの見る事あったんだなぁって、なんかちょっとおもしろいなと思ってしまって、前回の母のせん妄の時に比べて私自身が冷静になってる事に気づいた。
前の私なら絶句してたと思う。

母がずっと弟のお嫁さんの事を「⚪︎⚪︎ちゃん、テレビに出てるよね?」と話すので、私は困ってしまって、困り顔で「たぶん違うと思う。」って言ってしまったら、「そうか、私がおかしいのか。」と言ってたので、空想と現実が入り混じってるのをどこか俯瞰してる母もいるのかなぁと思って、それって相当キツくないか?と思い、「大変だったね。よく頑張ったね。」ということしか言えなかった。

術後は暴れてしまったらしく、拘束のベルトみたいなものや、手につけるミトンがあったけど、行った時は外されてたからよかった。
一日中つけられてたらかなり辛い。

父が「仕方ないよ。そういう病気なんだから。」ってなぐさめていた。
母だって暴れたくて暴れたわけじゃない。どうしようもなくて暴れたんだもんね。

途中で主治医が来て、説明を受けた。

膝を切開したら大量の膿と「氷山のようなもの」が出てきて、それが何かわからないから今調べていて、恐らく菌が繁殖してるからという事で膝を洗浄しながら、ずっと痛み止めの麻酔と抗菌剤の点滴をしているっぽい。

検査の結果は来週までには出て、それから今後の治療を決めると言っていた。「氷山のようなもの」って何なのだろう。

ずっと、Googleで調べてるけど分からない。
膝を開けたら氷山が出てくるなんて、意味がわからなくて、こわすぎる。

しかし、母はその後、先生が来て話してくれて安心したと言っていた。安心ならよかった。

父と「とにかく痛くないようになったらいいね。」と話して、帰りにアイスコーヒーを飲んで帰った。帰り道はお互い無言だった。

思っていたより、母が落ち着いていたので私はちょっと安心した。

たぶん、父の毎日面会の効果はあるんだろう。

私はアイスコーヒーをご馳走することくらいしかできないが、がんばれ父。

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