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認知症介護がはじまると訪れる5つの段階

こうたろうのブログでは書けない話。

少子高齢化の中、これからもどんどん増えていく認知症。

特にアルツハイマー型認知症は誰もが他人事ではない現象です。

本日は特にアルツハイマー型認知症の介護がはじまったら辿る生活の変化や各段階においての介護する側がとる行動についてシェア。

在宅介護歴7年の元ヤングケアラーでアルツハイマー型認知症の介護から要介護5までみてきた筆者が綴っていきます。
→すべての情報は筆者の経験に基づいた感想であり誰かのためになるかもしれないという想いでシェアしています。
医療的事実や情報のアップデートは各自行ってください。

医者は認知症を知らない

まず最初にここを最も注意して意識したほうがいいと思われます。
もちろん積極的に情報収集しているドクターもいるでしょうが、そもそも病院というのところは命を守るところです。

日本の医療技術はかなり優秀で、筆者が介護していた今は亡き祖母も急性心筋梗塞の搬送時に超迅速な処置で一命を取り留めた過去がありました。

病院という場所はそもそも認知症というただちに命の危機に直結しない病を研究する意味も治療法を探る意味もありません。

どちらかといえばこちらは研究機関や製薬会社の部門になるでしょう。
その成果も上がってきており、アミロイドベータタンパク説に対しての対処法アプローチを軸とした薬の研究が近年アメリカの企業を中心に活発になってきており、日本でも2020年代後半には早期発見であればある程度まで抑制できるような世界になっているかもしれません。

この辺りは各自情報のアップデートをお願いします。

第一段階:誰も気づかないフェーズ

本人を含め家族も誰も気がつかないフェーズです。
アミロイドベータタンパクの蓄積説が正しいと仮定するのであれば、このまま誰も気がつかずに寿命を迎える場合もありますし、認知症介護へと突入しないケースもあるのかもしれません。

筆者も要介護5までの生活を終えてみて、改めて振り返ってみるとそういえばあの段階からすでに兆候はあったかもしれないと思うこともしばしば。

この段階では経験者以外はわからないですし、病院にいっても長谷川式スケールテストを行うだけで兆候あるかもねくらいで終わります。
仮にテストの数値が悪かったとしても知識の乏しいドクターに当たってしまうととりあえず定番の薬を処方されて終わりです。

第二段階:なんだか最近イライラする

何が!というわけではなく、なんだか最近親に対してイライラする。

反抗期の時のような鬱陶しさを感じるようになる。

この段階からちょっとしんどくなってきます。
しかし認知症介護をしたことがない方にとってはまさか認知症や老化から来る認知機能の低下とは思ってもみないこと。
日常に少しづつストレスを蓄積するようになってきます。

この段階で地域の『あんしんすこやかセンター』に出向くことができればその後の人生は大きく変わります。

しかし、それはほとんど不可能に近いくらい難しいことなんですよね。
わかります。

第三段階:なぜか攻撃を受け始める

親がなぜか最近ヒステリーに感じる。
物を投げてきたり、なんか攻撃的なことをいってきたりする。

第二段階でボディーブローのようにストレスを蓄積してきたあなたにとってみたらまさに噴火寸前の状態。

巷で頻繁に起こる介護関係のトラブルや事件はこの段階が一番最初の時期。
反抗期にやったよくある親子喧嘩かなとも錯覚してしまう。

でも実はこの段階では一度第三者に相談したほうがいいわけです。

よくある『財布を盗んだでしょう』とか、貴重品『あなたが取った』とかもこの時期。

『私が死ぬのを待っているのね』なんて心無い言葉が投げかけられたりして、家族なら怒り心頭といったところでしょう。

この段階ではご本人もだんだんと自覚してきて何よりも『不安と孤独の渦の中に飲み込まれている』状態です。

得体の知れぬ不安、なぜか強烈に感じる孤独。

親を大事にしなさい。
優しく抱きしめてあげればいい。。。

なんて適当なことを他人はいいますが、現実はそういうわけにはいかないですよね。
わかります。

筆者の場合はこの段階でしょっちゅうトラブルになりかけており、合理主義の筆者はすぐに110番していました。

『すみません、大きなトラブルに発展しかねないので、安全のために仲裁してくれますか?』と連絡していました。

警察の方も『遠慮せずに呼んでよ!交番にかけてくれてもええから』といつも温かく対応してくれましたがこれは地域性もあるでしょう。

で、そういうことをしていたのもあってか、地域のあんしんすこやかセンターの方が訪ねてきてくれたという感じです。

本人も特に基礎疾患を抱えていない場合は体力も有り余っていて、得体の知れない不安と孤独を抱えながらも自分はまだ大丈夫、元気、若いという自信を持っているため言い合いをしても決して折れません。

介助する側にとっては一番辛い時期なのかも知れません。

第四段階:様々なサポートが必要

この段階になると素人一人での対処は無理になります。

ケアマネージャーと相談しながら一緒に生活の基盤を整えていくことが重要になります。

この段階にきて初めて『現在介護をしている』という実感がわいてきます。

あなた自身のQOLをどう保ちながら介護生活を過ごしていくのか、ケアマネージャーとしっかり話し合ってください。

しっかり話し合う時間を取ってくれないケアマネージャーの場合は遠慮なく他の方に担当を変わってもらいましょう。

通常介助者のQOLもしっかり保てるよう、介護離職などが発生しないような柔軟なケアプランを考えてくれるはずです。

例えば筆者の家にも介護生活の名残がありますが、トイレの場所、行き方(ルート)などなど、生活の様々な場所に張り紙が必要だったり、家の中を解説しながらだったり、夜のトイレに付き添ったり、リアルな介護生活がはじまります。

そしてニュースで頻繁にみるようになった在宅介護での事件などは、この段階の介護疲れによるものもあるかと思います。

年代的にみるとやはり定年退職した60代の方が初めての在宅介護に携わる社会になってきました。

これまで社会的地位の高い役職についていた方が突然なんの肩書きも失って、それだけでもストレスなのに、親の排泄物の片付けや介護食の準備などしなければいけなくなります。

それはこれまで社会では想像もしてこなかったような過酷な世界でしょう。

第五段階:独特の世界が構成される

最後のフェーズになると、自分が今どこにいるのか、そして、いつなのかというのもわからなくなります。

おそらくこの段階になると家族のこともよくわからなかったり、親戚とごっちゃになったりと独自の世界観で構成されていきます。

あなたのことも忘れてしまっているかも知れません。

筆者も様々な名前で呼ばれていました。
最終的(要介護5で24時間介護時)には筆者のことを『なんだかよくわからないけど安全な人』という理解で過ごしていたように感じます。

この段階になってはじめて、介護の喜びというか、人間と人間のつながりの不思議な感覚を感じることになり、『ただそこに愛が在る』みたいな抽象的な感覚を感じ取ることがあります。

あなたができることは、『とにかくここは安全で安心できる場所であるということ』そして、『わたしたちは安全で安心な人であるということ』をひたすら間接的に伝え続けることが重要です。

幸せそうに過ごしている様子をみるとなぜか涙が溢れてきますよ。

フェーズの移行はそれぞれ

十人十色とも言われるアルツハイマー型認知症の症状や対処法。

極めて高い想像力を持って対応しないと持ちません。

また各フェーズに移行するきっかけのようなものも人それぞれだと思います。

筆者の経験だと、亡き祖母は片目を失明し、専門職だった洋裁ができなくなったことで一気にフェーズ4に進みました。

また、唯一の仲良しな親戚となっていた人の突然の死で一気に4の後半まで進行したように思います。

まるで緊張の系が切れたかのように。

介護は終わりの見えないマラソンです

一人で考え込まない、無理しない、ペースを崩さない、慌てない。

下り坂がきたからといってスピードをあげない。

上り坂がきたからといって頑張ろうとしない。

ケアマネージャーと一緒に必ずチームで走る。
一人で走らない。

これが終わりの見えないマラソンを続けるコツです。

プロフィール
服部 洸太郎
音大を卒業後ピアニストとして活動。
自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてシンガーアーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツへ渡りケルンにてAchim Tangと共に作品制作。
帰国後、金田式電流伝送DC録音の名手:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、録音エンジニアとしての活動開始。
独立後、音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現在はKotaro Studioに統合)」を立ち上げ、タンゴやクラシックなどのアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、介護で使えるプログラムをM5Stackを使って自作。
株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにてアルゼンチンタンゴをはじめとした民族音楽に関する文化の研究、ピアノ音響、さらに432hz周波数を使った癒しのサウンドを研究中。
スタジオでは「誰かのためにただここに在る」をコンセプトに、誰がいつ訪れても安心感が得られる場所、サイトを模索中。