『隷王戦記2 カイクバードの裁定』のあとがきのようなもの≠あとがき



8/18、『隷王戦記2 カイクバードの裁定』を無事に上梓できました。

応援くださっている皆様、関係者の皆様、まずは誠にありがとうございます。

ここではポロポロと書いているときのエピソードなどを連ねていこうかなと。

文庫本内ではないので、とりとめのない話に逸れていく可能性が大ですが、そこは大目に見てください。

発売日の18日、心を統一して1ページ目から読み直し、読み終わったのは19日の早朝。

そりゃあ、書いた本人だから読むのは速いに決まっている。

この世の誰よりも早く読み終わった実感を手にしてTwitterや読書メーターを開いてみれば、さらに早く読み終わっている方がいて悔しさ5%、嬉しさ95%という感情に包まれながら眠りにつきました。

よく眠れました。ありがとうございます笑

ツイッターなど、ちょくちょく隷王戦記で検索したりもします。その時に悩ましいのが、絡んでいっていいのだろうかということです。

時折「えいやっ」とばかりにリプライをさせていただくこともありますが、基本的にコミュ障の陰キャですので、見て微笑んで、そっとじするのが私の限界です。

ですが、応援してくださっている方々には、感謝してもしきれないくらい感謝しております。

本当に皆様、ありがとうございます。チキンでビビりな私ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

さて、ここからは内容についてちらほらと

【戦争描写について】

一巻とは打って変わって、戦記の模様が色濃くなった二巻。
戦を書くことは、なかなか難しいです。精神的にも辛いです。

綺麗事でない以上、残酷な描写が必要になってきますし、好きなキャラクターがどこで死ぬのかハラハラしながら書かないといけません。

大体はプロット段階で誰が生き残り、誰が死んでいくのかは決めています。

しかし、森山の執筆時間が、仕事が終わった真夜中ということもあり、深夜テンションMAXだったりすると、「あれ、お前なんで今死んだ?」ということがまま起きます。

かつて書いた小説では、深夜テンションで書き、生き残りがライバルしかいないという謎状況に陥ったことも。。。

その時はまあ、現実世界の森山光太郎の生活もひどく荒んでいたので、その深層心理の表れだったのかもしれません。

あの時は本当につらかった。毎日、三食が白米にふりかけという生活。TKGは豪華な食事で、5袋300円のレトルトカレーは週1の贅沢でした。

小説家になろうと決めて、新卒で入った会社を1カ月でやめた森山は、その後一年半の執筆生活を送っていました。実家は熊本のため、東京の独り暮らし。家賃72,000円。食事代だけを稼ぐために勤めたバイトは手取り12万円を切るくらい。家賃を払い、奨学金を返済すると、残りは3万円ほど。そこから水道光熱費、食費を出すとなると、本当に切り詰めた生活です。

まあ、荒みますね笑

話を戻しましょう。

私が戦記として思い浮かべるものとしては、一巻のあとがきでも書いた田中芳樹氏の『銀河英雄伝説』や、北方謙三氏の『水滸伝』シリーズなどがあります。

それらの描写もとても大好きなのですが、同時に佐藤賢一氏の描く『傭兵ピエール』などの生々しい描写も、描きたいという気持ちがあります。

というよりも戦記物である以上、必ず必要だとも……。

――物語の中の戦場は、いつも華やかだ。無数の敵を討ち滅ぼす英雄を讃え、そして煌びやかな英雄同士が己の意地をぶつけて戦う――

第三章において、カイエンの副官バイリークが、重体となった味方を前に思う一文です。戦記の色が濃い第二巻を書く上で、この一文だけは絶対に入れたいなと思っていました。

戦場を書く上で、テーマとしたものでもあります。今回、エンタメを壊さない程度に、入れることが出来たのではないかと思っています。

壊していると思われた方がいらっしゃれば、次はもう少しうまくやります(´Д⊂ヽ

【二年の経過について】

二巻を書くにあたり、一巻からどの程度時間を空けるべきか悩みました。

一巻の時点で、主人公たるカイエンは、自ら立ち上がることを決めました。しかし、敵は強大。東方世界を支配した赤眼の覇者エルジャムカ・オルダと、付き従う人ならざる守護者たち。

この空白の二年の中で、カイエンはバアルベクの軍制を立て直し、マイは都市機能を回復させ、それどころか以前のバアルベクよりもよほど強力な都市へと造り変えています。その様も書きたいなとも思いました。個人的には、パリの街を改変したオスマンのような話を書いてみたいという思いもあったのですが、それを書くと、おそらく物語が全く進まなかったと思います。

個人的にオスマン推しなので、愛が溢れすぎたと思います笑

また、三巻構成ということで、残す二人の背教者(悲哀、怠惰)や四人の守護者(水、樹、動物、大地)も出す必要がある。かつ、三巻で結末を迎えるためには、二巻で戰の民をまとめ上げておく必要がある。ということで、戰の民統一の戦に乗り出す瞬間から書き、そして最後まで戦場を駆け抜けさせました。

三巻も、それ以上の戦場が繰り広げられると思いますが、二巻よりも人と人とのつながりに焦点を当てた物語になると思います。こればかりは書いてみないと何とも言えませんが。

【装画について】

今回、隷王戦記シリーズで装画を頂いているのはイラストレーターの風間雷太さんです。物語の中で動いてくれている登場人物たちが、実際に視覚化される体験は、いつもいつも衝撃的なまでに楽しくなります。

カイクバード侯を見た時、「ああ、こいつには勝てんわ」と素直に思いました。

【キャラクターについて:一巻のネタバレ含みます】

お気に入りのキャラクターは誰か。
〈男性編〉
そう聞かれた時、私が真っ先に答えるとするならば、モルテザ・バアルベクです。

自分で殺しておいて何を言うかと思われるかもしれませんが、これは揺らぎそうにありません。自分に自信を持ち、自分がやらねばと視野狭窄気味に前進する有能な男に、私は憧れています。

くわえて、これはとある雑誌のエッセイにも書いたのですが、私は「くたびれた有能なおっさん」に憧れています。例で言うと、東のエデンに出てきた近藤刑事のような男です。

有能でありつつ、ギャップに苦しみ、最後は間の抜けた死に方をしていく。そこにリアリティを感じてしまいます。

本作のモルテザは、隷王戦記の登場人物の中で、そうなる可能性を秘めた人物の一人だったのです。そのため、彼がべリア砦で死んだときは、血涙を流してしまうくらい悔しかったです。

なんで、あの時に死んだんだ!!!!

最初の段階では、いずれ味方になる敵役というポジションだったくせに! 

とは今でも思っています。

現在の登場人物の中で、「くたびれた有能なおっさん」になる可能性を秘めていると言えば、サンジャルでしょうか。エルジャムカ側で言うのであれば、エラクがそんな感じでもあるのですがね。

ですので、モルテザに次いでのお気に入りといえば、サンジャルやエラクになってくるのでしょうか。

〈女性編〉
そう聞かれても、「少なっ!」と答えるしかないほど女性キャラが少ないのですが、、、戦記物だから仕方ないとはいえ。

書いていて楽しいのは、断トツでフラン・シャールです。

そんな書いていないだろという突っ込みはなしでお願いします。彼女自身の描写や、主人公たちの行動を、フランがどう思うのかを考えるだけで楽しいのです。

エフテラームの人間臭さもまた気に入っています。

おそらく、本作の中でもっとも心が弱いのではないでしょうか? 

迷い、悩み、それでも弱さを捨てきれず、戦場にあるまじき優しき判断をしてしまう。きれいごとに近い判断をしてしまいますが、ただ、それこそ人間の弱さそのものだと思うのです。

そして、その人としての弱さを受け入れ、そのうえで乗り越えようともがく彼女の姿は、とても清々しい気持ちになります。

女性編については、人数が少ないからこそここではあまり膨らませることが出来ません。三巻のネタバレになる気がしますので。

と、22時に仕事が終わって、すた丼食べながらつらつら書いていたら、3000文字を越えてきていましたね。

このあたりで、あとがきみたいなもの、の〆とさせていただきます。

なお、このノートは随時更新していきますので、よければ是非。

大体、原稿の〆きりに追われて現実逃避している時に更新されます!!
(なお今――

              2021 0822 森山光太郎

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