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ぼくのバディ(BANKとPANTAの話)

数年前まで、僕は2頭の犬を飼っていた。
兄の「BANK (バンク)」と弟の「PANTA(パンタ)」。
今日は彼らとの思い出を書こうと思う。

兄のBANKは優しく聡明で、僕が話しかける言葉をほとんど理解していた。
弟のPANTAはとことんやんちゃで、好奇心のままにいたずらをしてはいつも僕を困らせた。

2頭はスイスにルーツを持ち、山岳救助犬としても活躍する、バーニーズマウンテンドッグという大型犬だ。
それだけに寒さにはめっぽう強く、真冬の東北・福島でもお腹を出して寝ていたくらいだ。

会社に行く時も山に登る時も、BANKとPANTAといつも一緒だった。
僕が出かける気配を感じると、揃って定位置にスタンバイ。車のトランクに乗せて、どこへでも連れて行った。

僕らのホームマウンテンである安達太良山(あだたらやま)は、犬連れでの入山が許可されていて、2頭を連れてよく山登りをした。
登山スタイルにも、BANKとPANTAの個性がそれぞれ表れるからおもしろい。

安達太良山は、 標高1700mで比較的登りやすい山だが、油断してペースコントロールを間違えると、人間でもすぐに息が上がる。
BANKは無理をせず、最初から最後まで同じペースで歩く。
やんちゃなPANTAは序盤ではしゃぎ回って、大抵、途中で息切れしてしまう。
そんな弟の様子を、兄は少し先から、のんびり眺めて待っている。

ある時、いつも通り調子良くスタートしたPANTAが、きつい上り坂の途中で進まなくなった。
バーニーズは50kg超えの大型犬だ。同じく息の上がった僕が担ぐには、さすがに重すぎる。
どうしようかと困っていたら、数十メートル先の開けたところからこちらの様子を伺っていたBANKが、ひょいと下りてきた。
PANTAのお尻側に回り込み、頭と肩を上手に使ってPANTAの腰を支えると、そのままずいずいと押して歩いた。
そうやって、急な坂道を登りきったところで振り返ると、「お前は大丈夫か?」といった顔つきで僕を見る。
僕が「こちらはかろうじて、大丈夫」と笑い返すと、また元のペースでのんびりと歩き出した。

犬と人間は数万年前から付き合いがあり、人間の最も古い親友と言われている。
もともと野生の肉食動物だった犬を人が好んで側に置いてきたのは、きっと、狩猟や護衛という家畜としての役割を担ってくれたから、だけではないだろう。

僕はBANKとPANTAと確かにコミュニケーションを取っていて、登山の時以外、例えば仕事に悩んだときにもよく助けられた。
月並みな表現だが、2頭が旅立った今も変わらず、家族だと思っている。

犬たちに支えられて、人類はここまで進化して来たんだろうな。
寒い季節の訪れを身体で感じながら、ふと、そんなことを思った。


冬の寒さも大好物
左がBANK、右がPANTA


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