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花火屋でバイトしてた夏

梅雨が明けましたね。ひと昔まえだったら夏の到来にテンションMAXでしたが、こう熱くては外にすら気軽に出られません。夏フェスもずいぶん過酷なイベントになってしまいました。お客さんはもちろんのこと、ステージ上の我々も命を削ってる感があります。夏フェス好きだから複雑な気分やで……。サザンがフェスを引退するのも納得というか…。
でもやっぱ夏が好きなんですよね。そびえ立つ入道雲を眺めては、どこか知らない土地に旅に出かけたくなります。青春濃度が高まる季節。

というわけで、2024年の夏がやってきました。toconomaは目立った活動をしてないように見えますが、水面下ではレコーディングにMV撮影…わりと多忙な日々を過ごしています。ちらほらお伝えはしてますが、実りの秋に向けて仕込みをしている段階です。吉報を待たれよ!ツアーもやるよ!

そして、夏といえば学生の頃のバイトを思い出します。

僕が通っていた多摩美術大学では体育会系の学生を集めて、夏に恒例のバイトがありました。そう、掲題の件です。

世にもめずらしい「花火屋でのバイト」があったんですね。古くから花火大会で「たまや〜、かぎや〜」って言うじゃないですか。あれは花火屋さんの屋号なんですけど、まさに「たまや」でアルバイトをしていました。今でも府中に残ってるんですよ。すごいよね。

おもな仕事は花火大会の搬入、設置、片付けです。

東京湾花火大会、隅田川、調布、競馬場、二子玉川……関東の主要な花火大会はだいたい制覇したと思います。

当たり前ですが、花火の設置が主な仕事なので炎天下で作業することになります。集合はだいたい朝の6:00。会場に着いたらさっそくトラックから花火の筒を運び出します。

なつかしい

これがね〜死ぬほど重いんですよ!火薬を打ち上げるのですごく頑丈。ぎっくり腰寸前でひたすら花火会場に並べていきます。例えば隅田川の花火大会だと2万発はあるんですけど、とんでもない数を運ぶわけです。体感的には引越しのバイトよりきつい。容赦無く照りつける太陽。次第に失われていく握力。

花火を並べ終えたら、今度は配線の手伝いです。僕が働いていた当時でも花火はコンピューター制御でした。その導線を花火ひとつづつに繋げるんですね。ミスったら不発になるので、とんでもない緊張感です。垂れた汗が目に入るのを我慢しながら、細かい作業をひたすらこなします。炎天下なんだけどみんな集中しててすごく静か。

この時点でだいたい昼過ぎ。難しい現場は夕方まで設置がかかることがありました。配線が終了したらら、学生バイトはもう本番までやることがありません。へとへとなんですけど、あとは木陰で学友とだべって夜を待ちます。疲れてほとんど記憶はないのですが、「誰々が誰のことを好きらしい」みたいなしょうもない話をしたり、花火職人さんの豪快な話(AV女優が愛人&キャバクラでの武勇伝)を聞きながらワイワイ過ごした記憶があります。

日が落ち始めると、数万人の観客が集まってくるわけです。喧騒の中に漂う屋台の匂い。汗と砂でまみれた格好で、浴衣を着た人たちを眺めるんですが、どこか充実感というか「人の為に働いた!」という感じがあったのを覚えています。ちょっと誇らしい気分。

本番が始まると、だいたい花火を真下から眺めます。
役得ともいえますが、ぶっちゃけ怖いくらいの迫力です。花火のカスや粉が降ってくるので目が開けられないことも多かった。当たり前だけど火薬の匂いと熱がすごい。職人さんたちは文字通り命がけです。

河川敷の会場では、枯れ草に火が燃え移ることがあったので、バケツを担いで右往左往したりしました。たしか二子玉川の現場で盛大に火が燃え上がって焦ったのを覚えています。

そして花火が終わったら地獄の片付けタイム!筒をトラックに積み戻しつつ、会場に落ちた花火のカスをひたすら拾います。これが永遠に終わらないじゃん!って思うくらい量が多いんですよね…。腰は限界です。

こういうのが数千個落ちてます

ようやく帰りのバスに乗るのが夜の22:00くらい。事務所に到着するとほぼ深夜。そこから職人さん含めて打ち上げが始まって、帰宅するのは明け方でした。

改めて思い返してもしんどいバイトだったのですが、いかんせんバイト代が良かったんですよね。当時の引越しバイトの2倍くらいもらえたかな?ひと夏働いて、サラリーマンの月給くらいは稼いでた気がします。

良くも悪くも一生分の花火は既に観た気がするので、正直今は花火にまったく興味が湧かなくなってしまいました笑。なんか残念な気分になりますね。

そして花火のバイトの中でも、特に忘れられないキケンな思い出があります。
おそらく走馬灯に出てくるレベル。


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インストバンドtoconomaのギター石橋がお届けするよもやま話。バンドにまつわること、デザインのこと、コラムなど。SNSでは書ききれない…

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