疲労から抜け出すための、『3つの門』とは?
こんにちは。Wellness, Inc代表医師の中田航太郎です。Wellnessでは、忙しい労働世代が効率的な健康管理を実現するためのパーソナルドクターサービス『Wellness』を提供しています。僕自身もFounderドクターとして、100名近いトップビジネスパーソンやアスリート・芸能人の健康と向き合ってきました。
その中でもよく聞かれる症状が『疲労感』です。何となく怠い、目覚めがスッキリしない、夕方になると集中力が持たない、といった課題です。中には、漠然とした不安感やケアレスミスの増加といった形で気づく方もいます。
『疲労』は、発熱・疼痛と並ぶ、人間に備わった重要な生体アラームの1つです。疲れを感じているということは、身体が休息を求めているということです。しかし、現代人の多くは疲労を軽くみてしまっています。
発熱があったり痛みがあったりすると、原因を調べるために病院に行ったり、市販薬を買って対策をとったり、仕事を休んで休養に専念したりするものです。しかし、なぜか『疲労』だけは根性で乗り切ろうとしたり、エナジードリンクやコーヒーを飲んで誤魔化したりしてしまいがちです。
しかし、これらは根本的な解決にはなりません。むしろ、ますます自分の身体を痛めつけることに繋がってしまい、最終的には過労死といった不幸な結末を迎えることすらあります。
疲労無視の原因は『マスク機能』にあり
では何故私たちは『疲労』を無視してしまうのでしょうか?それは、人間に備わった疲労のマスク機能が関連しています。つまり、疲労が溜まっている状態にもかかわらず、『疲労感』を隠すことができてしまうのです。
その原因となるのは、私たちの脳内で産生されるホルモンです。
ハードワークや熱い温泉、強めのマッサージなどは身体にとっては刺激となります。このような刺激を受けると、私たちの脳内ではドパミンやβ-エンドルフィンといった快楽物質が産生され、それによって疲労感を感じない麻痺状態に陥ってしまうのです。
長時間の運動によって起こる一時的な多幸感『ランナーズハイ』なども、この脳内ホルモンが関与していると言われています。また、熱い温泉に入ってマッサージを受けた直後は疲れがとれた感じがするが、翌日になるとむしろどっと疲れているといったこともあるでしょう。
ハードに仕事をし過ぎた時の無双状態を『まだまだ頑張れる』と勘違いしてしまうのは、非常に危険なのです。身体を痛めつけるほど気持ちいいと錯覚してしまっているということなので。
『疲労がなくなる』ことと、『疲労感を感じなくなる』ことは全く別物であるということを認識しましょう。
現代人の疲労は酸化ストレスが原因
では、どのようにして私たちは疲労感を感じるのでしょうか。
50年〜100年前まで、疲労の原因の多くはエネルギー枯渇によるものでした。運動量は激しく、食事のバランスは悪く、十分な栄養もとれなかったのです。
しかし飽食の現代において、エネルギー枯渇を原因とした疲労で悩む人は殆どいません。疲れた時には『ウナギを食べる』『焼肉/スタミナ丼を食べる』といった発想は昔の人たちのものであって、現代人の疲労には効果がないどころか悪影響をきたすこともあるのです。
では現代人の疲労は何が原因かというと、『過剰な酸化ストレス』と表現できます。酸化ストレスは、長時間のデスクワーク・紫外線の浴びすぎ・精神的ストレス・大気汚染などが原因で発生します。
酸化ストレスは体内で活性酸素の発生につながります。適度なストレスは体内の免疫機能や感染防御において重要な役割を果たしますが、過剰な酸化ストレスは必要以上の活性酸素発生に繋がり、私たちの細胞を傷つけてしまいます。自律神経や筋肉の細胞が傷害されることで細胞の機能が低下し、疲労感や、それに付随する様々な自律神経失調症状を引き起こすのです。また最新の研究では、細胞が傷害された際に疲労因子(FF: Fatigue Factor)が発生すること、それを打ち消す疲労回復因子(FR: Fatigue Recovery Factor)といった物質が観察されることが分かってきています。FFがFRを上回ったとき、『疲労』が発生してしまうのですね。
疲労から抜け出すために知るべき3つの門
では、疲労から抜け出すためにはどうすればいいでしょうか?Wellnessでは、『3つの門』を理解することが重要と考えています。
第一の門は、酸化ストレスを起こしうるストレス因子(ストレッサー)を回避することです。精神的ストレス軽減法、有効な紫外線対策、環境整理、ワークフロー改善などによって、自分自身が受けるストレスを最小化します。
花粉症において最強の対策が抗原回避(花粉を避けること)であるのと同様、疲労において最強の対策は酸化ストレスを回避することです。
とはいえ、仕事は山積みで家庭のタスクもあるとなると、回避可能なストレスには限りがありますよね。だから、第二の門と第三の門を押さえることが大切なんです。
第二の門は、抗酸化作用を高めることです。
私たちの身体は、そもそも酸化ストレスに対処するために抗酸化作用を有しています。細胞内にあるSODという酵素です。この作用を十分に発揮するためには、『腸内環境』を最適化することが重要と考えられています。つまり、腸に負担をかけずベストな状態を維持するための食事を理解する必要があります。
また、外から抗酸化物質を摂取するという方法もあります。世の中ではビタミンC/Eやポリフェノールなどがサプリとして勧められていますが、より強い抗酸化作用を示す物質が分かってきています。
抗酸化作用が働くことで、活性酸素が細胞を傷つけてしまうプロセスを防ぐことができます。正しい食習慣を身につけることで抗酸化作用を十分に発揮することが大切なのです。
第三の門は、疲労回復因子を発生させることです。
活性酸素が細胞を傷つけてしまうと、私たちの身体には疲労因子が蓄積していきます。一度発生してしまった疲労因子を除去するためには、それをお掃除してくれる疲労回復因子が不可欠です。
では疲労回復因子はどのように発生するか?それ、適度な運動後と、睡眠中です。継続可能な運動習慣を構築し、睡眠の質を最大化することが大切なのです。
疲労回復において特に重要なのは、睡眠ですね。睡眠時間が足りないようであればそもそも寝る時間を確保することが不可欠ですが、中にはどれだけ寝ても疲れが取れないという方もいらっしゃいます。
その日に発生した疲労をその日のうちに取り切るという繰り返しが重要になりますので、ぜひ自分のライフスタイルに合った最高の睡眠習慣を構築していただければと思います。
まとめ
いかがでしたか?疲労を取り除きパフォーマンスを最大化するためには、「ストレス回避」「抗酸化作用」「疲労回復因子の発生」が大切です。
疲労はマスクできてしまうというその特性上無視されてしまいがちですが、確実に身体を蝕み、幸福度を損なっていきます。1日でも早く改善し、今後疲れとおさらばできるような生活習慣をつくっていただけたらと思います。
Wellnessには予防医学の最新情報を熟知したパーソナルドクターが多数在籍し、日々クライアント様の健康に向き合っています。多種多様なライフスタイルの方々と向き合う中で、エビデンスに基づいた数多くの方法論やエッセンスを蓄積しています。
もし一人で解決できず困っているという方がいましたら、いつでもWellnessにご相談ください。
では、また。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?