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〜詩集 春紅葉〜

【生きるということ】

あなたの
これまで積み上げてきたものと
熱が灯した

私の中で
燃える炎が
苦しいほどに
この胸を熱くする

この熱を頼りに
私もまた積み上げ
私自身の熱を足し
また誰かの胸に
炎を灯してゆくのでしょう

きっと
それこそが
生きるということ
なのでしょう

あなたがくれた
この熱を

私は決して
絶やしはしない

それがあなたへの
何よりの恩返しだと
信じているから

ありがとう
消えない炎をくれた
あなたへ



【優しさ】

あなたに
優しさを向けたとき

自分の小ささを思い知った

あなたじゃない人に
向けられなかった
私の優しさに気づいたから

あなたを知って
優しさという言葉の
奥深さを知った

あなたと私の「優しさ」が
これほどまでに違ったから

あなたを知って
私を知った

こんなほんとうの出会いを
どれだけ重ねられるか

そんなことだけ
見つめていたい



【ひまわり】

きっときみは知らないだろう

きみの呼吸が
ぼくに居場所をくれたんだ

いつもきみは
ぼくの心の輝きを見つけてくれる

ごめんよ
伝えるのが遅くなってしまった
ありがとう

そんなきみに
お礼とともに
言わなければいけないことがある


おそれず進め


きみの心に燃えるその炎を抱きしめて
まっすぐに進め

誰かと生きていたとしても
きみが何かの一部であっても
きみの夢がきみだけのものでなくなっても

それでも
きみの夢はきみのものだ
ゆずってはいけないよ

大丈夫
信じるんだ

ぼくは
いまきみが
その胸の中で見る
その
憧れという輝きの中で
きみが
ひまわりのように笑っている

そんな
泣けるような未来を
見たい

それだけなんだ

願わくば
そんな未来の一助になりたい

ただ それだけなんだ



【ひとのかたち】

あせていく
きえてゆく
とけてゆく

あのときのコドクのくるしみも
あなたとであえたよろこびも

ふぶきのなか
さっきいたけしきが
しろくかすんでいくように

なんとさみしい
なんてうれしい
ひとのかたち

あせたいろは
わたしのたましいにうつって
わたしのいろを
より
わたしのいろに

きえたきおくは
きっとわたしが
まえにすすむために

とけたおもいは
つぎのおもいと
であうためのタネに

そしていちど
うしなわれるからこそ

またあなたと
であえたとき

あたらしいよろこびを
このむねに
むかえられるのでしょう

ありがとう
いとしくも
にくらしい
ひとのかたち



【人の道】

人のために
震える一歩を
それでも踏み出すことができる

そんなあなたを
ぼくは心から尊敬しています

でもそれはきっと
あなたの強さだけが理由ではないね

あなたがかつて、そして今も抱える苦しみが
そうさせるのでしょう

その苦しみをどう投げ捨ててやろうかと
考える日もあるかもしれませんが
ぼくは思うのです

苦しみこそが 人の生きる道

大きな一歩で乗り越えるものではなく
抱きしめて抱きしめて
見つめ続けた先に
だんだんじんわりと
心臓の一部にあたたかくとけていく

そんなものなのではないかと
ぼくは思うのです

苦しみなき人の人生は
それはさぞ歩きやすい道かもしれません
けれどもその道は

朝日もなければ星空もない
青空も雨空もない
あおい新芽もあかい落葉もない
本当の意味で誰かの隣を歩くこともない

そんな道なのではないかと思うのです

冬の寒さが四季を美しくするように
苦しいことが
人生に彩りを
あなたに美しさを
もたらすのではないかと思うのです

ぼくがあなたのその一歩に
大きな力をもらったように

苦しみも
喜びも
願いも
悲しみも

すべてをひっくるめて
あなたがあなたらしくあることが、
どこかの誰かを必ず救います

必ずです

信じて
あなたを
人を
世界を



【あなた】

かえるがないて
とんぼがとんで
はちがみつをすい
きぎがしずかにたたずむように

あなたは
あなたでいいんです

むしろ 
あなたでなくてはいけない

しぜんがいつもうつくしいのは
すべてのいきものが
あるべきすがたで
あるがままだから

このよがうつくしくあるために
あなたは
あなたがこころからのぞむ
あなたでなくてはいけないのです



【光】
昨日見た葉が
今日はより美しく見えたのならば
きっとそれは
あなたの中の美しさが増えたから

あなたの輝きは
あなたが思っている以上に強くて

1年を照らし続ける太陽にも似た
あたたかな匂いがする

ぼく自身
そんなあなたの光に救われた

だれかを照らすあなた自身も
たくさんの光に照らされますように

そしてぼくも
あなたを照らす
そんな光のひとつになれますように

朝の森にみる
美しい光のカーテンのように

この世界に軌跡として
描き出される
あなたの光を

ぼくは誰よりも



【最後の夜】

あなたの絶望が
私に
覚悟をくれました

私はなります

雨を防ぐことのできる樹に
芽を育む柔らかな土に
命を励ますあたたかな光に
あなたの色を教える花に

この
灰色の世界に
ようやく見つけた色たちが
いなくなって
しまわぬように

あなたが
あなたで
いられるように

あなたの絶望が
私の炎



【願い】

暗い日々のただ中からは
直視できないほど眩しい日々

安らぎと、少しの涙と葛藤と
でもほとんど笑顔で塗りたくった

そんな時間を置いてきた
いつか再びと願いを込めて

けれど終わりはやってくる
停電で 明かりが不意に落ちるように
そのときは気付く間もなく突然に

そんな終わりは
もう少し先であってほしいと
願っているのです

せめてせめて
いつかくる終わりは
あなたの近くで

だからどうか
日々をつないで
苦しくとも慎重に
確かめるように呼吸を続けて

そしてできれば笑っていて
ふたたび再会できたとき
またその笑顔で
日々を塗りたくれるように

少しのあいだ
さようなら

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