見出し画像

読了報告。「僕が恋した図書館の幽霊」を読みました。

こんにちはこんばんは、小谷です。
noteの更新が滞ってましたが、大きな病気はなく、ただただひたすらに執筆して過ごしておりました。いや、上半期後半はアマプラに入り浸っていました。休息とインプットは大事です。
こうして改めて何かを書こうとすると、普段の自分の生活がとんと思い出せなくなります。記憶力は、ここ数年でかなり悪くなる一方です。

さて、これを書いている7月26日は「幽霊の日」だそうです。そんな日にこそ、ぴったりなタイトルですね。
聖いつき先生の「僕が恋した図書館の幽霊(スターツ出版文庫)」。2018年にエブリスタで行われた、スターツ出版文庫大賞の受賞作です。
スタ文大先輩の聖先生に、先日お会いする機会がありました。今まで、スタ文作家さんにお会いすることがなく、当日はかなり浮かれました。そして、サインまでねだってしまいました(笑)
(聖先生、その節は本当にありがとうございました!)

それでは、いつものように、ざっくりと本編のあらすじを紹介します。

主人公、橋本創が通う大学の図書館には「優しい女の子の幽霊が住んでいる」という噂がある。
その噂を知ってはいたものの、特に気にすることなく過ごしていた創だが、何気なく利用した際、彼は黒髪の少女、美琴に一目惚れする。
彼女が鉛筆を落としたことをきっかけに「筆談」で二人は言葉を交わしていく。
ある日、創は美琴に自分の思いを告げる。しかし、彼女は「私には、あなたの気持ちに答える資格がない」と言い、それきり姿を消してしまう。
彼女は「図書館の幽霊」なのか。それとも──?

繊細で丁寧な筆致で描かれる、瑞々しく、愛に溢れた青春恋愛小説です。
主人公の創くんは、大学二年生。放送研究部に所属する男子学生です。
性格は〝かなり〟クール。一学年上の女子、優花先輩を華麗にスルーしていく姿は、最初こそびっくりしましたが、普段の私もそんな感じだったので共感(^^;
興味ない相手に塩対応をしてしまうのは、誰しも経験があるのではないでしょうか。
ですが、読み進めていくうちに、彼の印象がかなり変わっていきます。
物語の最初とラストを比べると……変貌ぶりがすごい。でも、本人の中身はあまり変わらないのかもしれません。そもそも真面目で一途な性格であり、それが美琴さんに向けて発揮されたのかもしれない……(これ以上言うとネタバレになる)

すみません、書きながら分析しています。毎度、乱文で申し訳ありません。

よく「恋をすると変わる」と言いますが、そうじゃなくて、元々のポテンシャルなんだと思います。
初恋ならばなおさらで、それまでの恋愛観って大雑把に言えば「フィクション」なわけで。好きな人と過ごすことで、自分も知らなかった「自分のこと」が知れてアップデートされていくのです。なるほど、恋愛ってそういうことか。

鏡の中に住むという「優しい幽霊」については、放送研究部に眠る一本のカセットテープが示してくれました。
よくある「学園の噂話」ですが、現実でもこういう半ば怪談じみた伝承は時を重ねていくうちに、真実を隠してしまいますよね。
「優しい幽霊」にも真実があり、脚色を経て、創くんに届いたのです。
なんというか……この「幽霊」のルーツを辿るのが本作の「裏テーマ」とでも言うんでしょうか。
そもそも、この「僕が恋した図書館の幽霊」は前身となる「光風の伝言」(エブリスタに掲載されています)という物語があるようで、本文中にも触れられていました。(個人的に、こういう繋がりのある作品って大好物なので、後ほどじっくり拝読したいと思います。めちゃくちゃ気になる)
この「幽霊」に取り憑かれたかのように、創くんは美琴さんに惹かれていきます。
彼女は心を奪う幽霊なのか。
とは言え、そんな恐ろしいものではなく。お淑やかで可愛らしい、黒髪の少女です。
彼女を鏡越しに見かけたことで、その存在をさらに神秘的にさせるんですね。
二人は水曜日の図書館で言葉を交わし、心を通わせていく。
「彼女は幽霊かもしれない」「でも惹かれてしまう」と、もどかしくも熱烈に加速する創くんの想いが、初々しいし、可愛らしい。それに、彼はかなりロマンチストでした。
読み進めながら、私も自分の18、19歳の頃を思い出しました。私も可愛い時期があったんです。あのピュアな時代はもう取り戻せません(笑)

クールで毒っ気のある創くんが、美琴さん越しに見る日常は、それまでの景色と180度違いました。本編後半はかなりアツいです。
好きな子のために頑張る男の子はかっこいい。前半からすでに彼を信用していたので「頑張れ!」と応援しながら読んでいました。
容姿だけでなく、中身も可愛らしく、ユーモアもある、魅力たっぷりな美琴さんの秘密が本作最大のメインなのですが、これは読んで確かめてもらうしかないですね。(本当にネタバレになるからこれ以上言えない)

何事も、物語はふとしたきっかけで生まれるものです。ほんの少し、時間がずれていたら、すれ違っていたら、また違う世界になっていたのでしょう。
今、急にOficial髭男dismさんの「Pretender」の歌詞を思い出しました……そっちがバッドエンドならこっちはハッピーエンドですね。
こういう時、突然、訳知り顔の大人が「それが愛だ」と簡潔に片付けていくのが私は嫌いで、そもそも愛なんてよく分からずに生きてるので、誰かに肩を叩かれながら急に「それが愛だ」と言われても納得できないわけです。
いやでも待って。これこそ「愛」なんじゃないか……?「恋」通り越して「愛」ですよ。
考えれば考えるほど、そう思えてきました。的外れだったら申し訳ないんですけども……(*_*)
私、この作品を布教するときは絶対「愛の物語です」と言いますよ。

……なんだか恥ずかしくなってきました(笑)

青春と恋愛って、私の中では個々が独立しているものだと、つい最近まで思ってました。というのも、青春は「部活やサークル活動メイン、謎解きや不思議な能力、なんでもあり」、恋愛は「恋愛を主軸にした男女の物語」であると決めつけていたわけです。
着地点が「恋愛」であれば、それはもう「恋愛小説」だと思っていた……んなわけあるかい。
とある人から「青春には恋愛が必要!」という言葉をいただき「なるほど」と目からウロコが落ちたのが6月。見えているようで全然見えてなかったんですね。
そんな流れがあったあと、本作を読みまして「なるほど!青春恋愛ってこれだ!」と、それはもう小躍りしながら、アップデートを完了させました。

話を戻します。

創くんは放送研究会の活動もなんだかんだ言いつつ真剣に取り組んでいます。私的な価値観で言う「青春部分」ですね。
中学時代まで、カセットテープをバリバリ使っていたので、懐かしさを感じました。(ちなみに私、小学生の頃は放送委員会に所属していました。だからか更に懐かしい)
ラジオドラマの制作をして、文化祭で披露するというのが最終目標なわけですが、その模様もぜひ、読んで確かめてください。
優花先輩に頼まれたからって、こんなに真剣に頑張るなんて、本当に真面目だし、純粋に「音」が好きなんですね。

そうそう。個人的に一番気になったキャラクターは優花先輩!
彼女、すごいです。めちゃくちゃ分かりやすいんですけどね、いやまさかまさか……「マジか……」「え、やっばい」「うわ、すごい」「待って、それは……!」という読書中の私の言葉で察してください。

好きだからこそ、一途に思う。好きだからこそ、その選択をする。
いろんな思いの形があると思います。それは、どんなに時代が移ろっても、誰もが持つものだろうし、世代も性別も関係なく平等です。
時間に追われて余裕がない方は一旦休憩して、本作を読んでください。そして「人間ってあったかいものだよなー」と気づいてください。

長々とお付き合いいただき、ありがとうございます。
それでは、今回はここまで。

聖先生の既刊作と、エブリスタのページは下記をご参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?