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飲酒を強制する病②

「750ミリリットルくらいのテキーラ1本を制限時間の15分以内に飲み干せたら、10万円をご褒美としてもらえるという内容です。私は毎度このゲームをやっていたわけではなく、どちらかといえば稀にしかやりません。私としては、みんなで楽しくお酒を飲んで盛り上がりたいという、他のよくある飲み会ゲームと同じ趣旨のレクリエーションとしてやっていたものです」
これはアルコール使用障害治療の専門家として言わせてもらえば正しく【狂気の沙汰】の発言です。稀であってもレクリエーション等と言って済まされるレベルではありません。死に至る可能性が極めて高い行為です。
一般の方はその危険性がピンと来ないと思うので説明します。WidMark計算式という血中アルコール濃度の計算式があります。(下記HP参照)
これによると被害者の体重が50kgと仮定した場合、40%テキーラ750mlを飲酒すると3時間経過の時点でも血中アルコール濃度は0.44%~0.77%に達します。(範囲があるのは個人の体質に差があるからです。)
一方で血中アルコール濃度は0.40%を超えると昏睡状態になる可能性が高く、即座に治療しないと死に至る可能性が高いです。(下記HP参照)
つまりこの女性は蓋然性のある結果として死んでしまったわけで、運が悪かったとかそういう要素が入り込む事件ではありません。
死に至る可能性は誇張では無く福本伸行先生の漫画に出てくる【電流鉄骨渡り】や【クォータージャンプ】に匹敵します。
久里浜医療センターのアルコール外来に来られた患者さんには酒が入った状態で来られる方も大勢いらっしゃいます。来院時に採血しますがその際に血中アルコール濃度を測定します。
以下経験則ですが、
血中アルコール濃度が0.01~0.05%の方:昨夜の酒が残っている人。「あ、飲んでいるな。」と気付くがあまり普通と変わらない。
0.06~0.1%の方:飲んでいるとすぐ判る。やたら饒舌になっていたりする。
0.1~0.2%の方:来院途中で飲んできた方:抑制が効かなくなっているためか、やたら絡んできたり、「うるせーこの野郎!!」と怒鳴ってきたり、泣き出したりする方もいる。典型的な酔っ払い状態。
0.2~0.3%の方:ここまで来ると単独での来院は困難になっていることも多く、家族等に連れてこられたりしている。騒ぐよりもグッタリしていることが多く、診察室でいきなり嘔吐等する方も珍しくない。多くはそのまま入院となる。最低でも点滴をして帰ってもらう。
0.3%~の方:即日入院。点滴治療開始。
こんな感じです。血中アルコール濃度>0.4%というのが如何に危険かお判りでしょうか?
また被害者の方が金に釣られていたため、自業自得等と仰る方もいるようですが、歌舞伎町不動産屋のS氏(病院ラジオ出演)に話を伺ったところ、コロナの影響もあり若い女性の経済的困窮は半端では無く、色々とえげつないことになっているそうです。金余りの連中が女性に金を貸しては蹂躙することが日常茶飯事のように行われているとのことです。【歌舞伎町よりもIT成金等の集う港区の方がずっとやばいですよ。】とのこと。
お亡くなりになったにどのような事情があったかは判りません。しかしどういう理由があろうとも人が命がけの【デスゲーム】に参加するのは異常事態です。
そういう話は漫画の世界だけで十分です。

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