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発電所のオーナーになってみる

自家発電

以前、とあるデータセンターを見学した際、地下に連れて行かれ、そこに大きな発電タービンがあるのを見たことがあります。飛行機のジェットエンジンに似た構造で、燃料でタービンを回して、発電力する仕組みです。

データセンターは、電力を非常に使うので、電力会社から電力を買うよりも、自分たちで作ったほうが安いという話を聞き、それが非常に印象的でした。

そこで作られる電力は、そのデータセンターだけでなく、その地区全体の電力にも一部供給されていて、電力会社が停電の際にも、電気を使うことができるようになっていました。

グリーンな電力

15年ほど前に、「グリーン電力証書」という仕組みが出始めた頃に、いろいろなところに導入させていただき、太陽光や風力などによって発電されたグリーン電力を使ったエコな取り組みを実現させてきました。

当時は、法律的な制約があり、太陽光や風力によって発電された環境価値を「グリーン電力証書」という形にして、それを購入することでグリーン電力を使ったとみなすことができるようになっていました。

現在は、「グリーン電力証書」のほかに「非化石証書」が登場し、電力自由化により電気契約を再生可能エネルギー由来のものに変更できたりと、手段が増えてきました。

手段の選択肢が増えることは、利用者の状況に応じやすくなるので、これはこれで、日本の再生可能エネルギーの普及促進につながっていく可能性は高いと思います。

ただ、「グリーン電力証書」を提供していた立場から言えば、こういう状況というのは暫定的なもので、段々と、有り難みが薄れ、社会のマインドが下がってくるのではと思います。2008年頃ではあれば、「製品をグリーン電力で製造しました」というのは、ニュース性がありましたが、今では珍しくなくなってきています。環境意識の高さによる「グリーン電力証書」ではなく、話題性による「グリーン電力証書」の利用をされていた企業なんかは、わざわざ「グリーン電力証書」を購入するメリットが薄れてきてしまいます。

そのうち、今のガソリン税のように、利用者が意識しない形で、間接的に、その費用が徴収されているということに陥りがちです。現に、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という形で、通常の電気代から徴収されています。

証書方式や電気契約で、何よりの問題点が、いずれの方法も、使っている電力は、従来の変わらないという点です。太陽光や風力などで発電された電力が、電力系統に取り入れられれば、火力や原子力などで発電された電力と一緒になり、どの発電由来の電力なのかというのは利用者からは不明瞭になってしまう。

たとえば、東京や大阪で、蛇口をひねり出てくる水に、+αのお金を払えば、その水がハワイの水になるかというのと、ならないと一緒です。

グリーンな電力を自家発電

一番の理想は、冒頭で紹介したような、自分で発電設備を持ち、それによって作られた電力を自分で使うということだと思います。

とはいえ、企業で、自家発電を持つことは、それほど簡単なことではありません。ましてや、一般家庭では、一軒家であれば、太陽光発電パネルを設置できる可能性がありますが、マンション等の集合住宅では、そう簡単ではないと思います。

2022年5月下旬、東京都が、新たに建築される住居の天井に、太陽光発電パネルの設置を義務付ける条例を始める、という話がでてきて話題になっています。いろいろな弊害もあり、これが、実際にどうなるのかは、わかりません。

東京証券取引所に「インフラファンド」という、再生可能エネルギーの発電施設に特化したREITが上場しています。実際の株式と同じで、その施設を出資分所有していることになります。

現在、数社のインフラファンドが上場されていて(ほとんどが太陽光発電なのが残念なのですが)、そのうちの何社かを、ツバルの森を通じて保有しています。今のところ、約5,500kWhの発電量相当分。統計によれば、世帯が1年間に消費したエネルギーは全国平均で電気が4,322kWh、ということなので、だいたいそれに近い量。

このような間接的な、発電施設の所有も、前述したような、使っている電力は、従来のと変わらないという問題は引きずっています。また、太陽光発電の場合、発電しすぎると「出力制御」されるということもあります。

とはいえ、自分が所有している発電施設が、再生可能エネルギーに役立っていることにはなります。ただ、これも暫定的な感じなだろうなぁと思います。

今の主流である、別の場所で発電して、送電していく方法では、かなりのエネルギーロスが生じています。せっかく再生可能エネルギーで発電しても、失われている分も大きいのです。

電気の理想形は、エネファームのように、電気を使う現場で、電気をつくる方が、エネルギー効率がよいはずです。

そういう、電気そのものから考え直した方が、脱炭素につながっていくのではないかと思います。