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50を過ぎてからでも、人は変われる。映画『ある女流作家の罪と罰』

『ある女流作家の罪と罰』をAmazonレンタルで鑑賞。先日Amazonレンタルでセール対象だったのでポチッとしておいたのだが、鑑賞期限があと9日だったのでここで鑑賞。(Amazonレンタルはレンタル後30日以内に視聴を開始しないといけない、そして視聴スタートしたら48時間しか見られない。毎週何かしらセールをやってるので、「今週末は忙しいけど、この1ヶ月以内ならどっかタイミングはありそう」というときはレンタルしておいてもいいかも)

本作は受賞はなかったものの、アカデミー賞3部門にノミネートされた。日本では劇場未公開でいわゆるDVDスルーの作品だ。スゴイ面白かったとか、マストシーのオススメということではないけれど、心にチクッと刺さる部分がある実話ベースの映画でした。

主人公は50歳を過ぎた売れない女性作家。ゴーストライターとしてかつてベストセラーを出すほど文章の腕はあるのだが、彼女自身の知名度は低く、雑誌の校正のバイトで食いつなぎ生活は困窮している。そんなバイトも酒を飲みながら残業し、同僚に口汚く悪態をつく素行の悪さでクビになってしまう。

女優の伝記執筆の資料収集の際、たまたまその女優当人の直筆の手紙を手に入れてしまう。そこに「いかにもその人が言いそうな、ちょっと気の利いた追伸」を書き足して古物商に持って行ったところ、高値で売れてしまう。

伝記作家として、著名人の思考や発言のクセを読み取るスキルのある彼女は、次々と贋作の手紙を作っては古物商に売っていくのだが… という、本人の自伝による実録「犯罪」映画であり、偏屈な中年女性の半径3メートルの日常を描いた映画でもある。

口汚く、自分の才能を認めない出社エージェントに当たり散らし、家族も友達もおらず猫だけが心を開ける相手という主人公は、分かりやすく共感できる登場人物ではない。

でも主人公の「若い時に思ってた50歳と違う」「何も成し遂げないままこの歳になってしまった」「自分の能力を誰も認めてくれない」という気持ちは、多くの人が持ったことがあるのではないだろうか。

それが他人の名前を借りた「嘘」だとしても、自分のなかのクリエイティビティは確かに存在してるというプライド、「この言葉は気が利いてるわね」と反応をもらった時の複雑な気持ちなど、なんとも言えない主人公の気持ちを見る者は受け止める。

開かれた、前向きな、それでいてけっして強引ではないエンディングで、鑑賞後のあと味は良い。それまで「他人の名前で自分の言葉」をすべり込ませていた主人公が、終盤「自分の名前で他人の言葉」を語らねばならないシーンがある。そこで取った彼女の行動、内容、その状況、思わず声を出して笑ってしまう滑稽なシーンなのだが、ここは初めて彼女が、自分で自分を認めてあげた瞬間なのだ。「50を過ぎてからでも、人は変われる」映画として中高年は楽しめるかもしれません。


この作品は、フォックス・サーチライトの作品。フォックス・サーチライトは、「スラムドッグミリオネア」「ブラック・スワン」「バードマン」「シェイプ・オブ・ウォーター」「女王陛下のお気に入り」など、アカデミー賞にも絡む(本作も受賞はできなかったが3部門ノミネート)作品を多数出してきた、20世紀フォックス傘下のサブレーベル。大作ではないが良質な作品をコンスタントに生み出してきたが、ディズニーによる買収で今後の制作体制がどう変わるかちょっと心配。

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