母の手稿より①

高校入学のための誓約書の親の名をかく息子に父親はいかる。「ここはパパがかき入れる所だぞ。」

とすぐ様、息子は「やーやあーごめんごめん。おと~さんの生きがいをとってしまって。」

いかり顔の父親は片目をつぶり

やがて満面の笑みを浮かべ

姿勢を正して、ばの字のつく程、丁寧に名を

かき、おもむろに印をつく。

その様子を父親が子を見守るごとく息子はにこにこと見守る。

こんな時間を近頃しばしば見かける

おかしくって おかしくって。

(昭和62年3月24日)

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