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書評 53 「平生の心がけ」

福沢諭吉に比べ、小泉信三を知る人はさほど多くない。福沢は慶應義塾の創始者で、小泉は福沢が他界した後の昭和前半、太平洋戦争を挟む時期に慶應義塾長を務めた経済学者。スポーツを愛したことでも知られ、「練習は不可能を可能にす」と言う言葉は聞いたことがあるのでは。

これは小泉信三が日々の中で気がついたことや努めて意識していることなど、所感を書き綴ったもの。エッセイ集と言ってもよい。一つ一つの項目は短く簡潔に書かれているので、少しずつ読み進めても無理がない。

著者が生きた時代は半世紀以上前だが、いまでも多くの示唆に富む。あくまで著者の所感であり、私見なのだけれど、暮らす上でのマナーから学ぶ姿勢など、倫理観を含めながらも実践的な助言になっている。

私は初めて読んでから30年以上経つが、時々読み返す。

個性を重視することで、個性と公のバランスが更に難しくなっているいま、一つの指針として読む価値がある一冊。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000150453

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