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書評 205 「人間の大地」

「ちいさな王子」(星の王子様)で知られるサン=テグジュペリの私小説的作品。

飛行機の操縦士、いわゆるパイロットを職業としていた著者。高空から地表を眺める。それ自体が特別で、自分が生きる世界への視点が変わる。世界は見方によって姿を変える。壮大な姿は時に過酷でもある。しかし、それを知らなかった自分よりも知った自分の方に価値があると言う。

また、当時の航空機は故障で不時着を余儀なくさせる場面も少なからずあった。航路によっては砂漠や人路の無い山岳地に降りることも。命を失ったり、文字通り九死に一生を得て生還した同業者。自身も死の直前まで行った経験があり、著者の人格形成にどう影響したかを著している。

当時の西欧諸国によるアフリカや南米の植民地化によって、通信手段として航空郵便が用いられていたことがわかるのも興味深い。

世間一般と違う生き方をする自身をどう捉えるか。自らの見方を見直す機会をくれる一冊。


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